第5話 そうだ回復魔法があるではないか

文字数 1,333文字

 おおっ、そうだ。回復魔法。
 支援系魔法の基礎魔法。軽い傷を治せる下級ポーションと同程度の能力。
 これなら、少し魔力を持っていれば誰でも発動できる。
 普段、下級ポーションを作る為に魔力のある薬草にふれていたという事で何とかならないだろうか?
 
「そういえば私、長い間、魔力のある薬草にふれていた所為か、少しだけ回復魔法が使えます。それで」
 居住を冒険者ギルド寮に移して……と、続けようとしたら。
 どよっという感じで、周りがざわめいた。
 受付のお姉さんは、慌てて私の口を塞いでいる。
 横にいた職員たちになにやら小声で指示を出しているようだった。

「さて、ナタリーちゃん。ちょっと奥でお話ししましょうか」
 口調は優しかったけど、何だか逆らえない雰囲気を出していた。

 私、何かやらかした?



 冒険者ギルドの二階、応接室のソファーに座るように言われた。
 前には、王都の冒険者ギルド長。
 秘書だろうか、ぴっちりした服装をした女性が入れてくれたお茶が美味しい。(現実逃避)

「……で、お前さんは回復魔法が使えるんだって?」
 ギルド長はガウルさん。受付のお姉さんはソフィアさんって言うんだって。
 そして美味しいお茶を入れてくれたのは、マチルドさん。

 数年はいるつもり……つまり、数年しかいないつもりだったから、名前なんか覚えるつもり無かったんだけどな。

「はい。でも、多分下級ポーションと同じレベルですよ。薬草の魔力に10年以上触れていたら、()()()できるそうなので」
 私は誰でもを強調した。
「俺らだって、採取して来る冒険者だって、10年以上触れているけど誰も回復魔法なんて使えないぞ」
 ガウルさんはそう言ってくるが
「それは、採取しただけ、受付で鑑定して買い取るだけで、そのまま放置しているからでは無いですか? 魔力を持たない私たちはポーションを作る時に薬草から数時間かけて、薬草の魔力を抽出します。体や魂に薬草の魔力が染みついてもおかしくは無いでしょう?」
 ウソじゃない、本当の事だ。

 人間の魔術師の多くは、最初は下級ポーション作りをして魔力を得てから、王宮に召し上げられ、そこで中級以上の薬草に出会い更に魔力を高めていった。
 そして、魔力は遺伝する。
 魔術師の家系に生まれてきたものは、強弱の差があれ魔力を持って生まれる。あの家系、なぜか子どもが生まれにくくなっているけど。
 今の魔術師にその過程を通って来たものがいないから、忘れ去られている知識なのだろう。

「それは……そうだが」
 ガウルさんは少し言い淀んできてから、私に訊いてきた。
「それで、お前……いや、ナタリーは王宮へ上がる為の推薦状が欲しいのか?」
 は? いらない。
「いえ。ここで冒険者へ回復魔法をかけたいと思います。料金は下級ポーションと同じ値段で良いです」
「なっ」
 ガウルさん……いや、横にいるソフィアさんとマチルドさんまで驚いていた。

 だろうね。
 大した魔法でも無いのに、下級ポーションとは雲泥の差の料金価格。
 物の価値の分からない子どもだと思われても困るし、王宮行なんてもっとイヤだ。
 だからこその交渉。
「そのかわり、ここの寮で私を保護してもらえないでしょうか?」
 そう、この条件()()さっき下で私が言おうとしたことだった。
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