第五話「究極の中二病」

文字数 1,780文字

はぁ~~~~~~っ・・・・・


大きなため息をつく水島。
ああ、そうだよ。水島だよ、俺は。水島

38歳のな!

いったいどういうことだ。

やっとほかの人物出てきた、と思ったら

俺そっちのけで勝手に過去編

だいぶざっくりと大事なシーンが大急ぎで語られる。 

はぁ、とにかく大急ぎで最後まで駆け抜けようとしているらしい。

結城美緒さんとの話は確かに俺も、語ろうとしなかったのが悪い。


うん、だから勝手に過去編になったのだろう。

ゆっくりと歩き始める水島。

それにしても随分恥ずかしい俺をよくも登場させてくれた。

かおちんさんだって、ずいぶんモブキャラ扱いだ。

可哀そうに・・・。


絶望に苛まれて強迫神経症で地獄の日々を送ったことなどズバッっとカットだ。

まあいいんだけど。

美緒さんも本当はもっと魅力的な人なんだけど、そんなものは後から肉付けすればいいと思っている。

事実、そうだ。


骨だけでもいいから物語を結末まで走らせようというのだろう。

そう考えると、悪くも思えない。例えていうのもおこがましいが「アルジャーノンに花束を」、だってどんどん肉付けして最終稿に至ると聞いた。


苦肉の策ってやつだ。


グータラならではの神様の仕業だけれど、それなりに必死だってことだな。

自分の怠惰に打ち勝つ術をうちの神様なりに考えているんだろう。

ちょうどノーベル賞をとった

リチャード・セイラーも行動経済学の話で人間の自制心の弱さを克服するには

怠惰を計画に織り込んでうまく工夫するしかない、としている。


骨だけになろうともキルケゴールをぶちのめそうってのが目的なんだ。


腕がなる、もとい、骨がなるぜ。
拳を拳で握りながらポキッ、ポキッと音を鳴らす。


さあ、この秋葉原でしばらく待たせてもらったぞ。


本屋でずーっといろんな本を立ち読みしてたんだ。



ニーチェとキルケゴールを比べる本があってわかりやすく言うとこうだ。

神を信じたのがキルケゴール

信じなかったのがニーチェ


なおキルケゴールはキリスト者なのでこの場合特にキリスト教の神、ということになる。


そして二人とも実存哲学の巨匠

今、ここにいる実存在としてのあなたのための哲学だ。

そう、この今いる俺という存在これを読むあんたのために今、この話は展開しているはずだ。

少なくてもそうあろうとしているはずだ。

ただの情報の消費なんかであっていいわけではなく、当然二番煎じだったりしてもいけない。

ニーチェなんかは自意識が超人にまでなるくらいだから自分の書物がいかに

唯一無二でありあなたを導くものであるか、を懇々と書いてある。


そうなると当然、実践哲学の様相を呈してくるのだから実践することになる。

この頭の中で考えた超人や実存哲学なんてものを実践させようってんだからなかなか

過激だともいえる

だってそうだろう?

「絶望」も「超人」もどっちも実践したりなんかしたら

これはもう、

中二病じゃないか。

中二病って言葉はたいてい卑下するときに使う言葉だ。

だから中二病のようではあるが、哲学はその先にある精神の鍛練にまで行き着くだろう。


そう、考えると哲学が人生に必要なことなのかもしれない、ってことはわかるんじゃないかな。

もちろん大事なことがあって、その哲学があなたの幸せになるのか?という点が重要になる。


そしてキルケゴールの弱点はここにあるんじゃないか、と俺は思うんだ。

哲学とはものの見方を変えることで世界の認識を変えうることだ、というのはなんとなくわかると思う。

ただものの見方の角度を変えるだけではなく、それを精神の鍛練を含め、深めることで

世界は本当に変質していくだろう。

そう、それを通じて

水島義男38歳は、この歳で、


世界を救う、

ということをまだ信じることができるんだ。

これが究極の中二病、ってやつだ。 

・・・待てよ


なんかずーーっと二つか三つのアイコンだけで

安上がりのアニメみたいにパクパクしゃべっているだけじゃないか?・・・


これ、どう考えてもライトノベルとしてテコ入れされるんじゃないか・・・


待てよ、待ってくれよ、勝手に過去編とか行かないでくれよ!!


そう、走るから!・・・今から走って転ぶから!・・・

はい、今回はここまでです。

いよいよ話が展開しそうですけれど、


秋葉原でまだ独り言しか言ってませんね(;'∀')


私は過去編に期待です(*´ω`)


なぜなら私も若返るから(*'▽')


次回、第六話「秋葉原の哲学」でお会いしましょう!

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登場人物紹介

名前「水島義男(みずしまよしお)」

中二病を病み続ける男。

哲学者キルケゴールの存在を知ったときに自分は彼の生まれ変わりだと信じてしまい絶望に身を投じる。


名前:セーレン・キルケゴール(アイコンは作者描いてます)

実在したデンマークの哲学者。

著書「死に至る病」が有名。

実存哲学の巨匠である。愛した女性レギーネ・オルセンの婚約を突如破棄し、絶望の中から哲学を探求し続けた。

名前:結城美緒(ゆうき みお)

水島にとって、すべてをかけて愛したという最愛の人。


キルケゴールの著書

名前:竹林香織(たけばやし かおり)

通称「かおちん」

パチンコ屋の店員で結城美緒の親友


女の子

覚醒レベル「サード」の覚醒者

水島義男の物語を向かわせるべきところへ導こうとする

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