次世代の羊飼い

文字数 1,006文字

「ジリリリン」
鳴り響く目覚ましを止め、朦朧とした視界の中でむりやり起き上がる。首を回して、伸びをして、カーテンを端に寄せて窓の外を露わにする。視界に飛び込んでくる外の世界は、相変わらず闇だけだ。


 太陽が赤色巨星となる時期まで、あとわずかとなっていた。人類は有史以来、数々の難題を乗り越え地球に根を張り続けてきた。しかし、今回ばかりはさすがに難しいという意見が大勢を占め、地球を離れる事を考え始める。だが、他の星へいきなり全人類が移住するのは危険極まりない。この問題を解決するため、前もって当たりをつけた星々に、何人かの人々を住まわせる。そして、彼らがその星で生活し、数世紀ほど生き延びることができれば、その星へ本格的に移民を検討する、という方法が提案された。

 人道的な見地から反対の声も上がっていたが、このまま地球で座して死を待つというわけにも行かず、この提案は実行されることとなった。


 私とその家族は、地球から数百光年ほど離れた惑星に先住している。この惑星は、気温も快適で雨もたまに降り、地球と気候はそう大差ない。そういう意味では、非常に住みやすい星だと言っていいだろう、朝が来ないことを除いては。
 そう、朝が来ないのである。この系の中心に位置する恒星は、殆ど光を発しないのだ。したがって、昼夜の概念はあるにはあるが、明るさは何も変わらない。この事実を知った時、私たちはほんとにここで暮らしていけるだろうか、と不安になった。しかし、住めば都という奴だろうか、色々ありつつもこの地で数年を過ごすことができた。

「よし、プロット完了、と」
「わーい。これくっつけていいの?」
「ああ、でも適当じゃダメだぞ。歴史に残るんだから、上手に繋げてかっこいい星座にするんだ」
「はーい」

 暗闇に囲まれる生活の中で、ずっと考えつづけていたことがある。おそらくこの星に骨をうずめるであろう私が、後世に残せるものはあるだろうか。
 目の前で瞬く星々を見つけるのは、それほど時間のかかることではなかった。

「パパ、できたよ」
「ん、どれどれ」
「こことぉ、ここと、ここくっつけて、クレヨン座!」
「なんだ、ただ真っ直ぐ繋げただけじゃないか」
「えへへ、ダメかぁ」
「まあ、地球の星座も変なのあったし、こういうのもいいか」
「やったー」

「こうちゃん、あなた、朝ごはんできたわよ」
「あ、ママー。ウィンナーある?」
「あるけど、野菜もちゃんと食べるのよ」
「はーい」
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