第14話

文字数 304文字

「あの、分かりません、だから、人違い……」

 僕は、抱きついてくる彼女を引き剥がそうとしたが、まず自分の身体が重くて、ベトベトに濡れたベッドに沈んだままである。
 
 やがて彼女が馬乗りになった。ぐるるる、と喉を鳴らしている。

 うばあーっ!

 僕の顔に例のが再びぶち撒けられた。
 言葉も出ない。

「一緒に逝きましょう……」

 彼女は、僕の両腕を押さえつけて、そうささやいた。
 幻想のマサシと向き合っているのだろうか。
 
 おそらくマサシという男は、自己都合だけで彼女との関係を強引に終わらせたのだろう。
 僕は、理不尽な思いで彩未と別れたばかりのせいか、憎しみに囚われた彼女よりも、彼女の恨みを買ったマサシにたいして憤った。
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