3話 「怜悧」 《終》
文字数 2,110文字
《半年後》
【ららの部屋】
……。
開けっ放しの玄関から声がした。
そこには元気な策也の姿があった。
策也は普段から中にスペクトラと呼ばれる繊維のTシャツを着ていた為、致命傷を免れていた。
昭和65年 5月16日 新婚旅行でアイスランドへ
"Lara" ~アイスランド語で光や明るいという意味
【父親が所属するヤクザ事務所】
……。
…………。
しかし父親は無反応で時間だけが過ぎていく。
――策也、何を言っている。
その金はお前に渡った時点で、お前の金だ。
お前が何に使おうが、俺の知ったことではない。
土下座までしやがって。ガキが……。守りたいものでもできたのか?
起業なんてそう甘くないぞ、9割の人間が失敗で終わるんだ。
組に入る気がねえならとっと帰れ。
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《4年後》
【会社兼自宅】
(Trrrrrrrrrr)
はい、京リサーチでございます。
……あぁ先日はどうもありがとうございました。
……えぇ。……はい。かしこまりました。
では明日10時に伺います。
ららは策也が起業したリサーチ会社の秘書として策也のサポートする傍ら、
3歳の息子を保育園に預け兼業主婦として身をおいている。
その後、策也が名付けた息子「京 怜悧」は母の愛情を受けすくすくと育ち、
その名の本来の意味「頭の働きが優れていて、賢い」に恥じない成長ぶりを発揮し父親から得た漫画知識や偉人の名言を武器に、周囲を魅了していくのであった。