相続
文字数 928文字
「とにかく知り合いに該当する人物がいないか考えよう。」
このての殺人にはごく近くの顔見知りの犯行が多い。恋愛がらみかもしれない。記憶の限りでは、守は付き合っている相手もいないし、告られたこともない。もっとも幼稚園のころのことはわからないが。守に片思いの女子がいて、その子を好きな男子から怨まれることも無いとはいえない。
「AI、誰かに告られたことは?」
「現実世界ではない。ネットの仮想空間では年中だ。」
AIは男子だが、ネットでは女子として活動している。そのほうが情報が集めやすいそうだ。AIに振られたのを守のせいと勘違いしたか?
「クロエンマ。彼には動機が無い。AIならネットでの抹殺だろうが、舜殺できるだろう。僕らを目の仇にしているというなら、城田だが。やつは僕や親父の正体にはまだ気付いていまい。学校では目立たない僕だ。教師に怨まれる覚えも無い。となれば生徒か。いや、教師が協力者ということはありうる。親族の中にもあやしいやつはいる。」
親父はしがない公務員だったが、母方の実家が旧家で、佐賀藩に使えていた士族の出だった。もともと佐賀藩の武士は数が多い。そのため多くの武士が明治時代に平民になっていたが、先祖はかなりの要職にあったようだ。噂では、持ち山に佐賀藩の隠し財産があるといわれている。
黒岩燕真は、そんな母方の遠縁にあたる。イギリスで執事の仕事をしていたが、守の父が失踪し、守の世話をするために帰国した。もともと、イギリスでうそツキの偽善者をこらしめる義賊クロエンマとして活動していた。
すでに母は他界しており、実家の遺産は父、謙蔵が相続していたが、それをこころよく思わない親族もいるようだ。もし、父が死んでいれば、それらは守が相続することになる。そうなれば相続権を失う連中も出てくる。彼等が職員や生徒として密かに校内に紛れていてもおかしくはない。
「クロエンマは黒岩家の遺産に興味ないのかい?」
守は単刀直入に尋ねた。
「私は自身の身の丈を十分承知しております。度を越えた財産というものは人生を狂わせるものです。ましてやそれが自身の努力もなく手にしたものであればなおさらです。」
お堅い執事らしい答えだ。
このての殺人にはごく近くの顔見知りの犯行が多い。恋愛がらみかもしれない。記憶の限りでは、守は付き合っている相手もいないし、告られたこともない。もっとも幼稚園のころのことはわからないが。守に片思いの女子がいて、その子を好きな男子から怨まれることも無いとはいえない。
「AI、誰かに告られたことは?」
「現実世界ではない。ネットの仮想空間では年中だ。」
AIは男子だが、ネットでは女子として活動している。そのほうが情報が集めやすいそうだ。AIに振られたのを守のせいと勘違いしたか?
「クロエンマ。彼には動機が無い。AIならネットでの抹殺だろうが、舜殺できるだろう。僕らを目の仇にしているというなら、城田だが。やつは僕や親父の正体にはまだ気付いていまい。学校では目立たない僕だ。教師に怨まれる覚えも無い。となれば生徒か。いや、教師が協力者ということはありうる。親族の中にもあやしいやつはいる。」
親父はしがない公務員だったが、母方の実家が旧家で、佐賀藩に使えていた士族の出だった。もともと佐賀藩の武士は数が多い。そのため多くの武士が明治時代に平民になっていたが、先祖はかなりの要職にあったようだ。噂では、持ち山に佐賀藩の隠し財産があるといわれている。
黒岩燕真は、そんな母方の遠縁にあたる。イギリスで執事の仕事をしていたが、守の父が失踪し、守の世話をするために帰国した。もともと、イギリスでうそツキの偽善者をこらしめる義賊クロエンマとして活動していた。
すでに母は他界しており、実家の遺産は父、謙蔵が相続していたが、それをこころよく思わない親族もいるようだ。もし、父が死んでいれば、それらは守が相続することになる。そうなれば相続権を失う連中も出てくる。彼等が職員や生徒として密かに校内に紛れていてもおかしくはない。
「クロエンマは黒岩家の遺産に興味ないのかい?」
守は単刀直入に尋ねた。
「私は自身の身の丈を十分承知しております。度を越えた財産というものは人生を狂わせるものです。ましてやそれが自身の努力もなく手にしたものであればなおさらです。」
お堅い執事らしい答えだ。