ボッチな俺とスクールライフと03

文字数 1,824文字

何も言い返す言葉がなく、その後は売店で買ったオニギリを四つ程、無言で食べ。そして、それが終えると「さて……」と、志紀先生は本題へと話を進め始めた。



生唾すら飲んでしまう程の緊張感の中、蒼葉優縁は教室の時と、何ら変わらない無表情。



「まず初めに、蒼葉……お前は決ま」

「いいえ」



最初から返す言葉が決まっていたかのように。志紀先生が言う言葉を予知しているかのように。間を置かず、寧ろフライングをしてまで何かを否定する蒼葉優縁。



「そうか……。まぁいい、長門雄大、お前は覚えているか??」



真剣な眼差し。いや、これは何かと断りにくさを醸し出した重たい感じだ。



──これが、上司から向けられる視線と言うやつか……。



しかし、なんの事かサッパリわからない俺は、その目を見ながら引き攣り気味に笑顔で首を傾げる。



「……かぁっ!! 男ともあろう者が忘れるかね普通……!!」



椅子に寄りかかり、体制を後ろに逸らしつつ。髪の毛を搔き上げる。その呆れたという言葉を表している態度に俺は、何も言えずにいた。



蒼葉は「私には関係ない」と言っているかのように鞄から書物を取り出し隣で黙々と黙読をしている。



その光景を見たであろう志紀先生は、頭を搔くのを止めた。



──次の瞬間ッ



“べキョン”と言う音が響く。



逸らしていた体制の力を用いて、ペットボトルで豪快に蒼葉優縁の脳天をぶっ叩いたのだ。



一瞬の出来事に・脇を早い速度でペットボトルが振り下ろされた出来事に。俺は「ははっ」とコメカミを“ピクピク”と引き攣らせることしか出来ずにいた。





「……むぎゅー……くぅあ……」



──デジャヴだな……。



「なに、知らばっこいてんだね? 蒼葉。お前は、毎回呼び出されているんだから、いい加減決めたまえよ」



──毎回? なるほど、どおりで、慣れてるような、落ち着いているような雰囲気だったのか。

って、毎回呼び出しを食らうって何をしたんだよ。



そして、再び視点は俺へと移る。



「長門は、この学校の決まりを知っているよな??」



「決まり……ですか??」



「ぁあ、決まりだ。生徒は部活をやらなくてはならない」



──そうだった……。予想にもしていなかった。



何も決めていないが、蒼葉優縁の二の舞いには、なりたくない。そんな一心で俺は言葉にだす。



「えっと、なら文芸部とかやり」



「駄目だ」



「良かった。ありますよね、そりゃあ。じゃー文芸部でおね……え?」



「だから、駄目だ」



冷たい空気のみが、その言葉を攫い。回転寿司のように、俺が話す前に言葉が運ばれる。



「入学式、私はお前に罰を考えると言ったな??」



「え……あ、はぁ」



「罰は、我が部活に入ってもらう事だ」



「そんな!! 義務教育じゃないんですから、自由に……」



「義務じゃないからこそ罰があるんだよ? 長門」



何も言い返せない俺は、納得をしてしまっていた。

その表情はわかり易かったのか、志紀先生の口角は“ニイッ”と上がる。



「私が顧問を務める部活。人の夢を純粋に応援し幸せを運ぶ部活。通称『人夢粋幸』にんむすいこう部に入ってもらう」



「えっと、それはどう言った??」



「まぁ、簡単に言えば、街のゴミ拾いや。相談乗り。ボランティアみたいなものだな?」



得意げに話すが。正直、ネーミングセンスを感じる事が出来ない。



それに、人とあまり関わりを持たない俺がそんな前衛と言うべき部活を出来るとも思えない。



「それに……今、人手が足りなくてな? だからもう決定事項だから。長門に関しちゃ反論の余地ないからな?」





俺の肩を叩きながら、さぞ満足なんだろう。と、感じざるを得ない表情を作る志紀先生。



──こんなん、権力の横暴だ……独裁者め!!





「じゃ、今日の放課後。一階の多目的室に集合って事で頼むな??」



会議室なのに、会議では無く。ただの、強制されただけ。

「はっはっはー」と言う志紀先生の声のみが、最後まで耳に残っていた……。



──ちきしょう!!



と、同時に空気を読むかのように黙り込んでいた静かな部屋にもチャイムが鳴る。



登校初の昼食は、まったく楽しめず、落ち着く事が出来なかった。



俺は、こんな事でスクールライフを過ごせるのだろうか。



そんな事を考えつつ、蒼葉優縁と再び教室へと向かう。



「哀れね……長門君……」



──グハッ……
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