第十五話 ユウタからのお土産
文字数 4,115文字
適当に街をぶらついてから、街で美味しいと評判のサンドイッチ屋で、スペシャル・サンドイッチを食べる。
ユウタの分もお土産にと思って、スペシャル・サンドイッチを持ち帰りで買って、宿に帰る。
人の頭が入るほどの包みを持ったユウタが、不機嫌な顔をして宿で待っていた。
(なんだ、ユウタも俺にお土産か? 時季からいって、甘くて冷えた、西瓜かメロンなら嬉しい。だが、ユウタは、知り合いの農家の家に遊びに行ったわけじゃない。ゴブリンの陣地に行った。ゴブリンが農家から奪ってきた果物をくすねてきたのなら、可愛いものだ。だが、哲学者はそんなこそ泥みたいな真似はしない)
ゴブリンの頭とか入っていたら笑えないと思いながら、包みを眺める。
ユウタは不機嫌な顔のまま提案した。
「とりあえず、俺の部屋で話そう。話に大きな進展があった。今後の戦局を左右するほどの出来事だ。キルアにも俺の相棒として現状は知ってもらいたい」
「それは本当に進展? 哲学的に前に進んでも。戦術的に後退したって状況は勘弁 だぜ。俺は常に風の向くまま気の向くままに生きる男だが、向かい風は、歓迎しない」
ユウタの部屋に行く。ユウタの部屋も宿屋の一階にある部屋で、大きさは二人用の部屋だった。
部屋にはベッドのほかにも、丸テーブルと簡単な造りの椅子が二脚ある。テーブルを挟んで、ユウタと向かい合う。
キルアはスペシャル・サンドイッチをテーブルの前に置いた。
「まずは、これ、俺からのお土産。街で美味いと評判のスペシャル・サンド」
ユウタは素っ気ない態度で褒める。
「いつもながら、食い物に関する心遣いはまめだな。哲学には無理解だが」
「喰ってみたら、美味かった。アボカド・ソースと照り焼きチキンの組み合わせがいいんだろうな。ベストな組み合わせってのは、どこの世界にでも存在する。俺とお前のように」
ユウタも包みをテーブルの上に置く。
「これは、俺からお土産。中身は、ゴブリン王ルルウスの首だ」
キルアは思わず顔を一度、背けた。
(なんとなく、ゴブリンの頭が入っているとは予感はしていた。だが、交渉中に敵の大将の首を取って帰ってくるなんて、葬式のスピーチで口にした滑ったジョーク並みに、笑えないぜ。もっとも、俺もボブレットを殺しているから、ユウタを非難はできないが)
キルアは多少あてつける言い回しをする。
「ちょっと、ユウタさん。貴方は何をしに行って、何をして帰って来たか、わかっていますか?」
ユウタは気まずそうな顔をしたが、正直に申告した。
「ルルウスの陣営に情報収集をしに行って、ルルウスの首を取って帰ってきた。以上だ」
キルアは包みをぺしぺしと叩きながら、小言を述べる。
「まさか、ルルウス陣営の全ての情報がこの包みの中に入っています。情報を好きなだけ取り出してくださいと命じるのか。確かに、ルルウスは全てを知っているかもしれないが、これなら拷問も不可能だ」
ユウタはばつが悪そうに語る。
「そんな馬鹿な内容を口にはしない。ただ、ルルウスが得意げになって作戦を部下の前で語っているのを聞いて思ったんだ。こいつは駄目だ、殺そうってな」
ユウタの言葉を疑うわけではない。だが、包みを開けてみる。
目を見開いて苦悶の表情で死んでいるゴブリン王の首があった。
(本当にやっちまったんだな。ルルウスも馬鹿なゴブリンだぜ。前のボブレットが陣中から連れていかれて死んだのに、自分は陣の中にいれば安全だと、たかを括りやがった。本当に学習能力がないやつらは、取りづらい柿の種みたいに嫌になるぜ)
「なんでも、かんでも殺して解決するなんて、哲学者先生のする行いじゃないでしょう。殺害担当は、お姫様の役目だ」
ユウタはむすっとした顔で意見する。
「俺だって悪魔だ。腹の立つ話を聞かされれば怒る。それに、哲学者だって怒るときは拳を振り上げる。ただ、今回は行き過ぎたかもしれない」
「拳を振り上げて殴打するのはわかる。だが、怒って交渉相手の首まで取ってくるって、これは、やりすぎだぜ。完全に無法者の手口だ。スマートでもクールでもない。時にはファンタスティックと評価されるかもはしれんが、今回は微妙だ」
ユウタはぶっきら棒に告げる。
「反省はしている。だが、後悔はしていない。これもまた、哲学だ」
キルアはルルウスの首を梱包し直す。
「わかったよ。ルルウスは死んだ。当然、ゴブリン軍は方針を変えるだろう。午前中の交渉の中身もこれで御破算だ。手間をかけてすまない」
「だろうな、ゴブリン軍は指揮官によって作戦が大きく変わる軍だ。再交渉になるだろう」
「手間はいいさ。前の会談も季節外れのグレープ・フルーツか、ルルウスの脳みそのように、中身があってないようなすっかすっかの会談だった」
「中身のなさは認める。だが、ルルウスとグレープ・フルーツを比べるとグレープ・フルーツが惨めな気分になるだろう。グレープ・フルーツは甘酸っぱいが、ルルウスは渋いだけだ」
「再交渉の手間はそれほどでもない。ゴブリンに砂糖みたいな甘い言葉をぶちこんで交渉の席に乗せる。そんで、地獄の釜で煮詰めて、ゴブリンジャムを作るようなものだからな」
ユウタが冷静な顔で予想を語る。
「不味そうなジャムだな。それで、ジャムの主原料だが、次は、ゴブリン王のジャジャが指揮を執る。ジャジャは臆病で用心深いゴブリン王だと聞く。ルルウスよりは簡単には行かないかもしれん」
「とりあえず、ゴブリン軍の様子を探ってきてくれ。俺は、晩飯が終わった頃に市長舎に出向いて、ヘンドリックに事情を話してくる。ヘンドリックは交渉に不安を持っていた。生ゴミにミントの香の消臭剤ぶちまけるが如く、ヘンドリックの不安を消してくれる」
「わかった。頼む」
夕方になると、ヘンドリックから迎えの使者が来た。
ルルウスの首を持って市長舎に行く。ヘンドリックは心配な顔をしていた。
「キルアさん、もういいいでしょう。交渉結果を教えてください」
「ルルウスは想像を超える馬鹿なので、交渉は決裂しました」
「えっ」とヘンドリックの顔が歪めた。
「落ち着いてください。市長。それと、西瓜はお好きですか。あの、甘くて赤いやつです」
ヘンドリックが目を見開いて怒った。
「こんな非常時に西瓜なんて食べている場合ではありませんよ。そんなお土産では誤魔化されませんよ。交渉には街の未来が懸かっているんですよ」
「それは良かった。これを見ると、しばらくは西瓜を食べられなくなるかもしれないので」
キルアはヘンドリックの前にあるテーブルに包みを置く。包みをさっと開ける。
「敵のルルウス王の首です。話にならないので、ぶっ殺してきました」
ヘンドリックは顔を顰 める。ヘンドリックはルルウスの首から顔を背けた。
「ちゃんと見てくださいよ。ルルウスの首には懸賞金が懸かっている。それはもう西瓜の百個や二百個が余裕で買えるくらいに」
ヘンドリックが青い顔をして意見する。
「そんな、ゴブリンの首は見たくありません。仕舞ってください。懸賞金の催促なら担当の窓口に持って行ってください」
「そうですか。なら、仕舞って、あとで窓口に持って帰って金に換えます。お金は大事ですし、貰える金はきちんと貰う主義です」
キルアはルルウスの首を包み直す。
「とまあ、敵の指揮官が、また一人、亡くなったわけです。これはノーズルデスにとっては、喜ばしい事態です。この調子で首を上げていけば、勝利は間違いなしです」
ヘンドリックはおどおどした態度で不安を述べる。
「そうでしょうか? ゴブリン軍は指揮官の首を取られたのなら、怒って街を攻めてくると思いますよ」
「可能性は零ではないですが、低いでしょう」
ヘンドリックは顔を歪めて、喰ってかかる。
「なぜ、そう言い切れるんですか」
(当然といえば当然の反応か。だが、小賢しいゴブリンなんかよりよっぽど分かり易くていい。反応だ)
キルアは自信満々な態度を装い、告げる。
「我々が極秘に手に入れた情報によると、ゴブリン軍を率いるゴブリン王同士は、とても仲が悪い。仲間内では殺し合いはしないが、いつも他の王の首を狙っている」
「ゴブリン王同士の仲が悪い情報は、こっちにも上がってきています」
「ならば、怒りに任せての報復の襲撃はない」
ヘンドリックは苛々した顔で怒った。
「そうかもしれない。ですが、ルルウスが死んだことにより、金貨による解決ができなくなった」
キルアは尊大な態度で、ハッタリをかます。
「ルルウスは金を払っても街を侵略する気でした。ルルウスは街の人間の男たちを殺した後、女と子供を奴隷として、ゴブリン領に連れて行く計画を立てていました」
ヘンドリックが驚いた顔で確認する。
「本当ですか?」
「本当です。ですが、ゴブリン軍の指揮官が別のゴブリン王に代わった状況により、方針が変わりました。今度のゴブリン王のジャジャは、もっと話がわかる奴です」
ヘンドリックが表情を曇らせて疑った。
「種のない西瓜はあるかもしれない。だが、話のわかるゴブリンがいるなんて、信じられないな」
キルアは自信たっぷりな態度で語る。
「大丈夫です。任せてください。ジャジャはゴブリン軍きっての慎重派。無闇に街を攻めません。時間が経てば、シャーロッテ様が軍勢と共に到着します」
ヘンドリックは弱った顔で尋ねる。
「時間は街に味方するでしょうが、上手く行きますか」
「もちろんです。シャーロッテ様の軍勢が着けば、ノーズルデスはもっと良い条件で、和睦できます。しかも、約束の履行はぐんと確実になる。もう、いいことだらけです」
ヘンドリックは渋々の態度でお願いしてきた。
「わかりました。ルルウス王が死んだ今となっては、キルアさんたちを信用するしかありません。よろしくお願いしますよ」
「洋上に浮かぶ二百m級の鋼鉄船に乗った気で、吉報を待っていてください」
ユウタの分もお土産にと思って、スペシャル・サンドイッチを持ち帰りで買って、宿に帰る。
人の頭が入るほどの包みを持ったユウタが、不機嫌な顔をして宿で待っていた。
(なんだ、ユウタも俺にお土産か? 時季からいって、甘くて冷えた、西瓜かメロンなら嬉しい。だが、ユウタは、知り合いの農家の家に遊びに行ったわけじゃない。ゴブリンの陣地に行った。ゴブリンが農家から奪ってきた果物をくすねてきたのなら、可愛いものだ。だが、哲学者はそんなこそ泥みたいな真似はしない)
ゴブリンの頭とか入っていたら笑えないと思いながら、包みを眺める。
ユウタは不機嫌な顔のまま提案した。
「とりあえず、俺の部屋で話そう。話に大きな進展があった。今後の戦局を左右するほどの出来事だ。キルアにも俺の相棒として現状は知ってもらいたい」
「それは本当に進展? 哲学的に前に進んでも。戦術的に後退したって状況は
ユウタの部屋に行く。ユウタの部屋も宿屋の一階にある部屋で、大きさは二人用の部屋だった。
部屋にはベッドのほかにも、丸テーブルと簡単な造りの椅子が二脚ある。テーブルを挟んで、ユウタと向かい合う。
キルアはスペシャル・サンドイッチをテーブルの前に置いた。
「まずは、これ、俺からのお土産。街で美味いと評判のスペシャル・サンド」
ユウタは素っ気ない態度で褒める。
「いつもながら、食い物に関する心遣いはまめだな。哲学には無理解だが」
「喰ってみたら、美味かった。アボカド・ソースと照り焼きチキンの組み合わせがいいんだろうな。ベストな組み合わせってのは、どこの世界にでも存在する。俺とお前のように」
ユウタも包みをテーブルの上に置く。
「これは、俺からお土産。中身は、ゴブリン王ルルウスの首だ」
キルアは思わず顔を一度、背けた。
(なんとなく、ゴブリンの頭が入っているとは予感はしていた。だが、交渉中に敵の大将の首を取って帰ってくるなんて、葬式のスピーチで口にした滑ったジョーク並みに、笑えないぜ。もっとも、俺もボブレットを殺しているから、ユウタを非難はできないが)
キルアは多少あてつける言い回しをする。
「ちょっと、ユウタさん。貴方は何をしに行って、何をして帰って来たか、わかっていますか?」
ユウタは気まずそうな顔をしたが、正直に申告した。
「ルルウスの陣営に情報収集をしに行って、ルルウスの首を取って帰ってきた。以上だ」
キルアは包みをぺしぺしと叩きながら、小言を述べる。
「まさか、ルルウス陣営の全ての情報がこの包みの中に入っています。情報を好きなだけ取り出してくださいと命じるのか。確かに、ルルウスは全てを知っているかもしれないが、これなら拷問も不可能だ」
ユウタはばつが悪そうに語る。
「そんな馬鹿な内容を口にはしない。ただ、ルルウスが得意げになって作戦を部下の前で語っているのを聞いて思ったんだ。こいつは駄目だ、殺そうってな」
ユウタの言葉を疑うわけではない。だが、包みを開けてみる。
目を見開いて苦悶の表情で死んでいるゴブリン王の首があった。
(本当にやっちまったんだな。ルルウスも馬鹿なゴブリンだぜ。前のボブレットが陣中から連れていかれて死んだのに、自分は陣の中にいれば安全だと、たかを括りやがった。本当に学習能力がないやつらは、取りづらい柿の種みたいに嫌になるぜ)
「なんでも、かんでも殺して解決するなんて、哲学者先生のする行いじゃないでしょう。殺害担当は、お姫様の役目だ」
ユウタはむすっとした顔で意見する。
「俺だって悪魔だ。腹の立つ話を聞かされれば怒る。それに、哲学者だって怒るときは拳を振り上げる。ただ、今回は行き過ぎたかもしれない」
「拳を振り上げて殴打するのはわかる。だが、怒って交渉相手の首まで取ってくるって、これは、やりすぎだぜ。完全に無法者の手口だ。スマートでもクールでもない。時にはファンタスティックと評価されるかもはしれんが、今回は微妙だ」
ユウタはぶっきら棒に告げる。
「反省はしている。だが、後悔はしていない。これもまた、哲学だ」
キルアはルルウスの首を梱包し直す。
「わかったよ。ルルウスは死んだ。当然、ゴブリン軍は方針を変えるだろう。午前中の交渉の中身もこれで御破算だ。手間をかけてすまない」
「だろうな、ゴブリン軍は指揮官によって作戦が大きく変わる軍だ。再交渉になるだろう」
「手間はいいさ。前の会談も季節外れのグレープ・フルーツか、ルルウスの脳みそのように、中身があってないようなすっかすっかの会談だった」
「中身のなさは認める。だが、ルルウスとグレープ・フルーツを比べるとグレープ・フルーツが惨めな気分になるだろう。グレープ・フルーツは甘酸っぱいが、ルルウスは渋いだけだ」
「再交渉の手間はそれほどでもない。ゴブリンに砂糖みたいな甘い言葉をぶちこんで交渉の席に乗せる。そんで、地獄の釜で煮詰めて、ゴブリンジャムを作るようなものだからな」
ユウタが冷静な顔で予想を語る。
「不味そうなジャムだな。それで、ジャムの主原料だが、次は、ゴブリン王のジャジャが指揮を執る。ジャジャは臆病で用心深いゴブリン王だと聞く。ルルウスよりは簡単には行かないかもしれん」
「とりあえず、ゴブリン軍の様子を探ってきてくれ。俺は、晩飯が終わった頃に市長舎に出向いて、ヘンドリックに事情を話してくる。ヘンドリックは交渉に不安を持っていた。生ゴミにミントの香の消臭剤ぶちまけるが如く、ヘンドリックの不安を消してくれる」
「わかった。頼む」
夕方になると、ヘンドリックから迎えの使者が来た。
ルルウスの首を持って市長舎に行く。ヘンドリックは心配な顔をしていた。
「キルアさん、もういいいでしょう。交渉結果を教えてください」
「ルルウスは想像を超える馬鹿なので、交渉は決裂しました」
「えっ」とヘンドリックの顔が歪めた。
「落ち着いてください。市長。それと、西瓜はお好きですか。あの、甘くて赤いやつです」
ヘンドリックが目を見開いて怒った。
「こんな非常時に西瓜なんて食べている場合ではありませんよ。そんなお土産では誤魔化されませんよ。交渉には街の未来が懸かっているんですよ」
「それは良かった。これを見ると、しばらくは西瓜を食べられなくなるかもしれないので」
キルアはヘンドリックの前にあるテーブルに包みを置く。包みをさっと開ける。
「敵のルルウス王の首です。話にならないので、ぶっ殺してきました」
ヘンドリックは顔を
「ちゃんと見てくださいよ。ルルウスの首には懸賞金が懸かっている。それはもう西瓜の百個や二百個が余裕で買えるくらいに」
ヘンドリックが青い顔をして意見する。
「そんな、ゴブリンの首は見たくありません。仕舞ってください。懸賞金の催促なら担当の窓口に持って行ってください」
「そうですか。なら、仕舞って、あとで窓口に持って帰って金に換えます。お金は大事ですし、貰える金はきちんと貰う主義です」
キルアはルルウスの首を包み直す。
「とまあ、敵の指揮官が、また一人、亡くなったわけです。これはノーズルデスにとっては、喜ばしい事態です。この調子で首を上げていけば、勝利は間違いなしです」
ヘンドリックはおどおどした態度で不安を述べる。
「そうでしょうか? ゴブリン軍は指揮官の首を取られたのなら、怒って街を攻めてくると思いますよ」
「可能性は零ではないですが、低いでしょう」
ヘンドリックは顔を歪めて、喰ってかかる。
「なぜ、そう言い切れるんですか」
(当然といえば当然の反応か。だが、小賢しいゴブリンなんかよりよっぽど分かり易くていい。反応だ)
キルアは自信満々な態度を装い、告げる。
「我々が極秘に手に入れた情報によると、ゴブリン軍を率いるゴブリン王同士は、とても仲が悪い。仲間内では殺し合いはしないが、いつも他の王の首を狙っている」
「ゴブリン王同士の仲が悪い情報は、こっちにも上がってきています」
「ならば、怒りに任せての報復の襲撃はない」
ヘンドリックは苛々した顔で怒った。
「そうかもしれない。ですが、ルルウスが死んだことにより、金貨による解決ができなくなった」
キルアは尊大な態度で、ハッタリをかます。
「ルルウスは金を払っても街を侵略する気でした。ルルウスは街の人間の男たちを殺した後、女と子供を奴隷として、ゴブリン領に連れて行く計画を立てていました」
ヘンドリックが驚いた顔で確認する。
「本当ですか?」
「本当です。ですが、ゴブリン軍の指揮官が別のゴブリン王に代わった状況により、方針が変わりました。今度のゴブリン王のジャジャは、もっと話がわかる奴です」
ヘンドリックが表情を曇らせて疑った。
「種のない西瓜はあるかもしれない。だが、話のわかるゴブリンがいるなんて、信じられないな」
キルアは自信たっぷりな態度で語る。
「大丈夫です。任せてください。ジャジャはゴブリン軍きっての慎重派。無闇に街を攻めません。時間が経てば、シャーロッテ様が軍勢と共に到着します」
ヘンドリックは弱った顔で尋ねる。
「時間は街に味方するでしょうが、上手く行きますか」
「もちろんです。シャーロッテ様の軍勢が着けば、ノーズルデスはもっと良い条件で、和睦できます。しかも、約束の履行はぐんと確実になる。もう、いいことだらけです」
ヘンドリックは渋々の態度でお願いしてきた。
「わかりました。ルルウス王が死んだ今となっては、キルアさんたちを信用するしかありません。よろしくお願いしますよ」
「洋上に浮かぶ二百m級の鋼鉄船に乗った気で、吉報を待っていてください」