第12話

文字数 1,047文字

質問『バーとは、どんな場所ですか?』
回答。
 この本を読んでいらっしゃる、あなたには心置きなく一時≪ひととき≫を過ごすことのできる行きつけのバーがあるでしょうか。
 一言でバーと言っても様々な形態があります。ビリヤードのできるプールバーやダーツバー、カラオケバーなどはアミューズメントバーと呼ぶことができるかも知れません。いわゆる飲食だけで営業しているカウンターバーでも、襟を正さなくてはならない非日常的な世界を保っているバーもあれば、気軽なティーシャツ姿で日常的に訪れる生活に密着したバーもあます。いずれにしても大切なのは偶々≪たまたま≫同じ時間、同じ空間を共有した他のお客様に不快な思いをさせないことを心掛けなければいけません。
 哀しい想いの人、歓喜の気持ちを伝えたい人、バーは千差万別な客が訪れるパブリックな場所です。それだけに自分の意にそぐわない事も起きるでしょう。大切なルールとして、他のお客様の酒の席に立ち入りすぎないことです。そして、洒落た飲み手になりたければ妬み、嫉み、愚痴や悪口は控え、美しい立ち振る舞いを演じることに努めましょう。例えば悪気はなくても、こんなことを口にする方がいます。『僕はバーボンよりスコッチのほうが好きだな。バーボンは単調な味だよね。特に、あの銘柄は味が落ちたよ』その時、その場所に居合わせた他のお客様が、ある想い入れなどをもって大切に飲んでいるのが、その銘柄のバーボンだったらどうするのです。そんな事があってはならないのです。こうした場面は、無粋なグルコンやスノッブと呼ばれる方々にありがちな言動なのです。そんな方々は『この料理はこうだ』『この飲み物は、こうあるべきだ』という固定観念に囚われていることが往々にしてあります。『美食術』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。それを身につけると本当の意味で人生を楽しむことができます。一食数十万円のコース料理よりも、一食数百円の屋台の料理を楽しむ方法もあるのです。
 もう、お気づきの方はお分かりでしょう。レストランやバーは食べる所、飲む所ではなく、過ごす所なのです。その場所に居合わせた人との距離感を楽しみ、時間を共有するのです。人生を楽しんでいる人は、豊かな時間を過ごしているのです。
 料理屋さんが味ひとつでデパートにアンテナショップを出すような事は、バーには出来ません。それこそ、隣のビルに移っただけでも空気が変わってしまうんです。
 時の積み重ねが造ってくれるバーの世界は何物にも変えがたいものなのです。

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  •  第一章 『アドニス』

  • 第1話
  • 注釈・参照

  • 第2話
  •  第二章 『ペイフォワード』

  • 第3話
  •  第三章 『アムール』

  • 第4話
  • 追記。 『おわりに』

  • 第5話
  • 付録・バーのショートショートストーリー五選『今宵、バーの片隅で』

  • 第6話
  • 質問『お客様との会話で印象的だったことはありますか?』

  • 第7話
  • 質問『日本のバーについて思う事はありますか?』

  • 第8話
  • 質問『是非、行ってほしいバーとは、どんなバーですか?』

  • 第9話
  • 質問『日本のバーは、どのように発展していくでしょうか?』

  • 第10話
  • 質問『バーで飲む為の嗜み方はありますか?』

  • 第11話
  • 質問『バーとは、どんな場所ですか?』

  • 第12話
  • 質問『印象深いバーやバーテンダーの方はいらっしゃいますか?』

  • 第13話
  • 質問『最近、マニアックな専門店のバーがありますが、どのように考えていますか?』

  • 第14話
  • 質問『出入り禁止になる人って、本当にいるんですか?』

  • 第15話
  • 文中の一部を抜粋

  • 第16話

登場人物紹介

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