第9話

文字数 248文字

 そうためらいつつも僕は、心を決めてドアに手を掛けた。

「分かりました。いいですか? 僕は今、出ていきますよ」

 返事はなかった。
 僕は、もう一度スコープを覗いた。
 
(……いない?)

 急いでサンダルを履いて、僕はドアを押し開けた。

 そこは、通路の暗く小さい電灯一つあるきりの暗闇で、彼女の姿はなかった。
 
(消えた?)
 が、それに越したことはない。
 僕はほっと胸を撫で下ろす。
 
 飲めない酒を無理に飲んで、僕の頭がどうかしていたのかもしれないが、幻想にしては生々しい感触である。

 とんだ悪夢の夜だった。
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