第3話 初デート

文字数 1,456文字

 その週末の土曜日に、一緒に映画を観に行った。
 こうしたちゃんとしたデートは初めてだったので、プランが思いつかなかったため定番の映画にしたのだ。
 伊達さんは、終始緊張しまくりだった。
 自分は、意外にも冷静だった。
 やはり美登里さんとの思い出があったからだろう。
 でも、そんな初々しさが逆に魅力的だった。
 映画館では話をしないから、何というか間が持ったというか観ていれば時間が経過していく。
 隣からは、緊張した雰囲気がひしひしと伝わってきた。

 映画が終わると昼食でレストランに入った。
 注文が終わると、
「あ、あの……ごめんなさい」
「私、緊張しちゃって、いざとなると何話していいのか分からなくなって……こんな私と一緒だと、楽しくないよね」
と思いっきり落ち込んでいた。
「いや。伊達さんの性格からするとイメージ通りだから気にしなくて良いよ」
「逆に、慣れていたらビックリしているよ。だから大丈夫」
と伝えてあげた。
「ありがとう……」
と言って泣き出してしまった。
 当然、慌てた。
 周りの目も気になってしまった。
「あのさ。泣かなくても良いよ。初々しくて、清々しいからさ」
「だから、泣かないで……初めてのデートで堂々としていられる方が少ないよ」
と一生懸命、慰めていた。
 やっと泣き止んでくれた。
『これだけ喜んでもらえるのは、幸せだよな』
と思えた。

 頼んだメニューが届いて食べ始めようとしたら、伊達さんは恥かしいのか口元を隠しながら食べていた。
『本当に、女性らしい子だなー』
と逆に惹かれていく自分がいた。
 食べ終わって、一息ついたので、
「もう大丈夫? いいなら出ようか」
「うん。大丈夫」
と答えてきたので、奢ろうと思い伝票を手にお勘定に向かった。
 支払いしようとしたら、伊達さんは、
「お勘定は別々にお願いします」
と言っていた。
「いいよ。奢るよ」
と言うと、
「駄目です。元々、今日誘ったのは私なんです」
と意思をハッキリ示してきた。
『あぁ。やっぱりちゃんとした子なんだな』
と感心した。
「わかったよ。じゃあ別々でお願いします」
と伝え、各々で支払いを済ませた。



 店の外に出てから、
「伊達さんは、しっかりしているね。関心したよ」
と伝えると、嬉しそうだった。
「こういうことは……うん。当然なんです」
と言っていた。
「じゃあさ、次の喫茶店では奢るね。ちょっとは男の見栄を張らせてよ」
と伝えると、しばらく考えてから
「はい。わかりました。よろしくお願いします」
と納得してくれた。

 その後は、ウィンドショッピングを楽しんでから喫茶店に入った。
 少し緊張が取れてきたのか、会話が少しずつ増えていった。
 そろそろ店を出ようかなと思っていると、
「白藤くん。あのね……」
「あの……また、私とデートしてくれる?」
とちょっと涙目になって聞いてきた。
「やっぱり、つまらなかったよね……」
と続けて言ってくるから、急いで
「うん、いいよ。また出掛けよう」
と答えた。
パッと笑顔になって、
「ホント? 本当に良いの?」
とぐっと前かがみになって、確認してきた。
「うん。本当だよ。次もよろしくね」
と真剣な表情で伝えた。



 その後は駅まで一緒に行き、そこで別れた。
 反対方向だったので、向かいのホームから笑顔で小さ目にバイバイと手を振ってきた。
 先に、向こうの電車が来たのだが乗り込んだ後、こちらの窓側に移動してから、また手を振ってきたので、自分も手を振って答えた。
『うん。思い切ってOKして良かったな』
と心底思った。

 その夜、RAINでメッセージが大量に送られてきたのにはビックリした。
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