第25話 ルーツ前編

文字数 585文字

 引き出しの中から書き出しが出てきた。
50年も前に自分で調べたものであった。
 
 文字として始めて姿を表したのは
宗春信士1651没 慶安四年2月
覚道慈本士1663没 寛文3年
庄兵衞門1700没  元禄13年7月24日
源右衛門1710没  宝永7年8月20日
下右衛門1711没  宝永8年3月17日
役蔵先祖1721没  競歩6年4月
春岸  1762没  宝暦12年3月19日
吉右衛門1786没  天明2年
荘屋  1812没  文化9年
清作 1833没  天保4年6月5日
役蔵  1870没  文久二年10月26日
清五郎 1907没  明治40年8月4日
庄吉は21代目だと祖母から聞き伝えられたが、
それを立証するものは何もなかった。
 兄の代になって、よせ墓したので、もとの墓石は何も
残っていない。4カ所で100墓もあった
墓の跡地も原野になった。
それを知るものは今は私と弟のみになった。

 兄の孫たちは女の子ばかりだ。私は古い人間だから
個人の自由な権利と家の存続を秤にかける。
個人のウエートが断然重い。その孫たちも先祖になり
やがては見捨てられるのか?

 今は先祖の墓参する人間が生きているけど、やがて
無縁墓になるだろう。

 私はやがて死ぬんだ。そして、皆んなも続いて死ぬんだ。
 
 死んだら物体になり無になるのだ。持論と裏腹に、穏やか
 ならざる心に無常の風が吹きまくる。

 








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