第12話 シメパフェ
文字数 1,288文字
元彼の宗一郎は浮気っぽくて…
三下り半を付けるまで随分と時間を費やした。何度となく甘い言葉に騙されきた俺にも打算があり、違う男に可能性を感じて選ばなかったにのは、他人と新たな関係を構築するのが面倒だった半面、宗一郎を失う寂しさに束縛されていたからだ。
別れて、半年…
仕事に打ち込んできたが誘われたらまんまと出向いてしまう自分の愚かしさに頭を抱える。
路嘉にどうやって接したらいいのか判らない。
また浮気をされても、取り繕ってやり過ごしてしまう。それが浮気をさせる要因だと和真に指摘されても治らない俺はクズ…いや、自分を貶めることはやめよう。
勢よく吹き出るシャワーを顔に浴びて前髪をかき上げる。
ポンプから押し出されるボディソープを掌で泡立て、汗と一緒に流せばガラス張りの仕切りの向こう側で待つ、宗一郎と目が合った。
濡れた体のままバスローブの袖を通して裸足で絨毯を歩いた先にあるキングサイズの広いベッドに横たわり枕をひとつ、抱えるのが俺の寝ぐせだ。まだ少し酒が残ってる。
「悪酔いしたか?チェイサーしろってあれだけ飲み方教えてやったのに」
交わしても執拗に追いかけてくる唇を怪訝に払い、酒臭いため息をひとつ。
わかってる
どれだけ嫌がってみせても、この男には通用しない。
「絢斗?ちょっと見ない間に、色気出てきたね」
「お前がそういう目で見てるからだろ」
「やばい興奮してきた…ほら、これ見ろよ?」
「言われなくても見えてる」
「素直だな、お前こういうの好きだろ」
バスローブの上から唇を這わせて耳元で甘く囁いた後
俺の眼前に見開くそれは…
8段重ねのタワーパンケーキ、アイスクリーム付き。
「本日の〆 パフェ」
「これパフェじゃねぇーだろ。食えないって…宗一郎のだめなところ、そこ!」
甘いものは別腹というが宗一郎の場合、甘いものが主食。
糖尿病予備軍の名を欲しいままにフォークを突き立て、自撮りを楽しむ。
「この上からチョコレートかけて。もっと左、そこ…いいよ…ゆっくりかけて」
「わざと言ってないか」
「絢斗のエッチ。そんなに俺としたいの?」
上目遣いでスマホのカメラを向ける宗一郎の手を押さえる、やめろ。
甘い余韻が視線となって身を寄せればスマホのランプが点滅していることに気が付く。
この手を離せば現実に引き戻される。いいのかと声をかけてくる宗一郎の体温から抜け出す、和真の着信に救われた。
まさか宗一郎とホテルに居る、なんて…隠し通せる自信がない。
胸の内がざわつく。今、浮気をしているんだとここにきてようやく頭が追い付く。身勝手で浅はかな行為に思わず、出掛かった言葉を飲み込んで肩をすくめる俺は息をするのもやっとで、宗一郎は笑いながらベッドから抜け出て、こう言った。
お前の良いところはゴリ押しが通用する
純然たるその性格だな。
俺を相手に後悔なんかしてくれるなよ?
あれが今の俺にできる精一杯だ。シャワー浴びて来る。
全く酷い男だ。
三下り半を付けるまで随分と時間を費やした。何度となく甘い言葉に騙されきた俺にも打算があり、違う男に可能性を感じて選ばなかったにのは、他人と新たな関係を構築するのが面倒だった半面、宗一郎を失う寂しさに束縛されていたからだ。
別れて、半年…
仕事に打ち込んできたが誘われたらまんまと出向いてしまう自分の愚かしさに頭を抱える。
路嘉にどうやって接したらいいのか判らない。
また浮気をされても、取り繕ってやり過ごしてしまう。それが浮気をさせる要因だと和真に指摘されても治らない俺はクズ…いや、自分を貶めることはやめよう。
勢よく吹き出るシャワーを顔に浴びて前髪をかき上げる。
ポンプから押し出されるボディソープを掌で泡立て、汗と一緒に流せばガラス張りの仕切りの向こう側で待つ、宗一郎と目が合った。
濡れた体のままバスローブの袖を通して裸足で絨毯を歩いた先にあるキングサイズの広いベッドに横たわり枕をひとつ、抱えるのが俺の寝ぐせだ。まだ少し酒が残ってる。
「悪酔いしたか?チェイサーしろってあれだけ飲み方教えてやったのに」
交わしても執拗に追いかけてくる唇を怪訝に払い、酒臭いため息をひとつ。
わかってる
どれだけ嫌がってみせても、この男には通用しない。
「絢斗?ちょっと見ない間に、色気出てきたね」
「お前がそういう目で見てるからだろ」
「やばい興奮してきた…ほら、これ見ろよ?」
「言われなくても見えてる」
「素直だな、お前こういうの好きだろ」
バスローブの上から唇を這わせて耳元で甘く囁いた後
俺の眼前に見開くそれは…
8段重ねのタワーパンケーキ、アイスクリーム付き。
「本日の
「これパフェじゃねぇーだろ。食えないって…宗一郎のだめなところ、そこ!」
甘いものは別腹というが宗一郎の場合、甘いものが主食。
糖尿病予備軍の名を欲しいままにフォークを突き立て、自撮りを楽しむ。
「この上からチョコレートかけて。もっと左、そこ…いいよ…ゆっくりかけて」
「わざと言ってないか」
「絢斗のエッチ。そんなに俺としたいの?」
上目遣いでスマホのカメラを向ける宗一郎の手を押さえる、やめろ。
甘い余韻が視線となって身を寄せればスマホのランプが点滅していることに気が付く。
この手を離せば現実に引き戻される。いいのかと声をかけてくる宗一郎の体温から抜け出す、和真の着信に救われた。
まさか宗一郎とホテルに居る、なんて…隠し通せる自信がない。
胸の内がざわつく。今、浮気をしているんだとここにきてようやく頭が追い付く。身勝手で浅はかな行為に思わず、出掛かった言葉を飲み込んで肩をすくめる俺は息をするのもやっとで、宗一郎は笑いながらベッドから抜け出て、こう言った。
お前の良いところはゴリ押しが通用する
純然たるその性格だな。
俺を相手に後悔なんかしてくれるなよ?
あれが今の俺にできる精一杯だ。シャワー浴びて来る。
全く酷い男だ。