第18話

文字数 416文字

 ダーク・スーツに黒の細いネクタイ、短く刈り込んだ口髭と高い鼻で、一見フランス映画に出てくる刑事のようなタケルは、
「誘惑するのはオレだけにしときな」と咲良にいうと、彼女の口にウェットなキスをした。
 床に倒れたままのぼくに見せつけたのだろうが、キスの間も咲良のピンポン玉の眼は見開かれたままで、マジックペンで大ざっぱに黒目を塗っただけのような白いピンポン玉が、前方へと大胆に突き出ていた。
 ぼくは唾を飲み込んだ。
「お熱いねえ」遠藤は笑った。
 スカート部分は膝下に長いが、それ以外は露出の多いシャイニーなブルーのワンピースは、咲良のほっそりとして優しい体のラインを際立たせている。白くすべらかな肌。彼女はとても美しい。だからピンポン玉の眼が惜しまれる。
 さっき遠藤はぼくにどこに行きたいかと訊いたのだった。その質問を文字通りにとれるものなら、ぼくは咲良を眼の移植手術に連れていってあげたかった。
 しかしそういうワケにもいかないのだろう。
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