第12話

文字数 247文字

「マサシー!」

 その声で、先ほどの女性だと分かった。
「どうして? ねえ、どうしてなの?」
 彼女は、ゼイゼイと息しながら、いかにも恨めしそうにいった。

「だ、だから、僕、マサシじゃないんですよ……」
「マサシ……許さない。ぜったい」
 彼女には、聞こえていない。僕は戦慄した。

 僕の顔が暗くて見えないから、彼と思い込んで襲ってきたのだろうか。
 が、あいにく電灯のスイッチはトイレのそばにしかない。

 彼女は、僕の耳元で、冷たい吐息とともにささやいた。

「私、もうすぐ死ぬの。だから、あなたも一緒に死んで?」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み