第17話 ガウルさんの謝罪と報酬のお話
文字数 1,368文字
「すまなかった」
ギルド長室で、ガウルさんが土下座する勢いで謝ってくれる。
私はどうしたもんかと思いながら、とりあえず黙って見ていた。
だって、ガウルさんは悪くない。
ガウルさんは、今朝方まで王宮の治療所に詰めてケガ人の手当てをしていたようで、帰ってすぐ身なりを整えて、私をギルド長室に呼び出した。
「ちょっと情報収集がしたいと思ったばかりに、ナタリーにイヤな思いをさせて。しかも、徒歩で帰すなんて」
「あっ、いえ。師団長様が馬車を出してくれると言ったのを断ったのは私ですから」
私がそう言うと、ガウルさんは頭をガバッと上げる。
「それだけ、ナタリーの機嫌を損ねたという事だろう?」
機嫌を損ねた…………と、いう訳ではない。
私が居ない方が良いだろうと思って、あの場を出ただけだ。
師団長が追いかけてきたのは鬱陶しいと思ったけど……ただそれだけ。
だいたい、たかが小娘の機嫌だ。放っておいたら良いだけの事。
「結論から言えば、ナタリーの方が正しかった。手遅れ状態の人間に、ポーションを使うほどの余裕は無かったんだ」
ガウルさんは、悔しさとも何とも言えない……憔悴したような表情になってしまっている。
あの後も、あのアルとかいう人に沢山のポーションを使ったのだろう。
そしてその甲斐も無く亡くなってしまい、そのせいでポーションも足りなくなってしまった。
私が黙っていると、小袋が目の前のローテーブルに置かれた。
両手に収まるくらいの小袋だ。なんだか、ずっしりしているけど。
「それで、だ。報酬だけは預かって来た。確認してくれ」
そう言われたので、私は小袋を自分の方の引き寄せ中身を確認した。
金貨、十数枚? もっとある?
「もらえません」
私は、小袋の口を閉じガウルさんの方に押し返した。
「昨日、私が治療したのは軽症者数名でしょう? 多めに貰っても金貨1枚にもなりません」
私がそう言うと、ガウルさんは自分の頭をガシガシ掻いた後。
「あ~。俺にはよく分からないんだが」
そう前置きをして
「前回の治療分も含まれているそうだ」
と、言いにくそうに言った。
なるほど、バレている訳ね。
前回、治療はしないと言った私が、こっそり治療所の全員の治癒を施したことが。
「これは、今 回 の 治療代という事で受け取っても良いのでしょうか?」
小袋の下の方に金貨より価値のある、白金貨が見えたのでそう訊いた。
将来の働きの分も……、とされてしまったらたまらない。
「ああ、それで大丈夫だ。なんでもナタリーが治療した中に公爵家に連なる者がいるとかで、下の方の白金貨はそこからの報酬だそうだから」
「そういう事なら、有難く頂戴いたします」
これでこの国にいる理由の半分は消えた。
後は、この国を拠点にして住む国を探せば良いだけの事。
そう思いながら、ギルド長室を出ると同時に、大金の入った小袋をアイテムボックスに収納した。
だけど、この周辺国から離れすぎると、魔法自体が存在しない国もあるのでは? なんせ、いにしえの魔女は……。
私がそこまで考えながら、2階の廊下を歩いていると階下が騒がしくなっていた。
なんだろう? 聞き覚えのある女性の声。泣き叫び縋っているような……。
下に降りてみると、いつぞやのケガをした子ども達の母親が、冒険者のおっちゃんに縋りながら助けを求めていた。
ギルド長室で、ガウルさんが土下座する勢いで謝ってくれる。
私はどうしたもんかと思いながら、とりあえず黙って見ていた。
だって、ガウルさんは悪くない。
ガウルさんは、今朝方まで王宮の治療所に詰めてケガ人の手当てをしていたようで、帰ってすぐ身なりを整えて、私をギルド長室に呼び出した。
「ちょっと情報収集がしたいと思ったばかりに、ナタリーにイヤな思いをさせて。しかも、徒歩で帰すなんて」
「あっ、いえ。師団長様が馬車を出してくれると言ったのを断ったのは私ですから」
私がそう言うと、ガウルさんは頭をガバッと上げる。
「それだけ、ナタリーの機嫌を損ねたという事だろう?」
機嫌を損ねた…………と、いう訳ではない。
私が居ない方が良いだろうと思って、あの場を出ただけだ。
師団長が追いかけてきたのは鬱陶しいと思ったけど……ただそれだけ。
だいたい、たかが小娘の機嫌だ。放っておいたら良いだけの事。
「結論から言えば、ナタリーの方が正しかった。手遅れ状態の人間に、ポーションを使うほどの余裕は無かったんだ」
ガウルさんは、悔しさとも何とも言えない……憔悴したような表情になってしまっている。
あの後も、あのアルとかいう人に沢山のポーションを使ったのだろう。
そしてその甲斐も無く亡くなってしまい、そのせいでポーションも足りなくなってしまった。
私が黙っていると、小袋が目の前のローテーブルに置かれた。
両手に収まるくらいの小袋だ。なんだか、ずっしりしているけど。
「それで、だ。報酬だけは預かって来た。確認してくれ」
そう言われたので、私は小袋を自分の方の引き寄せ中身を確認した。
金貨、十数枚? もっとある?
「もらえません」
私は、小袋の口を閉じガウルさんの方に押し返した。
「昨日、私が治療したのは軽症者数名でしょう? 多めに貰っても金貨1枚にもなりません」
私がそう言うと、ガウルさんは自分の頭をガシガシ掻いた後。
「あ~。俺にはよく分からないんだが」
そう前置きをして
「前回の治療分も含まれているそうだ」
と、言いにくそうに言った。
なるほど、バレている訳ね。
前回、治療はしないと言った私が、こっそり治療所の全員の治癒を施したことが。
「これは、
小袋の下の方に金貨より価値のある、白金貨が見えたのでそう訊いた。
将来の働きの分も……、とされてしまったらたまらない。
「ああ、それで大丈夫だ。なんでもナタリーが治療した中に公爵家に連なる者がいるとかで、下の方の白金貨はそこからの報酬だそうだから」
「そういう事なら、有難く頂戴いたします」
これでこの国にいる理由の半分は消えた。
後は、この国を拠点にして住む国を探せば良いだけの事。
そう思いながら、ギルド長室を出ると同時に、大金の入った小袋をアイテムボックスに収納した。
だけど、この周辺国から離れすぎると、魔法自体が存在しない国もあるのでは? なんせ、いにしえの魔女は……。
私がそこまで考えながら、2階の廊下を歩いていると階下が騒がしくなっていた。
なんだろう? 聞き覚えのある女性の声。泣き叫び縋っているような……。
下に降りてみると、いつぞやのケガをした子ども達の母親が、冒険者のおっちゃんに縋りながら助けを求めていた。