第六話「秋葉原の哲学」

文字数 3,724文字

こんちはー!!

さあ、やってきました秋葉原!

世界のアキバ、サブカルの聖地!


オタクの情報発信地!

自由と混沌、寛容と偏愛の街!

・・・・・は~、

秋葉原に着いてお話の上では2話、

俺はここで一か月も話が進まなくてもうしびれを切らしたわけですよ!

ただ、ひとつ発見があるんだ。


数話前を思い出してほしいんだけれど、、

俺は家を出る時、靴紐結んだまま数日動けなかった気がするんだ。


しかし次に秋葉原に着いて過去編に行っている間に

近くのブックなにがしに行って古本を立ち読みしていた。

ある程度自由に動けた気がするんだ。 

そして今回。


空いた時間にまた俺は一人でアキバを散策してたんだ。

少しずつこの世界のシステムが改変してるんじゃないかな・・・


なんかアキバっぽい言い方してしまったけれど、

どこかの漫画のようにフリーズした時間の中で、少しだけ指が動かさせるようになってきたんじゃないのかな。


とりあえず来てほしい場所がある。

水島は速足で歩き始めた。 

まず、なんで秋葉原に来たか、だ。


自由な価値観で、人が眉をひそめるものでさえ文化として昇華させたアキバ文化がある。

アダルトゲーム「エロゲ」や

萌え萌え文化、オタ芸に、働いたら負け理論、

ドジっ子賛歌にリア充爆破でお仕置きキボンヌ。

見てくれ。 


目の前の綺麗なビルには「アダルトグッズ専門」の文字が並んでいる。

アダルトグッズの専門ビルが建つなんて、さすがに俺でもやれやれだけど、

これも一つの自由だろう。



さあ、この自由をどうするか、だ。

萌えドリーみんですっ! 
チラシを受け取る水島。 
いかがですか?一緒に萌え萌えしませんか! 
う、うん。君はモブキャラ扱いのようだからまた今度にしておくよ。 
モブキャラなんて、酷いですっ!ぷんぷん。 
アドリブが達者なことで・・・・・・・
速足で去る水島。 

と、まぁ、彼女一人にしたって過酷なビラ配りをしたり、互いに励まし合って

プロフェッショナルになれるように努力している。


アダルトグッズの販売だってビジネスとして軌道に乗せる見込みがあるから

やっているのであり、慈善事業なわけがない。

さぁ、超人のように価値観の彼岸に行くかのような秋葉原だが

自由の限界がここにある。


世の末だ、イロモノ消費文化の成れの果て、と突き放すのも結構だが

エログロナンセンス、という文化が流行った昔の時代もあるように、


時代の潮流の一つであって、心の中で人が求めているものがあるのも

間違いないんだ。

速足で歩いていた水島は急に立ち止まる。目の前にはガチャガチャがたくさん列をなしていた。 
ちょっとこれを見てくれ! 

ガチャガチャの中身は見えなくなっていて

おもて面に「絶望ガチャ」とある。

この絶望ガチャ、どうにも怪しい。

この物語のトリガーとして機能する、と俺は見たよ。、

お金を入れてガチャのハンドルに手をかける水島。 
やっぱりだ、動いた。 
ガチャッ!ガチャッ! 
お、おお!・・・・・・ 
カプセルの中から出てきたのはカプセルいっぱいに入った緑色のスライム 

ス、スライムだ・・・なかなか懐かしい・・・。

普通の、スライムだ・・・・ちょっと量が多いかな・・・

お金を再度入れてハンドルに手をかける 
ガチャッ!ガチャッ! 
カプセルの中から出たのは折りたたんだ小さな紙 
こ、これはっ!!! 
紙を開くと大きな文字で「大凶」と書いてある。 

大凶・・・

・ギャンブルはやめよう

・待ち人はこないから積極的にアタックしよう、

・ゲームをしましょう、ゲームの中ならどれだけ死んでも大丈夫( ̄ー+ ̄)ニヤリ

いや、ニヤリじゃねえよ! 
一回300円の絶望ガチャを引き続ける水島。 
も、もう金がないぞ・・・・これで、これで最後、だ 
財布をひっくり返すと剥がれた皮の屑が落ちる。 
お、おおこれは! 
「当たり」と書いてある紙。それを店内の店主に見せると店の奥から景品を手渡された。 

サングラス型「絶望スカウター」はかけると目の前が真っ暗になるただの

アイマスク。

ぜ、絶望した・・・・・ 
ね、絶望したでしょう 
ね、、、じゃないだろうが! 

ちょっとお客さん・・・絶望が足りないんじゃないかな

これは秋葉原的なネタ消費ってやつですよ

ネタ消費・・・・ 
絶望スカウターなんかはインスタ映えするんじゃあないですか? 
は、はあ・・・ 
サッと店主に背中を向けて水島は店を出た。 

あ~、もういい。物語の展開を期待した俺が間違いだった。

ネタ消費、か。ただただ騙されただけにしか思えないが

腹立てるのが馬鹿らしくなった

何でもかんでも世の中の事象をネタとして捉えて笑い飛ばし、コケにする

これもある意味で秋葉原の哲学だろう

現代社会全体がそうなっているが秋葉原はとりわけそれが強い。

下手をすれば街自体がそうなりかねない。だからこそ地元に住んでいる人や

大人との理解のギャップが生まているんだろう

ファンタジーはただのファンタジーなのか・・・

哲学は神学の婢(はしため)という言葉があるが、


空想は現実のハシタメなのか・・・

僕たちの求めた自由は本当の自由だったのか・・・


世界のアキバよ、答えてくれ。

来た道を戻り、ビラ配りをしていたメイドさんの目の前に立つ水島。 
なあ、俺を夢の国に連れてってくれ! 
は?・・・は、はいっ!!

一名様、ご入国でーす 

・・・・・


薄暗い店内、色のついたライトがぼんやり光っている。


案内されたテーブルの上の作り物の蝋燭が光る。

はいっ、夢の国にようこそっ! 
前につんのめったメイドはグラスの中に入った水をぶちまける。水島のズボンが水に濡れた。 
あ、ああすみません、すみません 
大丈夫ですよ 

いそいそとタオルを持って水島の足を拭き、地べたを這いつくばるメイド。

奥に座るお客が笑いながら見ている。

「ドジっ子大好き」

と奥から声が聞こえる。

今、新しいのを持ってきます! 

と、まあこのように人のドジまで個性として許す余裕は大事だ。

だがビジネスの舞台に上がったときに、プロフェッショナルではない、と拒絶されるだろう

ガタっ! 
立ち上がり水島は店を出る用意をする。 

ご、ご主人様、もう行ってしまうんですか。まだまだこれからちょうど

妖精の舞が始まるんですが・・・

うん、ありがとう。大丈夫だ。急用を思い出した 
え、えええ!寂しいです。辛いです 

一歩前に進んだ水島は顔をメイドさんに近づけた。


たじろぐメイド。

君は俺の物語を進ませてくれるのか?え!?モブキャラさんよ 

メイドは一瞬真顔になり、笑った。


水島は店を出た。

はぁ、最後は酷いことをした・・・。怒ってビンタしてそのまま蹴飛ばしてくれたらよかったのにな

支離滅裂なやべーやつだ、所詮は俺もこの世界じゃ

このままじゃあ、話は進まずじまいだ。 確実にあのままではメイドカフェのレポートで終わる・・・

ドジっ子擁護は有能ではない自分たちのコンプレックスから生まれているとも言える

ネタ消費、もシリアスになれない側面はあるが、真面目であることを至上命題とする息苦しさへの抵抗とも言える。


これ、ニーチェのいうところのルサンチマンという弱者の思想から来ているかもしれないのだ・・・。

ルサンチマンとは不満や劣等意識であり、そこから生まれた思想であるとしてニーチェはキリスト教を攻撃した


ドジっ子こそ幸いである、、、、

と、では言わないが、ドジっ子を愛でる寛容な心、と言えばひとつの到達点であるとも思える。


ネタ消費がただ世界を茶化すだけの苦し紛れの産物なのかそうでないのか?

水島は同人誌が山と積まれた書店に入り。奥にある大人向けのコーナーに足早に歩く。 

野暮な描写は割愛するが、

眉をひそめるようなロリッ子文化も秋葉原ではネタ消費される。

いや、これはネタではなく人間の業の本質なのかもしれない。



いや、それとも。

水島は積まれた同人誌を手に取り、そばにいる男の目の前に突き付けた。 
君は本当にロリが好きなのだろうか? 
・・・・・・

背徳感で高揚した吊り橋効果のようなまやかしで人は酔っぱらっているのかもしれない。


さあ、本当の真理はどこだろうか。

男は微動だにせず、ただゆっくり背中を向けた。 

と、とまあ、さすがアキバ・・・堂に入っていて、こんな言葉は野暮なのだろう。

ビジネスの俎上に載ってすべてが動いているように、結局自由とは言え

なにかの力で自由とは言えない。

ただ惰性で続くシリーズものも、自らを生き永らえさせるための手段なのかもしれないし、それそのものが人の歴史を紡ぐことなのかもしれない。


淘汰されずにそれでも生き残る文化が本物ならば、生き残るしかないだろう。

さあ、

今こそほんとのアキバの力を見せる時だ。


あれかこれか、

今こそ取捨選択の時、秋葉原に燦然と輝く哲学を打ち立てるべきなのだ。

あの~、すみません、お客様のご迷惑になるので店内で大きな声を出すのは・・・ 
あ・・・、はい。 

さあ、今回はここまでです。

水島さん、いつのまにか他の人と関わって、

実はだいぶ話進んでいるように思うのですが、どうでしょう。

ただ水島さんが情緒不安定になってる気が(;´∀`)


ドジっ子OK、でもカワイイ子に限る、ってみんな思ってると思うんですけど・・・これもう哲学じゃなくて

ただの願望(*´ω`)


次回、第7話「本当の自由」でお会いしましょう!

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登場人物紹介

名前「水島義男(みずしまよしお)」

中二病を病み続ける男。

哲学者キルケゴールの存在を知ったときに自分は彼の生まれ変わりだと信じてしまい絶望に身を投じる。


名前:セーレン・キルケゴール(アイコンは作者描いてます)

実在したデンマークの哲学者。

著書「死に至る病」が有名。

実存哲学の巨匠である。愛した女性レギーネ・オルセンの婚約を突如破棄し、絶望の中から哲学を探求し続けた。

名前:結城美緒(ゆうき みお)

水島にとって、すべてをかけて愛したという最愛の人。


キルケゴールの著書

名前:竹林香織(たけばやし かおり)

通称「かおちん」

パチンコ屋の店員で結城美緒の親友


女の子

覚醒レベル「サード」の覚醒者

水島義男の物語を向かわせるべきところへ導こうとする

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