第9話 荘子を読む(1)

文字数 413文字

 日本で荘子の影響を受け、それを如実に体現して生きたのは、かの松尾芭蕉であったといわれる。
 彼は、忍者ではなかったかと疑いをかけられるほど、日本各地にその足跡を残している。そのままに、ただあるがまま、あるがまま以上にも以下にもなく、ただ旅のまにまに句を書き、常に「旅の途中」の人生を続けたのではなかろうか。

 しかし、実際にほんとうのところ、「ただあるがままに生きる」ことほど大変なことはない。
 ただあるがままであるためには、ただあるがままであらねばならない。
 しかも、その「ただあるがままである」という意識さえ、ない、その状態こそが「あるがまま」のまことの姿である。
 いのちの始まりと終わりに、生と死があり、その生死のあいだが人生であり、それすなわち「旅の途中」である。
 荘子は、大きい。巨大だと思う。だが、そう思う私に、「大きいも小さいも、そんなもの、ないんだよ」と言ってくる。
 荘子の魅力について、しばし、書いていきたい。
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