第2話 朝ごはん

文字数 952文字

 俺は趣味でキッチンに立つ。
 毎日の日課で弁当も作る、大袈裟にいえば料理研究家だ。客人を迎えてもそれは変わらず冷蔵庫から北海道産大豆使用の白みそを取り出して一言。

 「白鳥、お前なぁ…」
 「お説教はもういいです。ちゃんと責任取ってくださいね」
 「何もしてない」
 「嘘、何もしてない証拠あるんですか?」

 そんなものどこにも無い。
 布団に潜り込んでからの出来事は伏せるとして…ハワイコナが苦くて飲めないと不機嫌をまき散らす白鳥の前に皿を並べる。
 目玉焼き、ショルダーベーコンの素焼き
 ストックしておいた作り置きに、納豆、キムチ。
 無難な朝食を前にして「いただきます」手を合わせてから箸を取る。

 「料理上手いんだね」
 「趣味みたいなもんだ。おい」
 「なに?」
 「納豆はもっと混ぜろ。最低30回、空気を含ませた方がマイルドな味になる」

 手本となる器の中身を覗き込む素直な様子に、反射的に頷いてみせる。
 箸の使い方がなってない。
 握るな、寄せるな。
 現代人の孤食に歯止めが利かないのは親の躾の範囲じゃないとしてもこれは酷い。余所ン家で一晩世話になっておきながら未だお礼の一言も無しに皿に口をつける威勢のいい食べっぷり、俺より頭二つ分小さいのに随分な貫禄だ。
 茶碗に炊飯器の米全部入れたと思われる様子の白鳥が着席、また食べ始める。

 「キムチまだある?」
 「無い。これ食べていいぞ」

 大袈裟にして見せるけど最初から貰う気でいたのか、天然過ぎてもうわからん。

 「いいなぁ、絢斗さんの彼氏になったら毎日美味しいご飯食べれて」

 視線が合わない…ゆとり…世代を弊害とは言いたくないが、彼女ではなく彼氏、どうあっても自分基準で何の脈絡もなく話し始めるモンスターは狙った獲物を残さず食べて舌なめずり、米粒を舌で浚っていく。
 見ないようにしたが、不覚にも箸が止まってしまった。

 「洗い物は俺がするよ。一食一泊の恩義、だっけ」
 「いい。片付けは俺がやる」
 「じゃあシャワー浴びてきてもいい?それとも…」

 前に回り込んで胸から下に滑り落ちる指に咳払いをひとつ、逃げ腰でシンクの前に立った。
 やめろ、そんな目で俺を見るな。
 キムチ納豆食った男とキスはご免だ。
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登場人物紹介

江波絢斗

176/65/37・A型

趣味が料理の純然たるアラサー部長。

仕事には誠実で真面目、温厚な性格。恋愛には臆病…元彼のあまい呪縛から

逃れられない一方で、令和チャンの彼氏に翻弄される日々。

好きなもの・肉、麺類、和菓子

白鳥路嘉

165/56/23 B型

平成最期の新入社員で毎日が食べ盛り!令和のツン担当タチわんこ

性格

・小悪魔です

・すぐ機嫌が悪くなります

・親しい人に対してどS

・好きな食べ物「絢斗のつくるごはん」

・酒が弱い

・基本めんどくさがり

・ぼっち嫌い

・絢斗が大好き過ぎる!でも浮気っぽい…飽きっぽい…

・怒ると泣く

・双子の兄はラガーマンで弟/溺愛♡

的場和真

180/69/37 O型

日本全国を食べ歩く!バイヤーが天職のイケメン営業バリダチ

絢斗の食を常にリードする、ティーインストラクターの資格を持つ紅茶王子。

オンラインで料理研究家として名を上げる。

実業家の父親と2人の母を持つ複雑な家庭環境で人間不信…

絢斗にずっと片思い。一途な面も?

性格

・見た目と中身が全然違う

・好きになったら一直線

・現状維持型マイペース人間

・恋愛アドバイザー

・絢斗以外にあまり興味がない

・キレると面倒くさい感じになります

佐伯宗一郎

185/72/32 AB型

絢斗の元彼。国民的スイーツ王子として芸能人レベルで活動中、タチ寄りのリバ。

甘い物が主食で「男」も食べ物として見ているせいか

病的な浮気性…他人に理解されないところがある天才肌。

激しい収集癖があり、一度言ったらきかない頑固者。

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