第15話

文字数 290文字

 そうしているうちに、僕の抵抗が一瞬緩んだのだろうか、彼女は大きく見開いた瞳をぎらつかせると、どこからともなく硬く鋭い物を取り出して、ちゅうちょなく僕の胸の上に突き立てた。
「や、やめ……!」
 
 サクリと生肉を切り込むような音がしたが、不思議と痛みはなかった。
 その代わり、喉の奥から温かい液体が一気にこみ上げてくる。
 それが何かと気づくのにさして時間はかからなかった。
 気道が塞がったに違いない。
 咳き込み吐き出すも、それは次から次へと口内に満ちあふれてきた。
 まもなく溺れるかのように、まったく息ができなくなる。

 やがて全身に力が入らなくなり、たちまち暗闇に飲まれていった。



 
 
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