口論

文字数 980文字

 農政大臣の稲田は、国会で野党からの激しい追及にあっていた。
 「大臣であるあなたも米の関税撤廃の件、事前に知っていたんじゃないんですか?だったら、総理と同罪でしょ。」
 「首脳会談の合意については、私は後から知ったわけでありまして。」
 「農作物の自由化に前向きだったではありませんか。米だけ例外とは思えませんな。」
 「天候不順に加え、大規模災害もあり、飼料としての米が不足することが予想されております。ですから、飼料用のものについて規制緩和するのは妥当だと申し上げましたが、食料も含む完全自由化はありえないわけでして。」
 汗を拭きながらの厳しい答弁が続く。そんな中、イヤフォンをした議員からため息が流れる。。テーブルのしたを覗くと、そこかしこで競馬、競輪、オートレースなどの新聞がちらほら見える。こいつら、話も聞かずに競馬にうつつをぬかしている。税金もらって遊んでる。こんな連中に限って、
 「地元での話題づくりのため。」
 などと、いいうんだ。もっとも、下っ端議員は、党本部への上納金に、派閥トップへの献金、さらには地元有力者へ配ったりとお金はいくらあっても足りない。せめて議員年金をもらうくらいまでは続けないと割が合わない。

 「やり直しか、中止じゃないのか?」
 一方、馬券売り場では、客が窓口で押し問答している。
 「ゴールした馬がいる以上やり直しはありません。3着までいますから、払い戻しもありません。」
 「雹が降ってきた時点で中止じゃないのか?」
 「いえ、出走後に中止はありません。」
 直後に窓口で支払いを求めると、当たり馬券を持っていることが周囲にわかってしまう。黒岩は揉め事に巻き込まれたくないため、時間をずらして換金したようだ。税金対策のため、振込み等は使わない。すべて現金。これが、ギャンブルの鉄則だ。

 で、例の掲示板だが、
 「個人攻撃や過激な発言は控えるように。」
 掲示板の管理人の管理人から注意があった。
 「ユルサナイ。ユルサナイ。オマエモ、ショクザイガヒツヨウダ。」
 読みようによっては
 『緩さ無い。緩さ無い。お前にも、食材が必要だ。』
 とも取れる。
 「ハズレタ。タナダケハ、ゼッタイ、コワス。」
 も、
 『外れた。棚だけは、絶対に壊す。』
 とも取れる。こいつは意外と頭の回るやつかもしれない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

稲田法喜

米の自由化を推進する農政大臣

棚田守(たなだまもる)

悪徳政治家を相手に戦う中学生盗賊:外米四世(ガイマイヨセイ)

予告状を出すのが彼のスタイル

黒岩燕真

外米の相棒:クロエンマ

行方不明の外米の父親に代わって現四世の世話をする執事

城田万次

通称:シロマジン

元刑事の探偵でガイマイを捕まえることが生きがい

棚田謙蔵(たなだけんぞう)

元、外米四世

ある事件以来、行方不明

謎の殺人予告者

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み