大谷氏

文字数 738文字

 しばらくすると、脱法ハーブが大量に出回っているといううわさが流れた。
 「調査では、麦畑紅茶の大谷氏兄弟が関わっているとか。」
 クロエンマの話では、兄の喫茶店で売られる茶葉に紛れて、弟が怪しげな葉を売っているというのだ。喫茶店で買った高級茶葉を弟の店で脱法ハーブにすり替えているのではないかと思われた。
 「証拠を挙げたところで、違法じゃないんだろ。」
 守としても、問題と思えても、買うほうもどうかと感じる。
 「ですが、最近喫茶店の紅茶に少量ずつ混ぜられて、知らないうちに中毒になる被害者が出ているという話です。」

 となれば、立派な犯罪だ。後日、その喫茶店に出かけることにした。店内には満開の桜の下、総理夫妻と大谷兄弟が並んだ写真が飾られていた。
 「招待状60番枠ですね。」
 ご丁寧に招待状まで額に入れてある。60番と言えばやばい連中が名を連ねている番号だ。葉っぱつながりだろうか。それとも、大口献金といった功労者なのか。いづれにしてもただならぬ関係だろう。

 「すごいでしょ。オーナーは総理と同じ下関出身なんですよ。こないだも、地元でふぐ刺しを食べながら懇談したと言ってました。来年は従業員も5千円で前夜祭に連れて行ってもらえるって話だったんですけどね。」
 店員は得意げに話した。
 「ことあるごとに、紅茶の提供を独占しているようです。」
 クロエンマが小声で伝えた。

 紅茶を飲んだが、特に変わった味はしなかった。
 「一般客には、普通の紅茶ですね。」
 うわさでは、一部の若い芸能人や二世などを相手に中毒化させているらしい。
 「権力をバックにやりたい放題という感じだな。」
 守とクロエンマはテーブルに盗聴器を仕掛けると、さっさと店を後にした。
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登場人物紹介

稲田法喜

米の自由化を推進する農政大臣

棚田守(たなだまもる)

悪徳政治家を相手に戦う中学生盗賊:外米四世(ガイマイヨセイ)

予告状を出すのが彼のスタイル

黒岩燕真

外米の相棒:クロエンマ

行方不明の外米の父親に代わって現四世の世話をする執事

城田万次

通称:シロマジン

元刑事の探偵でガイマイを捕まえることが生きがい

棚田謙蔵(たなだけんぞう)

元、外米四世

ある事件以来、行方不明

謎の殺人予告者

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