第3話 初恋(後編)

文字数 1,993文字

 翌日の1時前に待ち合わせの海岸に来たが、すでに美登里さんは待っていた。
「ごめんなさい。寒いのに待たせてしまって」
 と謝った。
「いいのよ。勇輝くん、ちゃんと時間前に来てくれたじゃない。謝る必要なんてないよ」
 とニコニコしてくれていた。
「じゃ、今日はショッピングに行きましょーーー」
 と言い出したので、町中のお土産屋やらを色々回った。

 途中で、喫茶店に入り休憩タイムとなった。

「今日も、ありがとうね」
「いえ。自分も暇で、正直この旅行、どう過ごそうかと持て余していたので丁度良かったです。だから、気にしないで下さい! それに……美登里さんみたいな綺麗な人とこうして居られるのは正直、男として凄く嬉しいです!」
 と答えた。
 嬉しそうな笑顔になって、
「勇輝くんってジゴロなの? それとも、やっぱり口説き上手なの?」
 と本気で聞いてきた。
「おねーさんには、正直に言いなさい! 中学の時に、女の子と付き合ったことあるでしょ?」
 と問い詰めてきた。
「美登里さん、全然信じてませんね。本当に、付き合ったことないんですよ」
と正直に答えた。
「えーーー! 本当に、ホント?」
とまだ、聞いてくる。
『そんなに女性慣れしているように見えるのかな』
と思った。
「正直にいうと何度か告白されました」
「でも一流大学目指しているので高校も超進学校に決めていたんです。だから、お付き合いしたことはないです!」
 大分打ち解けてきたので、気軽に話が出来るようになっていた。

「ふーーーん。本当に、それが全部? 私の話は、昨日ぜーーーんぶ聞いてもらちゃったけど、勇輝くんの話は聞いてなかったから、昨夜ちょっと不満に思ったのよね」
 と、ぶー垂れていた。
「いや、全部話しましたよ。本当に受験勉強が大変だったんです。信じて下さいよ」
 とお願いした。
「はい。わっかりました!」
 と元気よく答えてきた。
『本当に元気が出てきたみたいで、良かった』
 と思った。

 その後も、会話は続いた。
 そして気がついたら、また夕方になっていた。
「さぁってと、今日も結構いい時間になっちゃったね。帰ろうっか」
「そうですね。帰りましょう」
「勇輝くん。一応聞くけど、明日も暇?」
「お察しの通り、とっても暇ですよ」
「では、明日も1時にあの場所で集合しましょう」
「はい。了解です」
 といって、旅館に近くまで一緒に行きそこで別れた。



 そしてまた翌日、1時前に海岸に来たが、今日もすでに美登里さんは待っていた。

「早いですね。いつから待っていたんですか?」
 と聞くと、
「昼食を終えてから、直ぐ来たから30分くらい前かな」
 と答えてきた。
「じゃあ、結構待ったじゃないですか? 身体冷えてませんか?」
 と心配した。

 美登里さんは、神妙な顔つきになって、
「勇輝くん……正直ね。身体冷えちゃったよ。とっても寒い……本当はね。心もまだ寒いから、私を温めてくれない?」
 と言ってきたのだ。

「……え?」
『いや、そんな。ちょっと考えすぎだよな』
 と思ったのだが美登里さんは、
「私じゃ、嫌?」
 と聞いてきたと思ったら、そのまま手を掴まれ、美登里さんの旅館まで連れて行かれた。

 無茶苦茶、緊張してきた。
 流石にもう、自分もこの先のことは解っている。
 美登里さんは、淡々とふすまなどを閉め、そして服を脱ぎだした。
 初めてみる、女性の裸。
 しかも、とても美しい美登里さんの裸だ。
 綺麗なので見とれてしまった。

 そして、布団に入ると、
「勇輝くんも、服を脱いで布団に入って」
 と言ってきた。
 素直に従い、布団の中に入った。
 美登里さんが、上になって自分にキスをしてきた。
 もう理性は飛んでいた。
 初めて触れる女性の肌。
『なんて柔らかくて、繊細なんだろう』
 そして、初めて味わう女性との情事。
 もう夢中だった。
 色欲の続く限り、何回も交わった。

 その翌日も、美登里さんと会って、情事を重ねた。

 次の日は、もう旅行から帰る日だ。
 美登里さんとはもう会えない。
 別れないといけない。
「美登里さん。連絡先を教えて下さい」
 と頼んだが美登里さんは、首を横に振っていた。
「ありがとう。勇輝くん。お陰で、私ね。身も心も癒してもらえたよ。この旅行に来てよかった! そして、勇輝くんに偶然だったけど出会えて本当に良かった。でも、勇輝くんはこれから新しい高校生活が始まり、青春真っ只中になるんだよ。これ以上、私に関わってはいけないわ。お互い、一生の思い出にしましょう」
 と決別を伝えてきた。

 美登里さんの部屋を最後に出ていくときに、振り返って思い切り抱きしめた。
「美登里さん。一生忘れないよ。幸せになって下さい」
 と泣きながら、別れを告げた。

 自分の旅館に戻ったら、両親が心配したが、
「心配かけてるとは思うけど、今はそっとしておいて欲しい」
 そう頼んで一人で大浴場に向かった。
 そして、シャワーを浴びながら、思い切り泣いた。
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