アテのない旅

文字数 515文字

アテのない旅
見果てぬ夢
優等生を捨てきれず
意気地のなさを
ルールのせいにして
窓から見る自由には
お手製の鉄格子がはめられている

昼下がり
柔らかで退屈な光の中
眠気を支える頬杖に聞く
数式と摩擦係数と
関係代名詞はありおりはべり
きっと世界はこうじゃない
こんなふうにはおさまらない
だけれどペンはしっかりつかんで
罫線の間に走らせる
ウソの世界を記述して、記憶する
だって手綱は離せない
怖くて離せない
あたまでっかち
それがわたし

目に見えない大きな手
どうしようもないくらいの大きな手
そいつが
頭をこれでもかと押さえつけている
おまえの義務だと
おまえのためだと
顔のわからない
そいつが
頭をこれでもかと押さえつけている

痛くて苦しい
あらわれることのない激情は
存在を許されない純情は
身動きの取れない
澄ました顔の裏で
今にも張り裂けてしまいそうな
こころのすきまから
とりとめのない空想を
煙のようにふかしている
吸い始めは甘く
後味は苦い
これは、きっと、毒なのだろう
そしていずれはその毒に
依存するようになるのだろう

それでもふかす
自由のまやかしに
それでもふかす
かりそめの落着に
きっといつかは組み伏せて
おおきく焚いて
はげしく燃やして
毒気を飛ばして
だれかに届く
狼煙となる
だれかに届く
言葉となる

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