第2話

文字数 645文字

……………34歳の誕生日に自分では「ケバブ事件」って呼んでいるんだけど、放火事件を起こしたわけだ。起こしたといっても、自分でやったわけではない。無能な警察と検察がその線でいっただけの話だ。わたしは3人に分裂して、わたし以外のわたし2人が謀議してあのスナックを放火したというのが真実なんだ。犯人である2人のわたし(たち)が気になるのか現場を確認したいというので10日後に焼け跡にむかったんだが、わたしもついていったその途中でその2人がいつのまにか消えてしまって、わたしが現場でとまどってるところをどこかから出てきた警官たちに身柄を確保されてしまったんだ。まあ、わたしの犯行でもないのに結局有罪をくらって、だがわたしも当然主張をまげなかったので、刑は軽かったよ。病院で休暇療養してくださいっていうくらいのものだった。骨休めをしろといわれて不服を申し立てたら気狂ってると思われかねんし、判決どおり病院にはいった。なんで「ケバブ事件」かって? あのスナックにはあのとき3人の女が働いていたんで、たぶんケバブみたいにくっついて焼け死んだんじゃないかと思ってね。火がこわかっただろうから。客がはいる前だったな。顔をしかめてるのは脂がジュージューいって煙をのぼらせるところを想像しているのかね。悪趣味だね。高い倫理観をもたない人間は醜悪だ。え、ちがう? わたしの火傷はなんでかって? 記憶にないんだよ。ところでまあ、病院ってのが刑務所みたいにわたしを閉じ込めてよろこんでるようなとこで、わたしは……………
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