第2話二十一代庄吉

文字数 512文字

 私が幼少のころ、村の共同墓地に立つ
一段と大きい墓は今から五代前の清五郎翁のであった。
清五郎は女の子ばかりの後に、庄吉が授かった。

 成人した庄吉は、明治九年(1876)神領村から「アイ」を娶る。
「アイ」は「ふじ」を産み早逝した。(ふじは私の実祖母である)

その後高鉾村から明治二十年(1887)「ハル」が後妻に入る。
二人の子女に恵まれると、庄吉夫婦は、隠居すると称して本宅の
東に立派な住いを建てる。が、子女は二人とも幼くして昇天。

 同じころ「庄吉」は連帯保証人になり、家財道具まで差し押さえ
られた。鍋も釜も、使えない悲哀を「ハル」から聞かされたことがある。
「保証人にはなるな」遺訓は家訓になった。
 考えることあってか、庄吉は「ハル」とも協議離婚し、財産を分散。
 何年かして「ハル」と戸籍上復縁。隠居所をたたんで母家に帰る。
こうして「門」に帰り夫婦で君臨して行った。
 
 昭和十二年庄吉は身罷った。大きな声の爺さんとだけ記憶にある。
私の5歳のころだ。庄吉没後も古婆さん「ハル」は、若婆さん「イチ」
をいじっていた。幼い日の記憶としてかすかに残っている。
 敗戦後の二十三年、寝たきりになっていた「ハル」は享年八十二歳で
天寿を全うした。

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