第4話 縁談結果

文字数 2,317文字

 その後もリラックスしながら、趣味の話などをして過ごした。
 気がつけば1時間ほど過ぎていたのでお見合いの席に戻り、解散となった。
 別れ際、自然に目が合ったのでアイコンタクトで「ありがとう」と伝えた。
 すると、ニッコリしてお辞儀をして去っていった。



 その後は袴をレンタルに返し、自宅に戻った。
 母からは、
「2人にしたら、直ぐに戻って来ちゃうかもって思っていたけど、1時間以上も一緒にいたのね。気が合ったのじゃないの?」
 と言われた。
 確かに、お見合いの席での彼女はとてもお嬢様だったが、2人の時に彼女は自然でとても親しみやすかった。
 それに、最初に見合いの部屋に入ってきた、毅然としてしっかりとした感じが非常に印象的だった。
『お嬢様ではあるけど弱々しくなく、しっかりと自分をお持ちなんだな』
『ちゃんとした大人の女性だ』
 と尊敬に値すると思えた。
 会うまでは、釣り合いの取れない縁談話だと感じていたが、見合いの後は印象がまったく変わっていた。
『釣り合うとかではないな。こういうのは縁だ』
 と強く思えた。



 その夜、夜食にお風呂も入り、あとは寝るだけとなったので、恒例のイメージングを試してみた。

 結婚前提に付き合いだしデートを繰り返す……
 そして結婚……
 しばらくの間、2人で暮らす……
 まず男の子が生まれる……
 次に、女の子が生まれる……
 子供たちが、どんどん成長していく……
 やがて子も恋愛し、結婚して家から去っていく……
 また、2人での暮らしに戻って過ごす……
 孫ができ、息子と娘が連れてきて楽しいひと時を過ごす……
 やがて年老いていき、この世を去るときがくる……
 お婆ちゃんになった彼女の姿が隣に映る……

 そして、最後にはイリスの微笑みながら頷く様子が浮かんできた。
『!!』
 初めてイメージできた。
 自分でも驚くほど、しっくりしていた。
『これが、母が言っていたことなんだな』
 と体感できたのだ。
 そう思ったら、もう心は決まっていた。



 リビングに行き、寝ていた両親を起こして早速伝えた。
「彼女と結婚を前提に話を進めたい。明日、そのように専務に報告する」
 と……
 両親は大喜びだった。
 母なんか、どこにしまってあったのかクラッカーでパーーーンとお祝いしてくれた。
「いや。そりゃ2人にしたら、1時間以上も戻ってこなかったらからな。これは! っと思ったぞ」
「お母さんもね。あの子、すっごく気に入っちゃったのよ。バンザーーーイ!」
 とはしゃいでいた。
「いやさ。こちらはそうでも、先方の意思次第なんだから、まだ早すぎるよ」
 と自分の自制させると共に、両親に伝えた。



 翌日になって、専務に電話をし
「恵さんと結婚を前提に話を進めたい」
 と意向を伝えた。
「よし! 分かった。先方にそう伝えるな」
 と嬉しそうに言ってくれた。
『あとは彼女次第か。まぁ、少なくとも1週間以上は答えがでないだろうな』
 とたかをくくっていた。

 が、夕方に専務から電話があった。
 正直、驚いた。
『早すぎる! まぁ、一応お見合いをして、義理は立てたからなんだろう』
 と電話に出た。
「おぉ! 白藤か」
「喜べ。彼女も同意見だそうだ」
「エェェ!」
 と思わず声が出た。
「なんかなー、言付けがあったぞ」
「“あのイメージをやってみましたよ”だそうだ。なんだ、そのイメージというのは?」
『!!』
「そうですか。いえ、2人の時に話したことですよ。そっかーーー。彼女も同じだったのか」
 そう呟いた。
「じゃ、そういうことで両家納得の上、お付き合い決定だな。彼女の携帯番号を伝えるぞ」
 と言ってくれたので、早速メモを取りお礼を述べて電話を切った。



 その件を両親に伝えると、昨日以上にハイテンションで喜んでくれた。
 その両親の喜びも見て、
『まるでプロポーズにOKを貰ったあとのようだな』
 と思った。
「お父さん、お母さん、ありがとう」
「やっと、自分で納得できる相手に巡り合えた気がするよ」
 と感謝と共に伝えた。



 どうも、落ち着かない。
『携帯番号を聞いたは良いが、いつ電話したらいいんだ?』
『直ぐって……なんかがっついているように思える……かと言って、今日電話しないのも失礼な気がする』
 と珍しく優柔不断に陥った。
 こんな思いがぐるぐると反芻していた。
『もう、えーーーいだ。電話せずに後悔するなら、がっついていると思われてもいいから電話をしよう!』
と決断した。
 
 緊張しながら、携帯の番号を押す。
「プルル。プルル」
 と鳴る。
 心臓が、もうバクバクだ。
 すると、直ぐに電話に出て
「はい。恵でございます。勇輝さん! お電話遅いですよ」
 を口一番に言われてしまった。
「……それは、失礼しました」
「交際をお受けくださるとは、正直思っていなかったですし、こんなに早い連絡だったので、やはりお断りされた思ったくらいです」
「ですので、電話するタイミングが分かりませんでした」
 と素直に話した。

「……そうなんですか」
「私は、お見合いの席でお別れするときにアイコンタクトが取れたことで、ほぼ心は決まっていましたよ」
 と、まぁしっかりとしたお答えだった。
「ご伝言をお聞きになったと思いますが、わたくしちゃんとイメージできましたのよ」
「自分も初めて、自分が死ぬところまでイメージできました」
 と伝えると
「これから交際を始めようとしているのに、自分が死ぬところまでイメージできたって言うのもおかしな話ですね」
 と言ってお互い笑いあった。

「恵さん。自分と結婚を前提にお付き合いください。よろしくお願いします」
 とハッキリ伝えた。

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
 としっかりとした意思を感じる返答が耳の奥まで響いた。
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