第四話「人を愛するということ、絶望の始まり」

文字数 1,825文字

私は、結城美緒。21歳の大学生。学費を稼ぐために時給の高いパチンコ屋でアルバイトの日々。 
「美緒はいいよね、可愛いんだから。なにしても許される」
「そんなことないよ。かおちんのこと大好きだし!」
「なにそれフォローのつもり?」
タバコをふかしながら。私を見るかおちんの眼はいつも優しい。でもどこか遠くを見ていることが多いのが気になる。
大学行きながら、バイトの毎日。本を読むのが大好き。だから家にテレビはないの。 
「美緒はさ、なんでこんなとこいんのさ。こんな空気の悪いパチンコ屋。セクハラみたいなことたくさんあるでしょ」 

「みんな負けて辛気臭い顔してるでしょ!

だからさ、笑顔を見させてあげたいの!」

「は~、あんたどんだけ幸せものなのよ。なんか私、汚れてるみたい」 
「んなことないって!かおちんの汚れてるとこも大好きだし!」
「は~、あんた確信犯ね!」

本当は違う。

親父がギャンブルで破滅したから。

父に暴力を振るわれ続ける毎日を送った母は精神病棟にいる。

でもそんなこと言ったってしかたない。

だから私は前向きに生きるの。

「おはよー!」

この人は水島義男22歳

最近入ってきた新人。毎日テレビの話してるから、テレビの情報はこの人からたくさんもらってる。

とても不思議な人で、いつも満面の笑顔で楽しそうにしているのだけどどこか影を感じる。だって休憩中にドストエフスキーを読んでるのだもの。


変なの。

カロリーメイトを食べながらおじんみたいに新聞読んでる。

なのに子供みたいにはしゃいだ笑顔。

「あ、結城さん、もいるのか・・・」

でも私にだけは何故か冷たい。

顔を背けるし、私が近くにいると静かになる。わざと近くにいる別の誰かに話しかけて、私を輪に入れないつもりなの。

でも。 
「水島さん」 
「わっ・・・・」
ガタン!!

顔が真っ赤になっていた。早足で去って行った。

なんだか可愛い。私のことを本当に嫌いか。子供みたいに好きの裏返しなのか?わからない。

わかりやすすぎて。漫画みたい。

わざと?気づいてほしくて?


好きって顔に書いてある。そんなそぶりは見せないけれど。

私と話そうともしない。避けるように。


いつまでもそんな態度じゃ、私も淋しくなる。つまらなくなる。不器用にもほどがある。

ある日突然ロッカーにラブレターがあったのです。

分厚いラブレター・・・すぐに水島さんだ、って思った。

10枚に渡る長い長いラブレター。

絶望について書いてある。キルケゴールって哲学者の名前と難しい用語、

正直美緒にはよくわからなかった。私は本は山のように読むけど哲学書なんて敬遠していたし、はっきり言ってわからない。普通の女の子なら気持ち悪く思うかもしれない。

でもそれが、不憫でならなくて、愛らしい。


結局のところ私を好きで、愛していると書いてある。

いつしか、私は水島さんを好きになってた

でもどれだけこちらがアプローチしても振り向かない。私が同じテーブルに着いたら水島さんが立ち上がる。連絡先をこれ見よがしに水島さんの前で他の人と交換してるのに、便乗してこない。私が見つめても、目をそらす。

突然恋の終わりが来た

寂しかった私は、目の前で勇気を出して告白する男性を断れなかった。

水島さんを心の中で恨んだ。

嫌いなところを探した。


嫌いを重ねるたびに涙が出てきた。

なんどパスを出しても受け取らないんだもん。

キルケゴールって何?

愛する人の婚約を突如破棄していい気分ね。捨てられたその人のこと考えたことある?



水島さんは世界を救うんだって。子供っぽい。キルケゴール?

私のこと馬鹿にしているのかなあなたの中二病に付き合わされたくないわ。

また泣いてる。

これは、いったいどういう状態?

私、失恋したの?・・・。

それからも何度も未練がましいメールが来た。(連絡先くらい交換しました)

私はいいかっこしいのその辺にいる女なんだよ。きっと水島さんは私に彼氏がいることも知らないんだろう。あなたの存在の認識からするとそんなことは意味がないのかもしれない。

水島さん。

私は特別なんかじゃない。

私はつまらない女なんだよ。・・・・。 

はい、今回はこれまで。


ゆっくり水島さんのこと話したかったのに、駆け足すぎるんじゃないかしら。これじゃあ私、ほんとにつまらない女みたいじゃない!

(; ・`ω・´)


と、登場人物が文句を言っても仕方ありません。

大々的に出番をもらえて満足ですっ!(;´∀`)


水島さん、絶対怒ってるだろうな~

次回、第五話「究極の中二病」でお会いしましょう!

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登場人物紹介

名前「水島義男(みずしまよしお)」

中二病を病み続ける男。

哲学者キルケゴールの存在を知ったときに自分は彼の生まれ変わりだと信じてしまい絶望に身を投じる。


名前:セーレン・キルケゴール(アイコンは作者描いてます)

実在したデンマークの哲学者。

著書「死に至る病」が有名。

実存哲学の巨匠である。愛した女性レギーネ・オルセンの婚約を突如破棄し、絶望の中から哲学を探求し続けた。

名前:結城美緒(ゆうき みお)

水島にとって、すべてをかけて愛したという最愛の人。


キルケゴールの著書

名前:竹林香織(たけばやし かおり)

通称「かおちん」

パチンコ屋の店員で結城美緒の親友


女の子

覚醒レベル「サード」の覚醒者

水島義男の物語を向かわせるべきところへ導こうとする

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