第42話 玉鏡秘録

文字数 191文字

 女は人間ではなかった。

 母も同じだ。名は知らない。産まれたとき、母はすでに石になっていたからだ。しかし人間どもが呼び、恐れた名前なら知っている。

 玉藻前(たまものまえ)
 あるいは白面金毛九尾(はくめんきんもうきゅうび)の狐。

 かの大化生(だいけしょう)は陰陽師に正体を暴かれ、逃げる折、背中に矢を受けた。垂れた血は浮き草(鏡草)の漂う池に流れ、いくばくかの年を経て化生(けしょう)へと変じた。

 名を玉鏡草(たまかがみくさ)という。

         『山河奇譚鏡―牛鬼変―』より


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