第2話 いにしえの盟約に沿って
文字数 1,338文字
いにしえの盟約。
もう随分と昔の話だ。
リフレイン家がまだなかった頃、その数代前であるルイーナ王国、国王との盟約。
私もまだその頃は、幼かった。
いにしえの魔女と言われた母は、幼い私を残して逝く事を大層気に病み、この国に瘴気と魔物から守る結界を張る代わりに「この子を頼みます」と言い残して消えてしまった。
当時の国王は、母との約束通りそれは大切に育ててくれた。
……そう、国王が存命中は、私の周りも平和だったのだ。
みんなが私の敵になったのではない。
だけど、得体の知れない私を排除する派閥は容赦なく襲ってきた。
王子達の中にも、私を助けようと、逃がそうとしてくれた者がいた。
だから私も約束をしたのだ、結界の強化のため呼ばれたら一度だけ舞い戻ってくると……。
そして、また迫害されたその時はもう二度とこの地は踏まない……と。
そうして、一度だけ私の居場所に繋がる指輪と魔女の盟約書を、味方になってくれた王子に託したのだった。
その王子の子孫がリフレイン公爵。
私は公爵邸では無く、森の奥の小さな小屋にたどり着いていた。
服は……まぁ、コルセットなどいらない平民が着ているような物。
決して裸では無いからね。
小屋に着いて、まずしたことはアイテムボックスに魔道具を詰め込むこと。
ありきたりな物は、捨て置いても良いけど、ここには伝説級のものもある。
この森自体は、国の結界と私が張った結界で、正気が濃くなりそれなりに強い魔物も出るのでまず普通の人間は入って来れない。
まぁ、魔術師や騎士たちを犠牲にすればたどり着けるかもしれない。
それよりも盟約により、弾き飛ばされる前にここを出て行かなければ。
国の結界の外とは言え、ここもルイーナ王国内だ。
逃亡先くらい自分で選びたいもの。
「ナタリー・ド・リフレイン様。どうか思いとどまって下さい」
小屋から転移魔法で飛ぶ直前に声がかかった。
もう追手が……と、一瞬ヒヤッとしたけど宮廷魔術師長が意識だけ飛ばしてきたようだった。
さすがだね。人間でここまでできるなんて。
「ただのナタリーよ。盟約は破られたの。ここに留まっていても私の意志とは関係無くこの地から弾かれるわ」
「しかし、結界が」
「大丈夫じゃない? 私は物語 の聖女様のように、ケチくさく結界を解くなんてことしないし。ただ、この国から出て行くだけだよ」
ただ、母が張った結界は私を核にしているし、今回はその結界を修復しただけだから、この地に留まらない事でどんな影響が出るかはわからない。
でもね。結界があるうちに対策をとる時間は充分にあるハズ。
魔女の結界に頼っていない国も多いのだから……。
「ああ。聖女リリカ様がいるから、良いじゃない」
私はポンと手を打って、魔術師長の意識に向かって言った。
「あの女は聖女ではありません」
なんだか吐き捨てるように言っている。
「まぁね。聖女なんて存在しないから。お伽噺の読みすぎだわね、みんな」
さてと……、もう良いかな?
「そんじゃ。私は行くわね。もうこうして話すことも無いでしょうけど、元気で」
じゃっとばかりに私は、今度こそ転移魔法を使ってこの小屋から消えた。
その途端、周りから瘴気が入り込み、あっと言う間に小屋を飲み込んでいった。
もう随分と昔の話だ。
リフレイン家がまだなかった頃、その数代前であるルイーナ王国、国王との盟約。
私もまだその頃は、幼かった。
いにしえの魔女と言われた母は、幼い私を残して逝く事を大層気に病み、この国に瘴気と魔物から守る結界を張る代わりに「この子を頼みます」と言い残して消えてしまった。
当時の国王は、母との約束通りそれは大切に育ててくれた。
……そう、国王が存命中は、私の周りも平和だったのだ。
みんなが私の敵になったのではない。
だけど、得体の知れない私を排除する派閥は容赦なく襲ってきた。
王子達の中にも、私を助けようと、逃がそうとしてくれた者がいた。
だから私も約束をしたのだ、結界の強化のため呼ばれたら一度だけ舞い戻ってくると……。
そして、また迫害されたその時はもう二度とこの地は踏まない……と。
そうして、一度だけ私の居場所に繋がる指輪と魔女の盟約書を、味方になってくれた王子に託したのだった。
その王子の子孫がリフレイン公爵。
私は公爵邸では無く、森の奥の小さな小屋にたどり着いていた。
服は……まぁ、コルセットなどいらない平民が着ているような物。
決して裸では無いからね。
小屋に着いて、まずしたことはアイテムボックスに魔道具を詰め込むこと。
ありきたりな物は、捨て置いても良いけど、ここには伝説級のものもある。
この森自体は、国の結界と私が張った結界で、正気が濃くなりそれなりに強い魔物も出るのでまず普通の人間は入って来れない。
まぁ、魔術師や騎士たちを犠牲にすればたどり着けるかもしれない。
それよりも盟約により、弾き飛ばされる前にここを出て行かなければ。
国の結界の外とは言え、ここもルイーナ王国内だ。
逃亡先くらい自分で選びたいもの。
「ナタリー・ド・リフレイン様。どうか思いとどまって下さい」
小屋から転移魔法で飛ぶ直前に声がかかった。
もう追手が……と、一瞬ヒヤッとしたけど宮廷魔術師長が意識だけ飛ばしてきたようだった。
さすがだね。人間でここまでできるなんて。
「ただのナタリーよ。盟約は破られたの。ここに留まっていても私の意志とは関係無くこの地から弾かれるわ」
「しかし、結界が」
「大丈夫じゃない? 私は
ただ、母が張った結界は私を核にしているし、今回はその結界を修復しただけだから、この地に留まらない事でどんな影響が出るかはわからない。
でもね。結界があるうちに対策をとる時間は充分にあるハズ。
魔女の結界に頼っていない国も多いのだから……。
「ああ。聖女リリカ様がいるから、良いじゃない」
私はポンと手を打って、魔術師長の意識に向かって言った。
「あの女は聖女ではありません」
なんだか吐き捨てるように言っている。
「まぁね。聖女なんて存在しないから。お伽噺の読みすぎだわね、みんな」
さてと……、もう良いかな?
「そんじゃ。私は行くわね。もうこうして話すことも無いでしょうけど、元気で」
じゃっとばかりに私は、今度こそ転移魔法を使ってこの小屋から消えた。
その途端、周りから瘴気が入り込み、あっと言う間に小屋を飲み込んでいった。