表彰

文字数 847文字

 「まずいことになった。」
 学校でもさほど目立たないように心がけていたつもりだったが、自由研究があれよあれよというまに内閣総理大臣賞をとってしまった。
 『古今東西の未解決事件の推理と検証』
 つい面白くなり、本気で推理してしまった。泥棒の始点からの考察が高評価を得てしまったようだ。

 「その件については、辞退いたします。」
 いくら表の顔でも有名になってしまっては、裏家業がやりにくくなる。しかも、相手はもっとも忌むべき政治屋のトップ。言ってみれば敵のラスボスから表彰されるようなものである。
 しかし、辞退したことで、余計にニュースになった。幸いにも未成年であるから、報道では個人情報はでなかった。

 「ウザイ、タナダ。キエロ。」
 また、書き込みがあった。やはり、守を狙っているのか?書き込みの主は、ウンメイと名乗っている。何か運命的な因縁でもあるのか?確かにこの裏掲示板は、怨みつらみを書き込んでスッキリしようという建前がトップに書かれている。やりたくはないが、何か起きてからでは遅い。アカウントをつきとめ、住所を割り出した。違法なのだが、相手に地雷を踏ませ、ダウンロードさせたアプリから位置を特定する。いたずら目的の連中は、携帯ではなくパソコンを使っている。パソコンの場合、OSやソフトの種類など色々な情報が掲示板のログに残る。また経路をたどれば入力している都市までさぐれる。こいつは幸いにも中学校のサーバーを踏み台にしている。そのサーバーで相手の情報を抜き出す。

 「同じ学区内のやつだ。それなりのスキルを持っていそうな連中を洗った。リストを送るから調べろ。」
 AIは仕事が早い。そのリストには五人の名前があった。

 生徒会長
 パソコン講師
 IT企業の息子
 県議会議員の娘
 そして、最後が守自身。

 「どういうことだ?」
 AIに尋ねると、
 「自作自演の可能性があるとコンピュータが割り出した。」
 との答えが返ってきた。これだから機械ってやつはいやだ。
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登場人物紹介

稲田法喜

米の自由化を推進する農政大臣

棚田守(たなだまもる)

悪徳政治家を相手に戦う中学生盗賊:外米四世(ガイマイヨセイ)

予告状を出すのが彼のスタイル

黒岩燕真

外米の相棒:クロエンマ

行方不明の外米の父親に代わって現四世の世話をする執事

城田万次

通称:シロマジン

元刑事の探偵でガイマイを捕まえることが生きがい

棚田謙蔵(たなだけんぞう)

元、外米四世

ある事件以来、行方不明

謎の殺人予告者

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