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酒中偶成
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前のエピソードへ「ひとたび愛を知ったなら」
何者にもなれなかった残骸が
文字数 135文字
何者にもなれなかった残骸が
ベッドの上に横たわる
エアコンの駆動音を背景に
かすかな息を繰り返す
存在の熱をむやみに冷却して
意志も責務も投げ捨てて
とどめを刺すほどの勇気はなく
寝返りを打つほどの気力もなく
まなこは干からびて涙もなく
身じろぎすらせず
捨てられもせず
顧みられず
ただ、いる
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今日も酒に脳を溶かして
ああこの大気の水底に沈む我々は
雨垂れを肴に飲む
アテのない旅
消さずにおこう
ひとたび愛を知ったなら
何者にもなれなかった残骸が
遅咲きの花
自分がカラッポだから
明かりを消して寝る前に
明日が来るのが怖くて
いつでもぼくはゆらいでいて
酒に呑み疲れて
酔いどれてひとり歩く
花火
ああ、絶望を洗い流しておくれ
自分を自分で上塗りして
腐れ縁
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