円上を歩き続ける

文字数 546文字

初めてあった時から美しい人だと思った。すべての造形が神の御技であると感じた。
そう、陽春白雪。

あなたに触れることができる人は誰でもきっと恋に落ちてしまう。

あなたの容貌の美しさに心を奪われ、あらゆる感覚が働きを停めてしまい、話した内容を記憶にとどめることがいつも困難だった。

弱気でうじうじした僕だけど、音楽があなたとの繋がりをくれた。
歌手の誰が好き?
どんなジャンルの曲が好き?
ロック?ポップス?R&B?
楽しい曲?悲しい曲?ワクワクする曲?

あなたの側にいるだけで、僕も美しくなれる気がした。

あなたのおかげで色とりどりな新しい世界が広がった。


しかし、突然だった。
あたりまえであった日常が夜空をかける流れ星のように儚く消えた。

あなたはいなくてはいけない場所に帰ると告げた。

僕の手の届かない場所へ。

大切な人、待っている人がいるところへ。

血液の流れが止まり体温が急激に下がる。

心に咲いた花が枯れてしまう。

僕の前からいなくなるなんて嘘だと言って欲しい。

苦しくて現実を受け容れることができない。

僕が感じていた運命という感情は上っ面だけの軽薄なものだったんだ。

あなたがいなくなるとわかってからは悲しい曲ばかりを聴いてしまう。

できるならば、ありがとうと気持ちよく送り出したい。

できるなら……、できるものならば……、
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