事故

文字数 696文字

 この国では、交通事故はめずらしくない。たとえ、死亡事故でもだ。
 「刑量学者いいづらかうぞう、元老院長、ひき逃げか?」
 衝撃的な見出しが躍る。裏掲示板にもさまざまな憶測が流れる。刑量学は、犯罪と罰則のバランスを決める学問で彼のさじ加減で多くの官僚たちが無罪となっている。
 「足が悪いので、特別仕様車を購入したらしい。特車待ちだってよ。」
 「あるく、はいまわる病だから責任を問えないって。」
 「弾劾中の矢部江しんぞう総理が目くらましのために指示したんじゃないか?」
 「気の弱い総理がヤベエノミクスの失敗を隠すためじゃないのか?」
 「ノミのシンゾウだな。」

 ガイマイの出番のようだ。クロエンマの調べでは、病気を理由に不起訴にしようとしているらしい。政府としては、官房機密費を使ってカンボウ生命をつくろうとしていたことをばらされたくないという思惑があるようだ。経務省の稲葉総子元大臣の『百年経っても大丈夫』というふれこみだった。
 自由に使える官房機密費の使い道を暴露されたくない阿房副総理の受け取り拒否にあって表に出ることはなかった。
 AIの入手した資料では、養老保険で、明かされていないが余命によって支払い年金が決まる。つまり、長生きして支払いが増えることがない。絶対赤字にならない優良企業が誕生する。
 総理を弾劾中の今、阿房としては総理になるチャンス。スキャンダルは避けたい。そうでなくても、官房長官のカスガ、次期総理といわれる岸かいせいや石橋わたるなどが総理の座を狙っているのだ。

 『イチゴ月にレイジョウをいただきに参る』
 守は予告状をいいづら邸に投げ込んだ。
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登場人物紹介

稲田法喜

米の自由化を推進する農政大臣

棚田守(たなだまもる)

悪徳政治家を相手に戦う中学生盗賊:外米四世(ガイマイヨセイ)

予告状を出すのが彼のスタイル

黒岩燕真

外米の相棒:クロエンマ

行方不明の外米の父親に代わって現四世の世話をする執事

城田万次

通称:シロマジン

元刑事の探偵でガイマイを捕まえることが生きがい

棚田謙蔵(たなだけんぞう)

元、外米四世

ある事件以来、行方不明

謎の殺人予告者

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