万馬券
文字数 839文字
子供なので賭け事は出来ないんだが、親父が共同の馬主になっている関係で、半ば強制的に馬券を買う。馬主しては人気がないと思われたくない。基本は、単賞である。基本的に人のいい親父は怪我でリタイア寸前だった馬の共同馬主となった。その後、美浦トレーニングセンター、通称トレセンで1年ほど過ごした。大きな馬用のプールを歩かせた。最初は嫌がって暴れた馬も、次第に自ら進んで入っていくようになる。
そうして復帰した馬だ。強いはずも無い。地方競馬の万年最下位。が、ある日、大波乱が起きた。その日は、小雨で馬場がぬかるんでいた。通常であれば、こういう日は騎手も慎重になる。
やはり、様子見の展開が続く。だんご状態のまま集団が第一コーナーにさしかかったころ、冷たい風が吹いたと思うと、パラパラと白い粒が落ちてきた。それは、一気に激しさを増し、馬たちの背中を叩いた。馬たちは驚き、周囲の馬を巻き込みながら、転倒や落馬が相次いだ。中には危険を感じてコースアウトするものもいた。当然馬たちは失速した。
雹だ。いきなりの激しい雹が馬たちに降り注ぐ。その混戦を大外から悠然と抜け出してきた馬がいた。集団に遅れ、最後尾に着けていた守の馬。彼はそのまま一着でゴール。大番狂わせだ。大量の外れ馬券は宙を舞う。
オッズは百倍以上の万馬券となった。馬主は馬主席にいるから、一般客から睨まれるようなことはない。子供の守が馬主として表に出ることも無い。小さな地方競馬なので馬主への配当も知れている。馬券は黒岩に換金させ、馬主席で待っていると、例の掲示板に書き込みが来た。
「ハズレタ。タナダケハ、ゼッタイ、コワス。」
カタカナで書かれたメッセージは、棚田家へのいっそう強い殺意が感じられた。
「少なくとも、親父が馬主であることを知っている人物だ。そうなるとやはり身内の犯行か。」
守にとって、疎遠な親族。誰が犯行に及ぶか推理するだけの根拠がなかった。ただ、父よりは、やはり自分が狙われていると感じた。
そうして復帰した馬だ。強いはずも無い。地方競馬の万年最下位。が、ある日、大波乱が起きた。その日は、小雨で馬場がぬかるんでいた。通常であれば、こういう日は騎手も慎重になる。
やはり、様子見の展開が続く。だんご状態のまま集団が第一コーナーにさしかかったころ、冷たい風が吹いたと思うと、パラパラと白い粒が落ちてきた。それは、一気に激しさを増し、馬たちの背中を叩いた。馬たちは驚き、周囲の馬を巻き込みながら、転倒や落馬が相次いだ。中には危険を感じてコースアウトするものもいた。当然馬たちは失速した。
雹だ。いきなりの激しい雹が馬たちに降り注ぐ。その混戦を大外から悠然と抜け出してきた馬がいた。集団に遅れ、最後尾に着けていた守の馬。彼はそのまま一着でゴール。大番狂わせだ。大量の外れ馬券は宙を舞う。
オッズは百倍以上の万馬券となった。馬主は馬主席にいるから、一般客から睨まれるようなことはない。子供の守が馬主として表に出ることも無い。小さな地方競馬なので馬主への配当も知れている。馬券は黒岩に換金させ、馬主席で待っていると、例の掲示板に書き込みが来た。
「ハズレタ。タナダケハ、ゼッタイ、コワス。」
カタカナで書かれたメッセージは、棚田家へのいっそう強い殺意が感じられた。
「少なくとも、親父が馬主であることを知っている人物だ。そうなるとやはり身内の犯行か。」
守にとって、疎遠な親族。誰が犯行に及ぶか推理するだけの根拠がなかった。ただ、父よりは、やはり自分が狙われていると感じた。