第2話:TRONと富士通FMタウンズ

文字数 2,006文字

「その頃、S氏が世界初のTRONと言うプログラム構想が完成した」
「S氏はTRONについて中身の設計や仕様を全て公開『オープンアーキテクチャ』を公言」
「システムの機能を定めた仕様書もソースコードも公開していた」
「そのため、入手した人は、どのように使っても改変しても構わなかった」
「入手したことを言わなくて良いし自分達のために作り変えたものを公表する必要もない」

「自分で作った部分の知的所有権は守ることができる」
「これはLinuxなど、他のオープンソース系のOSにはない斬新な試みだった」
「S氏は、私はこれを売って儲けているわけではなく、無償で公開する」
「だから、自由に使って社会を発展させてほしいという願った」

「リナックスは、OSを作る人だけでなく利用する人もプログラミングができることが多い」
「しかし、OSを改変や拡張した場合、その部分を公開せよというルールがある」
「一方、組み込みOSの世界では、自動車とかプリンタを使っても利用するだけの一般消費者」
「だから、OSの改善や改良を公開することにこだわらなくて良い」

「組み込みOSはあくまで黒子ということで、TRONは主張しない」
「この点が評価され、逆に技術者には評判が良くて、すぐに広まった」
「TRONを構想した1980年代初頭、コンピュータでは大きな変化が起きつつあるった」
「日本の大手はパソコンの原型、マイコン、半導体製造をし全方位の分野で事業を進めた」

「しかし、多くはハードウェア中心の研究開発であった」
「そうした流れの中でS氏はソフトウェアの方がこの先、重要になると考えた」
「情報処理系コンピュータと工場で機械制御の組込コンピュータの2つの方向性があった」
「S氏は組み込み型をやろうと考えた」

「そのためTRONは多くの機械を制御するコンピューター言語として広く世界中に広がった」
 その後、国連機関の国際電気通信連合「ITU」が発足150年の式典の時、「IoTの元祖でTRONをつくったのはサカムラだ」というので「ITU150周年賞」をもらった。

 受賞した6人の中には、S氏の他にビル・ゲイツやインターネットの原型ARPANETをつくったロバート・カーンもいた。1980年代のS氏の英語は拙いものだったと思うが、それでも学術のコミュニティは、みんなわかっていてくれた。それは研究者同士で理解できていたということだ。

 しかし、TRONプロジェクトは、その後、国内外の多数の企業が参加して発展したが、1989年、思わぬ政治問題に巻き込まれることになった。当時、日本は米国との間で貿易摩擦が起きており外交問題となっていた。米国の通商代表部「USTR]は日本に対して「貿易障壁」として半導体や自動車部品などを掲げた。

 その候補の中にTRONも含まれていた。この一件で、TRONが世界で広がりにくくなったという見方はいまなお根強く残っている。1988年に4月、伊藤栄吉は、NEC川崎工場の近くの独身寮に入り工場へ通った。そして組合主催の若者向けの海水浴、登山、スキーなどに参加するようになった。

 その中に同じ九州の長崎出身で長崎大学経済学部卒業の三枝時恵さんがいた。九州弁が懐かしくてお互いに親しくなるのに時間がかからなかった。そして夏にはビアホールへ行ったり映画を見に行ったりした。10月には、伊藤栄吉が三枝時恵さんにプロポーズした。その後年末休みに入ると伊藤栄吉が三枝時恵さんの実家を訪ねた。

 そして、結婚したいと言い履歴書と自分の家族の話をすると彼女の両親が了解してくれた。こうして結婚式を1989年4月16日を東京駅近くのホテル行うことにし、新婚旅行は、大阪、長崎、博多、大阪へ4泊5日と決めた。1989年になると1月7日、昭和天皇崩御による「平成」への改元された。

 1989年2月28日、富士通からFMタウンズという新型パソコンが誕生した。このパソコンの全面に円形のCDを再生する装置が設置され個性的なデザインだった。その他、インテル80386搭載、32768色同時表示や1677万色中256色発色機能、640×480の解像度、PCM音源の標準搭載が装備されていた。

 それに加えて強力なグラフィック機能やオーディオ機能が特長で独自構造の32ビットマルチメディアパソコンであり当初のキャッチコピーは、「ハイパーメディアパソコン」FMタウンズは、マルチメディア機能を生かした教育分野向けのソフトウェア、ゲームソフトが充実していた。メインメモリ2メガでフロッピーディスク2つ装着していた。

 それで、販売価格が39万5千円、ディスプレイをつけて50万円を越えプリンターをつければ60万円を超え高価だった。そのため、富士通は、本体と開発環境など一式を学校法人向けに無償で提供した。伊藤栄吉は、このパソコンはきっとマルチメディアパソコンとしてきっとヒットすると考えた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み