3体のふわニャン！
文字数 2,858文字
…………
スティックを動かし、三本爪のアームの位置を調整！
委員長、真剣！
（んー……話しかけたら邪魔しちゃうよね……）
千恵、一人で散策へ！
…………
時間切れ寸前まで繊細な微調整！
ボタンを押す！
降下したアームがふわニャンを捕らえる！
三本爪が食い込み、丸と曲線と直線のパーツで構成されている可愛らしいふわニャンの顔を歪めた！
…………
アームに持ち上げられながら、ふわニャンが景品排出口へと近づく！
爪から滑り落ちるふわニャン！
落下の衝撃で跳ねる！
取る前の場所に戻る！
…………なるほど……
よし、私もリベンジしよう……
左手は失敗……では、耳を支点に掴む……？いや、それではアームの微妙なズレも考慮する必要が……
イツキ、100円投入！
降下しきった際の爪の滑りも予測して……角度が大体……
うーん……そこっ！
ふわニャン捕獲！
アーム上昇！
滑り落ちるふわニャン！
その場でバウンド！
駄目かぁ……
……移動時に生じるアームの揺れを利用し……いえ、最終的な力の収束の仕方を考えるとあまり期待は出来ませんね……
イツキ、100円投入！
ここかなぁ……？もう少しこっちかなぁ……
イツキ、微調整！
……ここか……！
アーム降下！
左寄りで掴む！
滑る爪！
ふわニャン、動じず！
うーん……撫でただけかぁ……
アームの力を考えて……やや後ろを狙う……いえ、それでは滑りますね……とすれば頭部寄りを狙うべきでしょうか……しかし……
イツキ、100円投入！
ここで1回、がっしりホールド作戦……かなぁ……？
ふわニャンの胴体中心に位置調整！
アーム降下！
持ち上がるふわニャン！
景品排出口へと近づく！
やったか！？
これは……
滑り落ちるふわニャン！
景品排出口に衝突！
転がりながら初期地点より僅かに遠くへ！
…………
…………
こうなったら500円くらい注ぎ込んで……！！
待ってください立花さんもう少し考えましょう流石にそれは無計画が過ぎます！
委員長、全力でイツキを制止！
ええい！止めるな委員長！ここまで何枚もの100円が奴に食われた！ここで引き下がれと申すか！！
立花さんお小遣いの方に余裕はあるんですかもしかしたら500円無駄に使う事になるかもしれませんよ……！！
十分承知の上よ！それもまた思い出となろう！私は奴に負けたままでは悔しいのだ！もう奴のあの可愛らしい顔すら私への侮辱のように思えてきているのだぁ！
別の思い出の作り方もあります私も藤咲さんも数分で終わる苦い思い出は要らないかと……！！
【イツキの精神力が5減った！】
苦い？！聞き捨てならんぞ！私が奴を手に入れられず終わると申すか！！
おそらく無理です！
【イツキの精神力が50減った！】
え……ほんとに……？
いやいや……私の力を舐めるでない……！！
分かりましたあと1回だけにしておきましょうそれで駄目ならそこで終わりにするべきです！後できっと後悔しますから！
【イツキの精神力が100減った！】
うぅ……それを言われたらもうどうしようもないから困るなぁ……
はぁ……はぁ……分かってもらえて何よりです……
ん？ところでちーちゃんは何処へ？
そういえば……
イツキ、スマホを確認！
あ、他の所見てくるねーってメール来てた
そうでしたか
じゃあ……あと1回で頑張るよ……
イツキ、100円投入！
位置を調整！
胴体中心に合わせる！
ここだっ！
ボタンをプッシュ！
アーム降下！
ふわニャンを捕らえる！
そのまま景品排出口へ！
…………
…………
ふわニャンが爪から滑り落ちる！
落下地点、排出口の真横！
…………
…………
これはやるしかない！！
ええ、あとは持ち上げるだけです！
イツキ、100円投入！
き、緊張するなぁ……
落ち着いてください……先程と同じようにやればおそらく……
位置調整！
アームを胴体の中心に合わせる！
…………ここで……お願いします！
イツキ、ボタンをプッシュ！
…………
アーム降下！
ふわニャンを掴む！
そのまま上昇！
…………
そのまま……そのまま……あとちょっとだよ……！
ふわニャン獲得まであと15センチ！
12センチ！
6センチ！
66センチ！
排出口寸前、ふわニャン落下！
縁に衝突！
転がるふわニャン！
停止地点、アームの届かない奥！
…………
…………
…………
イツキ、500円スタンバイ！
手が震えている！
もう、止めておきましょう……
だよね……
＊ ＊ ＊
もうこんな時間ですか、早いですね……
うーん……何か獲れたら良かったんだけど……
千恵、帰還！
見て、ちっちゃなふわニャン
な、なんですとぉ……？！
小さいサイズの物もあったんですか……
私が早く言えば良かったね……
いやいや、夢が見れただけでいいんだよ……
はぁ……
そうですね、私も楽しめました
…………
はい
千恵、委員長に持っているふわニャンを渡す！
藤咲さん……これは……
千恵、袋からふわニャンを取り出す！
はい
ちーちゃん……良いの……？
3つあるから……ね？
ありがとうございます、藤咲さん……
ありがとう……ちーちゃん……
それにしてもちーちゃん……私は君がまたゲームに触れるようになってくれて嬉しいよ……！
ううん、貰ったの
貰った……？
そのふわニャンを取ろうとしたらね、あたしが代わりに取ってやる、一緒にいた二人にも渡してやりなって……
な……なんだって……？！
ほら、あの子だよ。蘭ちゃんって言うんだ
千恵の目線の先！
千恵に笑顔で手を振る少女！
千恵ー！また会おうなー！
うん、またねー
少女に手を振る千恵！
おぉ……随分と親しげな感じだねぇ……
お知り合い……ですか……？
さっき初めて会ったよ、ちょっとお話もしたかな
この辺りにお住まいなんですかね？
最近、この近くに引っ越してきたんだって
へ、へぇ……そーなんだ……
そういえば、また会おうって言ってたような気がするけどぉ……
うん、今度家に呼んでくれるらしいんだ
あー……そうなんだ……うん、良いことだねぇ、うん……そっかそっか……
あと、連絡先も交換したんだよ。良かったら2人の事も紹介してほしいって
…………うんうん、ちーちゃんにも友達が増えるのは良い事だよ……
うん……うん……喜ばしい事だ……そうだろう……樹……
立花……さん？立花さん？
…………たとえ、小学校からの親友だろうとも、人には相性というものがあって……それは自分個人、相手の両者にとっても不動のものではなく……年月を……重ねる毎に……変わる可能性もゼロではなく……
藤咲さん、立花さんが何か独り言を話し始めましたよ？！
えぇっ？イツキちゃん？もしもーし……
相手の考えの変化を……受け入れられないというのは……私の精神年齢の……幼さから生じる……不安や居場所の喪失……恐怖感によって起こるもので…………
立花さん……？
…………
イツキ、涙！
た、立花さん……！？どうしたんですか？！あ、あの……藤咲さん、この場合どうしたら……？！
えっと……んーー……えっーと……
イツキちゃんもしかして、別のが良かった……？私のふわニャンと変えよっか？
…………
こ……こんな時にはどうすれば……あぁ……保育に関しても勉強しておくべきでした……！！
イツキちゃん……泣かないでぇ……
…………は、はは……はははは……
