第6話 プロポーズ
文字数 2,651文字
結婚を前提に交際をしているのだから、当然そういう話をする。
「恵さん」
「会社の先輩から聞いたのですが、お腹に赤ちゃんがいると判明した時点で、子供が中心の生活になる」
「だから交際期間が短い場合には、赤ちゃんは少し置いておいて、しばらくは2人でいろいろ出掛けるなどして思い出を沢山作るのが良いよ。と聞いたんです」
「それを聞いて、自分も”まったくそうだ!”と思いました」
「恵さんも、今25歳ですからまだお若い」
「ですので、自分としては3年くらい2人で暮らしていきたいと考えています。どう思われますか?」
と尋ねてみた。
すると、意外にあっさりと
「それは良い話ですね。その間にも貯金ができますし……」
「はい。私もその方向で良いですよ」
と答えてくれた。
『本当に、考え方に親和性がある人だ』
とつくづく思えた。
*
そうして、交際すること早くも3ヶ月半が経過した。
毎週会える訳でもなかったのもあるが、出張で連絡が取りづらい時期もあったので、予定より半月ほど遅くなってしまった。
『自分の中では、もう迷いはない! 彼女となら一生一緒にいられると思える』
『プロポーズしよう!!』
そう覚悟を決めた。
両親に、そう報告すると今度は沢山用意してあったようで、クラッカーを連発して喜んでくれた。
高坂専務にも、そう連絡した。
『さてと、次のデートで本丸に勝負を挑むとしよう!』
『プロポーズの言葉か……これは、難問だな』
と悩める日が続いた。
*
次のデートでは、川沿いの夜景に見えるレストランを予約した。
そこで食事を済ませると外に出て、川沿いの道に進んだ。
恵さんは、黙って付いてきてくれた。
『さてと、一世一代の勝負をするとしよう!』
と決断した。
振り返って、まっすぐに恵さんの目を見つめ、
「これからの人生を自分と一緒に過ごしていただけませんか?」
「いろいろとあると思います。喧嘩もするでしょう」
「親子でさえ喧嘩するのだから、ずっと一緒に居れば喧嘩くらいします」
「でも、貴方なら乗り越えられると自分は信じています」
「自分の出張が長引く場合には、貴方に負担を掛けてしまいます」
「単身赴任で数年、家にいられなくもなると思います。でも、貴方なら家を安心してお任せ出来ます」
「ですから、貴方のこれからの人生……自分と一緒に歩んで下さい」
と言い切ってお辞儀をした。
『うわー、心臓がどっくんどっくんする!』
『OKしてくれるとは思うけど、いざとなるとめっちゃ怖い!!』
『……』
「まぁ、喧嘩くらいはしますよね。当然」
「私、けっこう頑固ですから中々折れないかも知れませんよ。その時は、勇輝さんが折れてくださいね」
「正直言うと、もう少し早く申し込んでくださると思っていました。まぁ、許して差し上げます」
「ということで、こちらこそよろしくお願いいたします」
とお辞儀をしてくれた。
『!!』
顔を上げて、恵さんを見つめた。
恵さんも見つめていてくれた。
「ありがとうございます! 必ず貴方を幸せにします!!」
と宣言した。
「いえ、一方的に幸せにして頂こうなどとは思いませんよ」
「私も、勇輝さんを幸せにしてあげたいです。それが夫婦ですよね」
と、にっこりしながら優しく答えてくれた。
次には、恵さんを思いっきり抱きしめてキスを交わしていた。
「ありがとう」
「一緒に幸せになりましょう!」
と言って、再びキスを交わした。
*
後日、婚約指輪を買っていなかったので、一緒に買いに行った。
”大事なことを決める時は2人で相談してからにしましょう”と付き合っている時のルールがあったため、事前には買わなかった。
その代わり、好みの指輪を選んで貰いたかった。
恵さんは、もう生活観念があるのか、
「贅沢は駄目です! 婚約指輪はしている時期が短いですから、どうせお金を使うなら結婚指輪にしましょう」
と言ってきたのだ。
『いや、普通は婚約指輪がダイヤモンドでキラキラしたもので、結婚指輪こそ質素なデザインになるから、結局高いのは買わないと言っているようなものだ』
と口に出そうになったが、
恵さんから、視線で先制攻撃を仕掛けてきた。
完全に白旗だった。
「……はい。わかりました」
「その代わり、本当に気に入った指輪を選んでください」
とだけ返事をした。
*
その後、順調に結納を済ませ、式場やらドレスに新居選びなどで天手古舞であっという間に半年が経過した。
仲人は当然、高坂専務にお願いした。
無論、快くお受けくださった。
*
『今日は、いよいよ挙式の日だ』
『共に幸せになろうと既に誓ってはいるが、神様に、そして来てくれたみんなに宣言をする日だ』
『よし、いくぞ! イリス見てくれてるよね』
と家を出た。
式場である天満宮で両家が合流した後、着付けの間そわそわと待っていた。
前撮り写真の時にも拝見したが、改めて恵さんの白無垢姿に感動した。
「とても、良くお似合いです。末永くよろしくお願いします」
「ありがとうございます。私こそ、よろしくお願いします」
と会話を交わした。
*
神前挙式のため天満宮で執り行い、誓詞奏上 となった。
2人で神前に並び、自分が声を出して誓いの言葉を述べた。
今日の吉 き日に
天照天満宮 のご神前で結婚式を迎えます
天神様 のお蔭によるものと感謝致します
これから先は天神様のお護りによって永久に変わることなく
正しい夫婦の道を守り お互いに助け合い
人格を高め 生業に励み
健全な家庭を営むことに努めます
末永くお見守りくださいますよう お願い申し上げます
日付の述べ
夫 白藤勇輝
妻 白藤恵
と、それぞれが名乗った。
つつがなく式は進行し、披露宴、2次会と楽しい時間を過ごした。
その日、初めて一緒にホテルに泊まり朝を迎えた。
___________________________________________
ここまでお読みくださり感謝申し上げます。
この時点で、このアナザーストーリーの半分が過ぎたところです。
続きは是非! Amazon kindleの電子書籍をご購入しお読みくださいませ。
※ 電子書籍版は、口絵と挿絵も入り、文章もブラッシュアップ&追加しており、元作+本作+短編2作で1書籍として販売しております。
アナザーストーリーから読み始めた方は、是非元作もお読みになってください。
元作でも書きましたが、この作品は元作とアナザーストーリーで本来の1作です。
それでは次回作、『天の衣に龍の煌めき』の連載開始を気を長くしてお待ちください。
「恵さん」
「会社の先輩から聞いたのですが、お腹に赤ちゃんがいると判明した時点で、子供が中心の生活になる」
「だから交際期間が短い場合には、赤ちゃんは少し置いておいて、しばらくは2人でいろいろ出掛けるなどして思い出を沢山作るのが良いよ。と聞いたんです」
「それを聞いて、自分も”まったくそうだ!”と思いました」
「恵さんも、今25歳ですからまだお若い」
「ですので、自分としては3年くらい2人で暮らしていきたいと考えています。どう思われますか?」
と尋ねてみた。
すると、意外にあっさりと
「それは良い話ですね。その間にも貯金ができますし……」
「はい。私もその方向で良いですよ」
と答えてくれた。
『本当に、考え方に親和性がある人だ』
とつくづく思えた。
*
そうして、交際すること早くも3ヶ月半が経過した。
毎週会える訳でもなかったのもあるが、出張で連絡が取りづらい時期もあったので、予定より半月ほど遅くなってしまった。
『自分の中では、もう迷いはない! 彼女となら一生一緒にいられると思える』
『プロポーズしよう!!』
そう覚悟を決めた。
両親に、そう報告すると今度は沢山用意してあったようで、クラッカーを連発して喜んでくれた。
高坂専務にも、そう連絡した。
『さてと、次のデートで本丸に勝負を挑むとしよう!』
『プロポーズの言葉か……これは、難問だな』
と悩める日が続いた。
*
次のデートでは、川沿いの夜景に見えるレストランを予約した。
そこで食事を済ませると外に出て、川沿いの道に進んだ。
恵さんは、黙って付いてきてくれた。
『さてと、一世一代の勝負をするとしよう!』
と決断した。
振り返って、まっすぐに恵さんの目を見つめ、
「これからの人生を自分と一緒に過ごしていただけませんか?」
「いろいろとあると思います。喧嘩もするでしょう」
「親子でさえ喧嘩するのだから、ずっと一緒に居れば喧嘩くらいします」
「でも、貴方なら乗り越えられると自分は信じています」
「自分の出張が長引く場合には、貴方に負担を掛けてしまいます」
「単身赴任で数年、家にいられなくもなると思います。でも、貴方なら家を安心してお任せ出来ます」
「ですから、貴方のこれからの人生……自分と一緒に歩んで下さい」
と言い切ってお辞儀をした。
『うわー、心臓がどっくんどっくんする!』
『OKしてくれるとは思うけど、いざとなるとめっちゃ怖い!!』
『……』
「まぁ、喧嘩くらいはしますよね。当然」
「私、けっこう頑固ですから中々折れないかも知れませんよ。その時は、勇輝さんが折れてくださいね」
「正直言うと、もう少し早く申し込んでくださると思っていました。まぁ、許して差し上げます」
「ということで、こちらこそよろしくお願いいたします」
とお辞儀をしてくれた。
『!!』
顔を上げて、恵さんを見つめた。
恵さんも見つめていてくれた。
「ありがとうございます! 必ず貴方を幸せにします!!」
と宣言した。
「いえ、一方的に幸せにして頂こうなどとは思いませんよ」
「私も、勇輝さんを幸せにしてあげたいです。それが夫婦ですよね」
と、にっこりしながら優しく答えてくれた。
次には、恵さんを思いっきり抱きしめてキスを交わしていた。
「ありがとう」
「一緒に幸せになりましょう!」
と言って、再びキスを交わした。
*
後日、婚約指輪を買っていなかったので、一緒に買いに行った。
”大事なことを決める時は2人で相談してからにしましょう”と付き合っている時のルールがあったため、事前には買わなかった。
その代わり、好みの指輪を選んで貰いたかった。
恵さんは、もう生活観念があるのか、
「贅沢は駄目です! 婚約指輪はしている時期が短いですから、どうせお金を使うなら結婚指輪にしましょう」
と言ってきたのだ。
『いや、普通は婚約指輪がダイヤモンドでキラキラしたもので、結婚指輪こそ質素なデザインになるから、結局高いのは買わないと言っているようなものだ』
と口に出そうになったが、
恵さんから、視線で先制攻撃を仕掛けてきた。
完全に白旗だった。
「……はい。わかりました」
「その代わり、本当に気に入った指輪を選んでください」
とだけ返事をした。
*
その後、順調に結納を済ませ、式場やらドレスに新居選びなどで天手古舞であっという間に半年が経過した。
仲人は当然、高坂専務にお願いした。
無論、快くお受けくださった。
*
『今日は、いよいよ挙式の日だ』
『共に幸せになろうと既に誓ってはいるが、神様に、そして来てくれたみんなに宣言をする日だ』
『よし、いくぞ! イリス見てくれてるよね』
と家を出た。
式場である天満宮で両家が合流した後、着付けの間そわそわと待っていた。
前撮り写真の時にも拝見したが、改めて恵さんの白無垢姿に感動した。
「とても、良くお似合いです。末永くよろしくお願いします」
「ありがとうございます。私こそ、よろしくお願いします」
と会話を交わした。
*
神前挙式のため天満宮で執り行い、
2人で神前に並び、自分が声を出して誓いの言葉を述べた。
今日の
これから先は天神様のお護りによって永久に変わることなく
正しい夫婦の道を守り お互いに助け合い
人格を高め 生業に励み
健全な家庭を営むことに努めます
末永くお見守りくださいますよう お願い申し上げます
日付の述べ
夫 白藤勇輝
妻 白藤恵
と、それぞれが名乗った。
つつがなく式は進行し、披露宴、2次会と楽しい時間を過ごした。
その日、初めて一緒にホテルに泊まり朝を迎えた。
___________________________________________
ここまでお読みくださり感謝申し上げます。
この時点で、このアナザーストーリーの半分が過ぎたところです。
続きは是非! Amazon kindleの電子書籍をご購入しお読みくださいませ。
※ 電子書籍版は、口絵と挿絵も入り、文章もブラッシュアップ&追加しており、元作+本作+短編2作で1書籍として販売しております。
アナザーストーリーから読み始めた方は、是非元作もお読みになってください。
元作でも書きましたが、この作品は元作とアナザーストーリーで本来の1作です。
それでは次回作、『天の衣に龍の煌めき』の連載開始を気を長くしてお待ちください。