ピグマリオンの告白(3)

文字数 1,072文字

 純一少年の演説は、当然、ロートルテラス語で行われている。この為、美菜隊員には展開が全く読めて来ない。そんなこともあり、美菜隊員は、隣に控える純一少年を肘で突き、小声で耳打ちをして状況を訊ねた。
「何がどうなっているの?」
 純一少年は、彼女に小声で、これ迄のあらましの展開を伝えた。そして彼女には、彼がそう言う考えに至った経緯も説明する。

「美菜隊員は、大悪魔ピグマリオンの話を聞いて、違和感を感じなかったですか?」
「そ、それは……」
「最初っから、あいつの話は矛盾だらけでしたよ。あいつは『超兵器を造らせない為に自分が死にたい』とか言ってたでしょう。何故、死ななきゃいけないんです? 大悪魔はカミキリムシ人間の行けない他の時空へも自由に行き来が出来るのですよ……。だから僕は、『あいつは

で何かをしようとしているんだ』って、そう考えたのです。
 あの昔話だってそうです……。過去の結婚生活に関しては、『何の不満は無かった』なんて言っている割りに、ピグマリオン博士に関しては糞味噌に(けな)してましたよね。
 その前の時空だって、長い夫婦生活であれば、不満の一つや二つくらいはあった筈です。だが、あいつはそれを含めて『何不自由ない結婚生活だ』と考えていたんですよ。そんな我慢強いあいつが、なんで、ピグマリオン博士のことだけは、酷く悪し様に言うのでしょう? それも、ピグマリオン博士から酷い扱いを受けたエピソードなど、僕たちには、ひとつも語ることも無しにですよ。時間は充分あったのに……」
 確かに美菜隊員も、それまでの大悪魔ピグマリオンの話と、ピグマリオン博士と会ってからの話では、彼女の考え方が随分違っている様に感じてはいた。
「他にもあいつは、フレデリック王とベアトリスさんに激しい敵意を示しています。でも、ベアトリスさんは、あいつのことを『優しい伯母』と言っていました。これにも僕は、とても違和感を感じていたのです……」
「……」
「どう考えても、辻褄が合いません……。でも、ふと僕は……、ピグマリオンは、逆を言っているんではないかって思ったんです」
「どう云うこと?」
「あいつが一番愛していた人物とは、ピグマリオン博士ではなかったのか? そして、あいつの目的は、フレデリック王やベアトリスを破滅させる事では無くて、護ることではなかったのかってね……」
「護ること?!」
「そう、ピグマリオンは、フレデリック王とベアトリス、そして……、ピグマリオン博士の名誉すらも……、あいつ、本当は護ろうとしていたんじゃないかって思ったんです」
「え、それが……、どうして……」
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登場人物紹介

新田純一(要鉄男)


時空を放浪している大悪魔。偶然、訪れたこの時空で、対侵略的異星人防衛システムの一員として、異星人や襲来してくる大悪魔から仲間を護り続けていく。

新田美菜(多摩川美菜)


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属するエリート女性隊員。養父である新田武蔵作戦参謀の命に依り、新田純一の監視役兼生け贄として、彼と生活を共にする。

蒲田禄郎


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊隊長。本人は優柔不断な性格で隊長失格と思っているが、その実、部下からの信頼は意外と厚い。

沼部大吾


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する古参隊員。原当麻支部屈指の腕力の持主。豪快な性格の様で、純一少年が戦闘嫌いであることを悟り、彼を戦闘に参加させない様にするなど、細かい気配りもできる人物。

鵜の木和志


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する隊員。幼少期に見たマカロニウエスタンに憧れ、銃を自由に撃てるという理由で航空迎撃部隊に入隊したと云う変わり種。非常識な言動で周りを驚かせることもあるが、銃の腕と熱い心には皆も一目置いている。

下丸子健二


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する隊員。原当麻基地でも屈指の理論派。同期入隊の新田美菜隊員に密に憧れを抱いている。

矢口ナナ


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する入隊一年目の若手女性隊員。明るく誰とでも仲良くなれる性格。

ピグマリオン


謎の女大悪魔。人形などの非生物を生身の身体に変える大悪魔能力を有している。

ベアトリス


ロートルテラス星の老王フレデリック五世の孫娘。

フレデリック王(フレデリック五世)


ロートルテラス星の王。

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