第18話
文字数 3,540文字
戦友【トウナのその後】
未来のトウナは、数学教師の傍ら、プロボーリング選手として活躍していた。
過去に戻ってからは、日払いで片付け屋をして、途中、臭いがする遺体が出たりした。
トウナのアパートの近所のお爺さんが言った。
「腰が‥。」
「大丈夫?お爺さん。」
「おう‥。」
「大椋(おおぐら)のお爺さん、豆腐屋辞めるってね。」
トウナの親戚のうどん屋の女将が言った。
「そうなんですか?」
「うん。トウちゃん、継いであげたら?ハハ‥。」
女将は笑った。
「お前、トウちゃんが、豆腐屋なんかするわけないだろう。なぁ?」
しかし、トウナは、豆腐屋を継いだ。
「豆腐~!」
トウナの豆腐は人気だった。
というか、トウナが人気だった。
お父さんは子供を見せに来たし、お母さんは少しは化粧をして、出てきた。
みんな良い人達だったが、トウナは、野丸さんという若いお母さんと知り合いになる。
野丸さんは、かなり綺麗だが、子供が3人いた。
トウナが大勢の客をさばく姿を、野丸さんは遠くから見守り、客が少なくなると寄ってきた。
それは、毎回だ。
体のためにも、野丸さんに良い豆腐を食べてほしかったが、野丸さんは遅く出てくるので、悪い豆腐しか残っていない。
「野丸さん!」
ある日、トウナは、野丸さんを呼んだ。
大衆は、野丸さんを見た。
「ごめんなさ~い、いつも野丸さん、良い豆腐買えてないから。」
「あ、そうなの?買いな。うまいぞぉ。」
野丸さんは、白くて細い手で、豆腐を買った。
「それだけぇ?いいのぉ?」
「はい。」
野丸さんは、一丁だけだ。
「いいんですかぁ!!」
大衆達は言った。
「あ、はい。」
「まぁ~、もっと買えばいいのに。体にいいのよ~。」
次に来た時も、野丸さんは遠くから見ていた。
トウナは、なぜか少し心の状態が悪く、野丸さんを呼ばなかった。
客が引き、トウナと野丸さんは目が合い、野丸さんは来たが、若い女の子達がトウナに寄ってきたので、野丸さんは逃げるように帰ってしまった。
夜、トウナは、車を引きながらつぶやいた。
『またかよ。くだらない。』
「お~、トウちゃん。どしたぁ?」
大工の京奈(けいな)さんが話しかけた。
「こんばんは。今のは、1人ごとです。」
「1人ごと?ふ~ん。」
「じゃ。」
「トウちゃん。」
「え?」
「これは?」
京奈さんは、小指を立てた。
「いないです。」
「そっか。早く作れよ。終わっちまうぞ。」
「終わるって、何がですか?」
「男の期限だよ。」
「そんなものが?」
「おう。」
トウナは振り向き、帰ろうと走った。
「若い女には気をつけろよぉ~!!米軍と遊んでいるらしいぞ!!」
『なわけねぇだろ。』
トウナは走った。
次の日の豆腐売りでも、その次も、野丸さんは同じようだった。
1人の女の人が、豆腐にケチをつけた。
トウナは言った。
「う~ん。そうですよねぇ。」
「そう!大体ね、この豆腐の衛生状態を、大学で、¥調べてもらった方がいいのよ!」
「そう‥かなぁ~。」
「何!お客様に対してその態度は!」
女の人は、引き下がらない。
「トウちゃ~ん、まだ、あれある?」
奥さん連れの常連客、柴下さんが話しかけた。
「ありますよぉ。」
「おお~。良かった。」
「あら、これもまだあるのねぇ。」
「はい。」
「これで美味しい鳥鍋ができるわ。」
「鳥ですかぁ、いいですねぇ!俺、最近、カエルしか食べてないんで。」
「や~だ~。若いんだから、お肉をしっかり食べて、精をつけなきゃ!」
気づくと、女の人は、いなくなっていた。
夕方。
客が引くと、トウナの知り合いの若い女の子、テロンが来た。
「ああ、テロちゃん。」
「うん。元気ぃ?」
「うん、元気。」
「最近、会えないから、つまらなかった。」
テロンは、トウナの胸に耳を当てた。
トウナも少し抱いた。
「え?ほぼ毎日、来てたよ。」
「私の仕事が忙しくて。」
「仕事?仕事って何やってるの?」
「お店。夜のね。」
「夜?じゃあ、昼間に買いにくればいいじゃん。」
「ダメ。昼は、寝てるから。」
はぁぁ。テロンは、トウナに抱きついた。
トウナは言った。
「あんまり、いろんな人と、しない方がいいよ。」
「してないよぉ。」
テロンは、トウナの胸で少し泣いた。
「トウちゃんが、一番だもん。」
「いや、どうかな。」
トウナは、野丸さんと目があった。
今日の野丸さんは、メガネをかけている。
トウナは、テロンを離した。
「はい、豆腐。」
「あ、じゃあ買う。」
「大丈夫。持ってきな。」
「いいの?」
「うん。たまにはさ、親に会った方がいいよ。」
「会ってるよ。だって、一緒に住んでるもん。」
「そうなの?」
「うん。」
「じゃ、安心だ。」
「何それ。」
「もう帰りな。」
「うん‥また会える?」
「会えるっていうかぁ、買いに来てくれる?」
「うん、わかったぁ‥。」
テロンは小さく言った。トウナのことを、つまらない男と思ったようだ。
野丸さんが来た。
トウナは見ないようにしていたが、影で分かった。
「お豆腐、まだありますか?」
「あ、野丸さん。少し、ですけど。」
「じゃ、これ。」
「あの、お金、今日はいいです。」
「え‥。」
「今日はホント、大丈夫ですから。今日だけかもしれませんけど。」
トウナが言うと、野丸さんは笑った。
2人は一瞬、見つめ合った。
「おーい。トマル。」
京奈さんだ。
「ちょっと止めてくださいよ。野丸さんは、結婚しているんですから。」
「あっ、そうなんですか?」
「そうです。お子さんは、3人。」
「3人も?すごいですねぇ。」
「いえ、うるさいんですよ。」
「いやいや、子供は元気な方がいいですよ。」
京奈は言った。
野丸さんが帰り、トウナが帰るために車の様子を見ていると、温かい総菜をの紙袋を持った、京奈さんが来て言った。
「お前、ヤバくないか?」
「何がですか?」
「公衆の面前で堂々と、二股を披露しちゃって。」
「別に二股じゃないですよ。」
「だってさ、最初の人とは、抱き合ってたじゃん。」
「別にそういう関係じゃないですから。」
「へええ。そう?」
「はい。」
「抱き合うって普通じゃないけどな?!寂しいのか?」
「そんなんじゃないですから。」
「ふん、これいるか?」
「えっ。」
京奈さんが、カレーパンをくれた。
「あっ。じゃあ、これ。」
「いや、俺、豆腐苦手なんだわ。」
「え‥そうだったんですか?」
「うん。」
夕焼けをバックに、京奈さんがカッコいい感じで言った。
「お前さ、豆腐屋はいつか辞めな。そうしないと、いつかお前は人妻に食われるぞ。」
「あ~‥はい、わかりました。」
「な?じゃ、俺は行くで。またな!浮気君。」
京奈さんは、黒自転車に乗り、行ってしまった。
トウナは、夜、テロンのことを考え、想いにふけった。
付き合うことになったら、どんな感じだろうと想像すると、ふわふわとした感じになる。
京奈さんは、夜、自転車で徘徊中、ふらふらと歩く、野丸さんを見つけた。
キキッ
「野丸さん?」
「あ‥。」
「どうしたんですか?」
「あの‥。」
「えっ、大丈夫ですか?危ないですから。まだ戦後だもんでね。」
「ああ‥。」
野丸さんは泣いてしまった。
「大丈夫かい?何かあるなら、言ってごらん。」
「旦那が‥浮気してて。」
「え‥。」
「相手の人が、家に来るから。」
「そうだったのか。」
「じゃあ、実家はどうなんですか?」
「実家は‥兄夫婦が住んでいて。」
「そうか。でもな、今日は遅いから、家に帰れ。旦那の所にな。」
京奈さんは、野丸さんを自転車の荷台に乗せ、2人乗りして帰った。
1年後には、野丸さんは、新しい人を見つけた。
「どうよ。最近。」
トウナはカフェで、大ちゃんと向き合った。
「別に普通ですよ。」
「これはできた?」
トウナは小指を立てた。
「う~ん。微妙です。」
大ちゃんは下を向きつつ、首をかしげた。
「え、そうなの?じゃあ、できたんだ。」
「う~ん、彼女というには、まだ早いですけどね。トウナさんは?」
「俺は、全然ダメ。」
「意外ですね。僕、てっきり、戦争が終われば、トウナさんが一番早く結婚すると思ってたんですよね。」
「無理でしょ。俺、女と手もつなげないから。」
「そうなんですか?自分は‥手とかは普通ですね。」
「そうなんだ。」
「抱き合うとかはちょっと‥。」
コンコン
京奈さんが、窓の外から手を振っている。
「こんにちは!」
大ちゃんが言った。
「知り合い?」
「はい。僕が住んでいるアパートの床を、直していただいたんですよ。」
「あ~、さむさむ。」
京奈は、カフェに入ってきた。
店員さんが来た。
「ケーキ一つ。あ、三つ。コーヒーは‥、コーヒーも三つ」
「そんないいですよぉ。」
トウナが言った。
「いいっていいって。俺も、最近、金が入ったからさ。」
「ええ?お金が?」
京奈さんは、小声で言った。
「うん。実は、皇居の修理をしたんだ。」
「そうだったんですか。」
「それなら、まぁ、普通の仕事の10倍くらいは入りますよね。」
「まぁな。」
窓の外は、平和な夕焼け空だった。
未来のトウナは、数学教師の傍ら、プロボーリング選手として活躍していた。
過去に戻ってからは、日払いで片付け屋をして、途中、臭いがする遺体が出たりした。
トウナのアパートの近所のお爺さんが言った。
「腰が‥。」
「大丈夫?お爺さん。」
「おう‥。」
「大椋(おおぐら)のお爺さん、豆腐屋辞めるってね。」
トウナの親戚のうどん屋の女将が言った。
「そうなんですか?」
「うん。トウちゃん、継いであげたら?ハハ‥。」
女将は笑った。
「お前、トウちゃんが、豆腐屋なんかするわけないだろう。なぁ?」
しかし、トウナは、豆腐屋を継いだ。
「豆腐~!」
トウナの豆腐は人気だった。
というか、トウナが人気だった。
お父さんは子供を見せに来たし、お母さんは少しは化粧をして、出てきた。
みんな良い人達だったが、トウナは、野丸さんという若いお母さんと知り合いになる。
野丸さんは、かなり綺麗だが、子供が3人いた。
トウナが大勢の客をさばく姿を、野丸さんは遠くから見守り、客が少なくなると寄ってきた。
それは、毎回だ。
体のためにも、野丸さんに良い豆腐を食べてほしかったが、野丸さんは遅く出てくるので、悪い豆腐しか残っていない。
「野丸さん!」
ある日、トウナは、野丸さんを呼んだ。
大衆は、野丸さんを見た。
「ごめんなさ~い、いつも野丸さん、良い豆腐買えてないから。」
「あ、そうなの?買いな。うまいぞぉ。」
野丸さんは、白くて細い手で、豆腐を買った。
「それだけぇ?いいのぉ?」
「はい。」
野丸さんは、一丁だけだ。
「いいんですかぁ!!」
大衆達は言った。
「あ、はい。」
「まぁ~、もっと買えばいいのに。体にいいのよ~。」
次に来た時も、野丸さんは遠くから見ていた。
トウナは、なぜか少し心の状態が悪く、野丸さんを呼ばなかった。
客が引き、トウナと野丸さんは目が合い、野丸さんは来たが、若い女の子達がトウナに寄ってきたので、野丸さんは逃げるように帰ってしまった。
夜、トウナは、車を引きながらつぶやいた。
『またかよ。くだらない。』
「お~、トウちゃん。どしたぁ?」
大工の京奈(けいな)さんが話しかけた。
「こんばんは。今のは、1人ごとです。」
「1人ごと?ふ~ん。」
「じゃ。」
「トウちゃん。」
「え?」
「これは?」
京奈さんは、小指を立てた。
「いないです。」
「そっか。早く作れよ。終わっちまうぞ。」
「終わるって、何がですか?」
「男の期限だよ。」
「そんなものが?」
「おう。」
トウナは振り向き、帰ろうと走った。
「若い女には気をつけろよぉ~!!米軍と遊んでいるらしいぞ!!」
『なわけねぇだろ。』
トウナは走った。
次の日の豆腐売りでも、その次も、野丸さんは同じようだった。
1人の女の人が、豆腐にケチをつけた。
トウナは言った。
「う~ん。そうですよねぇ。」
「そう!大体ね、この豆腐の衛生状態を、大学で、¥調べてもらった方がいいのよ!」
「そう‥かなぁ~。」
「何!お客様に対してその態度は!」
女の人は、引き下がらない。
「トウちゃ~ん、まだ、あれある?」
奥さん連れの常連客、柴下さんが話しかけた。
「ありますよぉ。」
「おお~。良かった。」
「あら、これもまだあるのねぇ。」
「はい。」
「これで美味しい鳥鍋ができるわ。」
「鳥ですかぁ、いいですねぇ!俺、最近、カエルしか食べてないんで。」
「や~だ~。若いんだから、お肉をしっかり食べて、精をつけなきゃ!」
気づくと、女の人は、いなくなっていた。
夕方。
客が引くと、トウナの知り合いの若い女の子、テロンが来た。
「ああ、テロちゃん。」
「うん。元気ぃ?」
「うん、元気。」
「最近、会えないから、つまらなかった。」
テロンは、トウナの胸に耳を当てた。
トウナも少し抱いた。
「え?ほぼ毎日、来てたよ。」
「私の仕事が忙しくて。」
「仕事?仕事って何やってるの?」
「お店。夜のね。」
「夜?じゃあ、昼間に買いにくればいいじゃん。」
「ダメ。昼は、寝てるから。」
はぁぁ。テロンは、トウナに抱きついた。
トウナは言った。
「あんまり、いろんな人と、しない方がいいよ。」
「してないよぉ。」
テロンは、トウナの胸で少し泣いた。
「トウちゃんが、一番だもん。」
「いや、どうかな。」
トウナは、野丸さんと目があった。
今日の野丸さんは、メガネをかけている。
トウナは、テロンを離した。
「はい、豆腐。」
「あ、じゃあ買う。」
「大丈夫。持ってきな。」
「いいの?」
「うん。たまにはさ、親に会った方がいいよ。」
「会ってるよ。だって、一緒に住んでるもん。」
「そうなの?」
「うん。」
「じゃ、安心だ。」
「何それ。」
「もう帰りな。」
「うん‥また会える?」
「会えるっていうかぁ、買いに来てくれる?」
「うん、わかったぁ‥。」
テロンは小さく言った。トウナのことを、つまらない男と思ったようだ。
野丸さんが来た。
トウナは見ないようにしていたが、影で分かった。
「お豆腐、まだありますか?」
「あ、野丸さん。少し、ですけど。」
「じゃ、これ。」
「あの、お金、今日はいいです。」
「え‥。」
「今日はホント、大丈夫ですから。今日だけかもしれませんけど。」
トウナが言うと、野丸さんは笑った。
2人は一瞬、見つめ合った。
「おーい。トマル。」
京奈さんだ。
「ちょっと止めてくださいよ。野丸さんは、結婚しているんですから。」
「あっ、そうなんですか?」
「そうです。お子さんは、3人。」
「3人も?すごいですねぇ。」
「いえ、うるさいんですよ。」
「いやいや、子供は元気な方がいいですよ。」
京奈は言った。
野丸さんが帰り、トウナが帰るために車の様子を見ていると、温かい総菜をの紙袋を持った、京奈さんが来て言った。
「お前、ヤバくないか?」
「何がですか?」
「公衆の面前で堂々と、二股を披露しちゃって。」
「別に二股じゃないですよ。」
「だってさ、最初の人とは、抱き合ってたじゃん。」
「別にそういう関係じゃないですから。」
「へええ。そう?」
「はい。」
「抱き合うって普通じゃないけどな?!寂しいのか?」
「そんなんじゃないですから。」
「ふん、これいるか?」
「えっ。」
京奈さんが、カレーパンをくれた。
「あっ。じゃあ、これ。」
「いや、俺、豆腐苦手なんだわ。」
「え‥そうだったんですか?」
「うん。」
夕焼けをバックに、京奈さんがカッコいい感じで言った。
「お前さ、豆腐屋はいつか辞めな。そうしないと、いつかお前は人妻に食われるぞ。」
「あ~‥はい、わかりました。」
「な?じゃ、俺は行くで。またな!浮気君。」
京奈さんは、黒自転車に乗り、行ってしまった。
トウナは、夜、テロンのことを考え、想いにふけった。
付き合うことになったら、どんな感じだろうと想像すると、ふわふわとした感じになる。
京奈さんは、夜、自転車で徘徊中、ふらふらと歩く、野丸さんを見つけた。
キキッ
「野丸さん?」
「あ‥。」
「どうしたんですか?」
「あの‥。」
「えっ、大丈夫ですか?危ないですから。まだ戦後だもんでね。」
「ああ‥。」
野丸さんは泣いてしまった。
「大丈夫かい?何かあるなら、言ってごらん。」
「旦那が‥浮気してて。」
「え‥。」
「相手の人が、家に来るから。」
「そうだったのか。」
「じゃあ、実家はどうなんですか?」
「実家は‥兄夫婦が住んでいて。」
「そうか。でもな、今日は遅いから、家に帰れ。旦那の所にな。」
京奈さんは、野丸さんを自転車の荷台に乗せ、2人乗りして帰った。
1年後には、野丸さんは、新しい人を見つけた。
「どうよ。最近。」
トウナはカフェで、大ちゃんと向き合った。
「別に普通ですよ。」
「これはできた?」
トウナは小指を立てた。
「う~ん。微妙です。」
大ちゃんは下を向きつつ、首をかしげた。
「え、そうなの?じゃあ、できたんだ。」
「う~ん、彼女というには、まだ早いですけどね。トウナさんは?」
「俺は、全然ダメ。」
「意外ですね。僕、てっきり、戦争が終われば、トウナさんが一番早く結婚すると思ってたんですよね。」
「無理でしょ。俺、女と手もつなげないから。」
「そうなんですか?自分は‥手とかは普通ですね。」
「そうなんだ。」
「抱き合うとかはちょっと‥。」
コンコン
京奈さんが、窓の外から手を振っている。
「こんにちは!」
大ちゃんが言った。
「知り合い?」
「はい。僕が住んでいるアパートの床を、直していただいたんですよ。」
「あ~、さむさむ。」
京奈は、カフェに入ってきた。
店員さんが来た。
「ケーキ一つ。あ、三つ。コーヒーは‥、コーヒーも三つ」
「そんないいですよぉ。」
トウナが言った。
「いいっていいって。俺も、最近、金が入ったからさ。」
「ええ?お金が?」
京奈さんは、小声で言った。
「うん。実は、皇居の修理をしたんだ。」
「そうだったんですか。」
「それなら、まぁ、普通の仕事の10倍くらいは入りますよね。」
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