第15話 師団長との話合い?

文字数 1,313文字

「私たちは、男女の双子で産まれてきました。女児の方はいにしえの魔女の結界の核を担い、男児の方は魔女の魔力を受け継いでいると、当時の師団長……私の養父が、国王陛下に進言したそうです。そして、私は師団長の下へ引き取られて行きました」
「あのっ、それって極秘事項では……」
 口外したら頭と胴体が離れてしまうという、あの伝説の。

「まぁ、そうですね。忌み子ですから、結界の核と魔力が分かれていなければ、私は生まれた直後死んでいた事でしょう」
 肯定してるわ。しかも、話続けているし。

 …………まぁね。そうよね。双子は争いの種にしかならないし。
 その王女殿下も結界の核を担っていなかったら、生きてはいなかったんでしょうね。

「それなら、師団長は中に戻って治療を続けられた方が良いのでは?」
「だから私では無理なのです。到底、あの人数は救えない」
 拳を握りしめ、悔しそうに顔を逸らしているけど……。
 魔女の魔力を継承しているんだよね?

「本来、魔女の力は男児には継承されない。私の魔力は中途半端なのです」
 考えが顔に出てたかな? 師団長は、私の心を読んだかのような発言をした。
「貴女……。ナタリー様は、隣国の魔女様なのですよね。どうか、お力を」
 黙っている内に、師団長はとんでもない事を言い出した。
 思わず私は、周りの気配を探る。誰も居ないようで、ホッとしたけど。

「例えば、私が隣国の魔女だとして。どうして力を貸さねばならないのです? この国の魔女様は姿すら見せずにいるのに……」
 しかも王女殿下だ。隠れ住んでいるのならまだしも、国の有事だろうに。
「ですから、魔力が」
「魔力などいりません。ほんの少しの知識を与えるだけで、死者どころか軽症者も出さずに済むというのに」
「何なのです。その知識とは……」
 師団長の必死の問いかけに、私はため息を吐き、低い声で言った。
「どうして、この国の魔女様が口に出さずにいる事を私が言わねばならないのです」

 魔女ならば知っている。昔は人間ですら知っていた。
 代々、魔女の知識は口伝えで伝えられ、文献には残らない。
 その中の、難しくもなんともない些細(ささい)な知識。

 ただ、その知識には責任が伴う。
 私が……もしくは、この国の王女殿下が口にしてすら信じてもらえず。
 最悪、国家転覆(てんぷく)罪を言い渡されるかもしれない。
 他所から流れてきた私なんかが口にすれば、あっという間に処刑されてしまうかもしれないような知識だ。

 国が絡んでなければ、大した知識じゃ無いんだけどね。

「とにかく、私はこの国を出ます。魔女だと疑われた以上、ここにはいられませんから」
「私だけの胸一つにおさめます。ですから、どうか出て行くなどと」
 また腕を掴まれた。今度は、魔力を使って離さない。
 さすがにこれを振り払ったら、疑いどころか魔女だと確定しちゃうかな?
 婚約破棄の時と違って、ギルドの寮に必要な荷物置いて来てしまっているからなぁ。
「それに、ナタリー様に責任を押し付けたりなどしません。魔女の知識を教えて下されば、私の権限を使って広めましょう」
 もう、何なのって言うくらい。師団長が追いすがって来る。

 …………傍目から見たら、色々な誤解を生みそうだからやめてよね。
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