第4話 社員食堂
文字数 1,226文字
午前7時4分、改札にパスケースを宛てゲートが開く。
週明けこの時間は会社員より学生の通学が多く、手元に注意しながら3つ先の駅で下車。ビルは大きいので近くに見えるが歩くと遠いのが俺の勤め先だ。
赤いストラップの社員証を首にかけ、行き交う人々に挨拶を繰り返し、受付に白鳥の社員証を置く。これが無ければ各フロアに上がれないので、白鳥がここへ立ち寄ってくれることを願い1時間早く出勤した。
誰もいないオフィスでひとり、出張のお土産にと前に貰っていた紙包みを開く。
抹茶のフィナンシェに白小豆入り
悪くはないが、ビターチョコレートの組み合わせが個人的に好きだ。
午前11時半、昼食の休憩でオフィスを出ると正面から白鳥が走って来た。
首から社員証を下げている。
俺は声を掛けようと顔を上げるが、そのまますれ違い振り返る様子もないまま去って行った。足を止めたものの心は置き去りにされ暫く佇む。
おいおい、酔い潰れたお前を介抱して食事を与え、わざわざ社員証を届けてやったのは俺だぞ?無かったことにしているつもりか、それとも俺が期待し過ぎなのかはさて起き、社員食堂に到着。
SNSで人気の料理研究家コラボランチに狙い通りありつき、席に着くと後ろから和真に声を掛けられた。
「それも気になったけどここで食うならA定、浮気なし」
隣の席にトレイを置いて食べ始める。
コラボランチが普段でいう日替わり定食、A定食は肉と魚がメインで、B定食が麺。ただし月曜のA定食はカレーと決まっており和真のお気に入りだ。
大手食品メーカーの開発部から聞いた話を軽快に暴露する和真だったがあるタイミングで口を閉ざし目配せ、何かと思えば白鳥が斜め向かいに座っていた。
一瞬、目が合った。
挨拶するわけでもなく白鳥は勢いよく箸を持ってニシンの竜田揚げを一口で食べて、茶わんに口を付けて掻き込む。相変わらずの食べ癖だな。
視線を外すと和真が途切れた会話を繋げた。
「例の国産農園からジャムの試食貰ったんだけど、要る?」
「ああ、種類は?」
「何種類かあるけど苺がお勧め。ロシアンティーに良いと思って、仕事終わりに…あ、俺がお前んちに行けばいいのか」
白鳥を意識してか、悪戯っぽく含み笑い視線を投げる。和真の悪い癖だ。
「じゃあ、俺行くわ。また連絡する」
確信犯、とはいえきっかけを作ってくれたのだから和真には感謝しないとな。
プラスチックの湯飲みに口づけお茶を飲み込んでから視線を上げるとそれまで俺を見ていた白鳥が視線を反らす。
「社員証を無事に受け取ったようで何より。再発行するのに手続きが面倒だから無くすなよ」
「今のひと、誰」
おい、ここ会社の社員食堂だぞ。
痴話喧嘩を吹っかけられる間柄でもないのに何なんだその態度は、項垂れていると白鳥は続け様に言葉を射して来るので場所を変えて話し合うことにした。
週明けこの時間は会社員より学生の通学が多く、手元に注意しながら3つ先の駅で下車。ビルは大きいので近くに見えるが歩くと遠いのが俺の勤め先だ。
赤いストラップの社員証を首にかけ、行き交う人々に挨拶を繰り返し、受付に白鳥の社員証を置く。これが無ければ各フロアに上がれないので、白鳥がここへ立ち寄ってくれることを願い1時間早く出勤した。
誰もいないオフィスでひとり、出張のお土産にと前に貰っていた紙包みを開く。
抹茶のフィナンシェに白小豆入り
悪くはないが、ビターチョコレートの組み合わせが個人的に好きだ。
午前11時半、昼食の休憩でオフィスを出ると正面から白鳥が走って来た。
首から社員証を下げている。
俺は声を掛けようと顔を上げるが、そのまますれ違い振り返る様子もないまま去って行った。足を止めたものの心は置き去りにされ暫く佇む。
おいおい、酔い潰れたお前を介抱して食事を与え、わざわざ社員証を届けてやったのは俺だぞ?無かったことにしているつもりか、それとも俺が期待し過ぎなのかはさて起き、社員食堂に到着。
SNSで人気の料理研究家コラボランチに狙い通りありつき、席に着くと後ろから和真に声を掛けられた。
「それも気になったけどここで食うならA定、浮気なし」
隣の席にトレイを置いて食べ始める。
コラボランチが普段でいう日替わり定食、A定食は肉と魚がメインで、B定食が麺。ただし月曜のA定食はカレーと決まっており和真のお気に入りだ。
大手食品メーカーの開発部から聞いた話を軽快に暴露する和真だったがあるタイミングで口を閉ざし目配せ、何かと思えば白鳥が斜め向かいに座っていた。
一瞬、目が合った。
挨拶するわけでもなく白鳥は勢いよく箸を持ってニシンの竜田揚げを一口で食べて、茶わんに口を付けて掻き込む。相変わらずの食べ癖だな。
視線を外すと和真が途切れた会話を繋げた。
「例の国産農園からジャムの試食貰ったんだけど、要る?」
「ああ、種類は?」
「何種類かあるけど苺がお勧め。ロシアンティーに良いと思って、仕事終わりに…あ、俺がお前んちに行けばいいのか」
白鳥を意識してか、悪戯っぽく含み笑い視線を投げる。和真の悪い癖だ。
「じゃあ、俺行くわ。また連絡する」
確信犯、とはいえきっかけを作ってくれたのだから和真には感謝しないとな。
プラスチックの湯飲みに口づけお茶を飲み込んでから視線を上げるとそれまで俺を見ていた白鳥が視線を反らす。
「社員証を無事に受け取ったようで何より。再発行するのに手続きが面倒だから無くすなよ」
「今のひと、誰」
おい、ここ会社の社員食堂だぞ。
痴話喧嘩を吹っかけられる間柄でもないのに何なんだその態度は、項垂れていると白鳥は続け様に言葉を射して来るので場所を変えて話し合うことにした。