桜見る馬鹿

文字数 727文字

 AIから昨夜の、防犯カメラ映像と音声が届いた。閉店後、黒塗りの車が一台入っていく。

 「秘書官自らご苦労様です。」
 大谷兄の声だ。
 「税金狙いの桜がだめになったので、今度は桃にしようかと思うんだが、来年もお願いできるかね。花咲爺さんならぬ桃爺を呼んで。桃黒もいるし。」
 「年寄りの年金狙いなら桃より梅でしょ。小太り爺さんご一行とか。ところで、名簿どうするんです。消しちまったんでしょ。ハーブ入りのお土産を渡す相手がわからなくなっちまった。」
 「ほらよ。」
 バサッと紙の束を置いた音がした。
 「残ってちゃまずいですよ。」
 「タイトル見てみなよ。」
 「参加者記録。こっちが、招待者一覧。」
 「名簿という資料はもうないよ。皆、資料名を変えちまったから。データを消したわけじゃないから、機械的に復元も出来ない。また、少ししたら桜の文字を梅に変えるわけだし。正確な資料名を言わない限り、役人は出さないからね。官僚が政治家に対抗するための材料をそう簡単に手放すわけないだろ。これをねたに、出世街道まっしぐらさ。」

 「ところでもう冬なんだし、アールグレイ・スペシャルを変えます。女性ターゲット向けに、オレンジペコ・スペシャルにしようかと。ちょうどオレンジ風味のハーブが入ってきたことだし。しっかり、宣伝してください。」
 守たちが見たメニューにはスペシャルは無かった。どうやら、裏メニューが存在しているらしい。
 「お主も悪よのう。」
 「ワルイ様にはかないませぬ。」
 相手は官邸の番人と呼ばれている、割井秘書官のようだ。
 「タメイケみたいに裏切るなよ。」
 「心配するな。俺たちゃ、教育者じゃないから。」
 会話はそこで終わっていた。
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登場人物紹介

稲田法喜

米の自由化を推進する農政大臣

棚田守(たなだまもる)

悪徳政治家を相手に戦う中学生盗賊:外米四世(ガイマイヨセイ)

予告状を出すのが彼のスタイル

黒岩燕真

外米の相棒:クロエンマ

行方不明の外米の父親に代わって現四世の世話をする執事

城田万次

通称:シロマジン

元刑事の探偵でガイマイを捕まえることが生きがい

棚田謙蔵(たなだけんぞう)

元、外米四世

ある事件以来、行方不明

謎の殺人予告者

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