第13話 薬草畑と治療所の惨状
文字数 1,399文字
実際、謁見はすぐに終わった。
ギルド長で王族のガウルさんはともかく、公式の場で私に話せる内容などあまり無いからだ。
ルイーナ王国では、第一王子であるリッカル殿下と聖女様の婚約が決まり、その式典が行われたという事と、その際に聖女様が結界の強化の儀式を行ったという事。
あちらの魔術師が言うには、その儀式の最中に結界が不自然に揺らいだ……と。
時期的に、瘴気が濃くなり少し強い魔物が出現しだした頃と重なるのだという。
ルイーナ王国、国内はもっと深刻で、結界内にまで薄っすらと瘴気が流れ込んでいる可能性があるのだと……。
ガウルさんと師団長と私は、薬草畑の間を歩いている。
かなり広い畑なのに、この前来た時と違って薬草がまばらに生えた状態になっている。
たどり着いた治療所には、ケガ人があふれていた。
「治療所の増設を急いでいるのですが……」
師団長は、そう言って中に入るように促して来た。
「そうですか。それで私は何を……」
前と違って、手伝いを頼まれて来ているので中に入る。
「軽症の方に回復魔法をかけて頂けますか? それと、後は薬での治療をお願いします」
「薬を使うのは、俺でもできそうだな」
そう言ってガウルさんはケガ人の側に行き、治療を始めた。
冒険者たちの応急処置なんかもしたことがあるのだろう、手慣れたものだ。
私もこれくらいのケガならと思うところに向う。
「失礼します」
軽症に見えるけど、頭のケガだから慎重に探る。
いや、治すのは一瞬で出来るのだけど、基礎魔法程度と思わせるのがね。
「ああ、すっきりした。ありがとうございます」
治療が終わった騎士にお礼を言われた。
「いえ。仕事ですから」
我ながら愛想が無いかも知れない。
周りを見たら、治療にあったっている魔術師達がこちらを見ていた。
目が合うと、サッと目線を外されてしまう。
私以外の人達は、薬かポーションを使って治療をしているようだった。
あっ、いや。もう1人、師団長も回復魔法を使っている。
薬草畑があの状態なら、ポーション自体も数が少なくなっているのだと思うけど。
さて、次に治療出来そうな人は……。
そう思って見渡し、私はつい声を出してしまった。
「その人にポーションを飲ませても無駄です。他の方に……」
私の言葉に、上級ポーションを飲ませようとしていた魔術師の手が止まる。
かなり深手を負っていて、止血を試みているようだけど血が止まらない。
傷口からはかなり濃い瘴気が漏れていた。
「なんだと! こいつを見捨てろって言うのかよ!」
止血をしていた方の男性が大股でやって来て、私の胸倉をつかんだ。足が浮いて、首が絞まって苦しい。
しまったなぁ、言うんじゃなかった。
「何をしている!」
ガウルさんが駆けつけてくれる。
私から男性を引き離してくれた。
「ギルド長。こいつがアルを見捨てろって言うから」
「大声を出すんじゃない。ここは治療所何だぞ。それで、何がどうなっているんだ」
私の方を向いて、ガウルさんが訊いてきた。
「その方の言った通りです。死にゆく人間にポーションを飲ませる余裕は無いように思いましたので」
足りてない。畑があの状態では……。
だから、本来ポーションを使って治すはずのケガに、普通の薬を使わなければならなくなっているのだろう。
「だから、見捨てろと……」
静かな声で、ガウルさんが言う。
本当に余計な事を言ってしまった。
ギルド長で王族のガウルさんはともかく、公式の場で私に話せる内容などあまり無いからだ。
ルイーナ王国では、第一王子であるリッカル殿下と聖女様の婚約が決まり、その式典が行われたという事と、その際に聖女様が結界の強化の儀式を行ったという事。
あちらの魔術師が言うには、その儀式の最中に結界が不自然に揺らいだ……と。
時期的に、瘴気が濃くなり少し強い魔物が出現しだした頃と重なるのだという。
ルイーナ王国、国内はもっと深刻で、結界内にまで薄っすらと瘴気が流れ込んでいる可能性があるのだと……。
ガウルさんと師団長と私は、薬草畑の間を歩いている。
かなり広い畑なのに、この前来た時と違って薬草がまばらに生えた状態になっている。
たどり着いた治療所には、ケガ人があふれていた。
「治療所の増設を急いでいるのですが……」
師団長は、そう言って中に入るように促して来た。
「そうですか。それで私は何を……」
前と違って、手伝いを頼まれて来ているので中に入る。
「軽症の方に回復魔法をかけて頂けますか? それと、後は薬での治療をお願いします」
「薬を使うのは、俺でもできそうだな」
そう言ってガウルさんはケガ人の側に行き、治療を始めた。
冒険者たちの応急処置なんかもしたことがあるのだろう、手慣れたものだ。
私もこれくらいのケガならと思うところに向う。
「失礼します」
軽症に見えるけど、頭のケガだから慎重に探る。
いや、治すのは一瞬で出来るのだけど、基礎魔法程度と思わせるのがね。
「ああ、すっきりした。ありがとうございます」
治療が終わった騎士にお礼を言われた。
「いえ。仕事ですから」
我ながら愛想が無いかも知れない。
周りを見たら、治療にあったっている魔術師達がこちらを見ていた。
目が合うと、サッと目線を外されてしまう。
私以外の人達は、薬かポーションを使って治療をしているようだった。
あっ、いや。もう1人、師団長も回復魔法を使っている。
薬草畑があの状態なら、ポーション自体も数が少なくなっているのだと思うけど。
さて、次に治療出来そうな人は……。
そう思って見渡し、私はつい声を出してしまった。
「その人にポーションを飲ませても無駄です。他の方に……」
私の言葉に、上級ポーションを飲ませようとしていた魔術師の手が止まる。
かなり深手を負っていて、止血を試みているようだけど血が止まらない。
傷口からはかなり濃い瘴気が漏れていた。
「なんだと! こいつを見捨てろって言うのかよ!」
止血をしていた方の男性が大股でやって来て、私の胸倉をつかんだ。足が浮いて、首が絞まって苦しい。
しまったなぁ、言うんじゃなかった。
「何をしている!」
ガウルさんが駆けつけてくれる。
私から男性を引き離してくれた。
「ギルド長。こいつがアルを見捨てろって言うから」
「大声を出すんじゃない。ここは治療所何だぞ。それで、何がどうなっているんだ」
私の方を向いて、ガウルさんが訊いてきた。
「その方の言った通りです。死にゆく人間にポーションを飲ませる余裕は無いように思いましたので」
足りてない。畑があの状態では……。
だから、本来ポーションを使って治すはずのケガに、普通の薬を使わなければならなくなっているのだろう。
「だから、見捨てろと……」
静かな声で、ガウルさんが言う。
本当に余計な事を言ってしまった。