第14話

文字数 962文字

 質問
『最近、マニアックな専門店のバーがありますが、どのように考えていますか?』

 答え
 昭和五十五年頃と思われる週刊新潮の切り抜き記事が私の手元にあります。その記事の中で澤井慶明氏は『ホテルには研究材料がそろっていますから、町のバーテンダーで二十年やつても、ホテルのバーテンダーの五年にかないません』と述べています。これは日本に物がなかった時代の感覚だと思います。
 昭和五十年代後半からバーテンダーとして働きだした私の極めて個人的で正直な感覚を申し上げますと、独立して自分の店を構えたいとお考えなら街場のバーテンダーになることをお奨めしたいです。ホテルのバーにも色々ありますので一概には言えませんが、あるホテルではキャンペーン企画や酒の品揃え、仕入れ等々を現場のバーテンダーではない会議室の人達で決めてしまうところもあるようです。また、お客様とバーテンダーの距離感にも違いがあります。よく、店につく犬タイプ、人につく猫タイプなんて言い方を、かつてしていたことがあります。ホテルのバーをご利用するお客様はバーテンダーが変わっても店に通い続ける事が多いようです。街場のバーではバーテンダーさんが移動する度にバーテンダーさんを追いかけて通う方が往々にしていらっしゃいます。美容師とお客様の関係にも似ていますね。かくゆう私にも独立する以前からの三十五年以上、御贔屓にしてもらっているお客様がいます。
洋酒など輸入量に制限があり、需要があっても入手できない時代があったのです。そこで日本のメーカーは次々と各種のリキュールづくりを手掛けるのです。年配の方たちならヘルメスといった名称に聞き覚えがあると思います。私より二十歳近く年上のバーテンダーの方は、『コアントローを使っているバーは高級なしっかりした店だ』とおしっゃていたことがあります。酒税法や関税の大幅な改正により入手しやすくなった後、コアントローはお菓子作りに使用する手頃な洋酒だと考えていたお客様がいたのには、私もビックリ致しました。私が二十歳代の頃は舶来物といって洋酒全般が高級な贅沢品だったのです。
 現在、日本各地にはマニアックな飲食店が沢山あります。ウイスキー専門店、シェリー専門店は勿論、アブサン専門店まであります。多種多様な日本のバーシーンを是非、楽しんでください。

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  •  第一章 『アドニス』

  • 第1話
  • 注釈・参照

  • 第2話
  •  第二章 『ペイフォワード』

  • 第3話
  •  第三章 『アムール』

  • 第4話
  • 追記。 『おわりに』

  • 第5話
  • 付録・バーのショートショートストーリー五選『今宵、バーの片隅で』

  • 第6話
  • 質問『お客様との会話で印象的だったことはありますか?』

  • 第7話
  • 質問『日本のバーについて思う事はありますか?』

  • 第8話
  • 質問『是非、行ってほしいバーとは、どんなバーですか?』

  • 第9話
  • 質問『日本のバーは、どのように発展していくでしょうか?』

  • 第10話
  • 質問『バーで飲む為の嗜み方はありますか?』

  • 第11話
  • 質問『バーとは、どんな場所ですか?』

  • 第12話
  • 質問『印象深いバーやバーテンダーの方はいらっしゃいますか?』

  • 第13話
  • 質問『最近、マニアックな専門店のバーがありますが、どのように考えていますか?』

  • 第14話
  • 質問『出入り禁止になる人って、本当にいるんですか?』

  • 第15話
  • 文中の一部を抜粋

  • 第16話

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