第8話 「機能」
文字数 3,519文字
――追伸、口開けて寝てたからメモだけ残して帰るね。
作戦、絶対うまくいく! 絶対。
(わざとミスする必要ないのかも……。チャンスかもしれない!)
「カチッ」
何を寝ぼけた事を言っている?
日下部君、私は君の上司であり、君は私の部下だ。
部下は上司の与えた命令を行う義務がある。
これが会社組織というモノだ。
今回、君がどう動く次第で私の出世にも響くんだ。
勿論、対価として君の給料・賞与の査定にも色を付けよう。金は裏切らない。
悪い話ではないだろう?
《肩たたき》
「Trrrrrrrrrr」
《通話》
《上司に言われたことを話す》
…………?
(――何か襟に小さな硬いものがある)
また漫画知識が役に立ったぞ。
じゃあ、一旦その指定されたホテルに行き、それをゴミ箱とかに置き去りにするんだ。
理由はわかるね? 電話の変更も含めて、2時間もあれば良いかな?
2時間後に四苦八苦公園に来てくれ。
【四苦八苦公園】
《電話番号変更を終えた らら》
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【策也の部屋】
…………。
こいつか、この野郎……。
“臨兵闘者皆陣裂在前.exe”の機能で、特定割り出し不可能な差出人不明にする。
そしてこの完璧なテンプレートをメール本文に差し込みして偽ファイルを添付。
このメールは、クリックしようとするとカーソルが5秒間逃げる機能を持たせ、
その後、強制的に開封された上、1分後、自動で消去される。
これで奴は苛立ちと同時に動揺し、何かしらのアクションを起こす。
ただそのアクションは無意味であると共に、自分の首を絞める事になるだろう。
苦労してインストールした本領発揮だ。
今度は差出人“社長”の名義でメールを送りつける。
このソフトは優秀で一切の痕跡も残らないし、仮に社長がアクセスしていても可能だ。
今度は違うテンプレートをメール本文に差し込みしてファイルを添付。
更に拡張子とアイコン・CCを偽装した上、BCCの特性とマスメディアを脅しとしても利用する。
《拡張子》
※ファイルの種類を識別する為に名前の末尾につけられる文字列。
例: .mp3や .jpg .pdf等。
《CC・BCC》
※CC:他の宛先に対して表示される受信者。
※BCC:他の宛先に対して表示されない受信者。
雨の中、ららの家まで並んで歩く2人。
あぁ、オッドアイっていうらしい。
生まれつきだ。だからといって視覚には何も影響もないんだ。
まぁ日本人じゃかなり珍しいとな。つまり俺はレア物だ。
ちなみに言っておくけどアニメやゲームみたいな特殊能力とかはねえよ。
それと?
わかってねぇなー、ららさん。
現代人は著しい技術の発展の陰で字を書く事からどんどん遠ざかっているんだ。
何かを覚えようとする時、何か閃いた時、とにかく書くんだ。
頭で考えてペンに筆圧を加え、手で紙に文字を書くことによって脳は刺激され活性化するんだ。
って、得意の漫画知識だよ。
例え見た目がダセえとか言われようが関係ねえな。