第10話 私は生きている(2)
文字数 473文字
子供なりに父を理解する糸口に触れたようだ。
「出征する時にばあちゃんが『夜戦に備えて持っとれ』と乾燥した鰹節を持してくれた。
それを左の胸のポケットに入れていたら、鰹節が弾を受けてくれて命拾いしたんだ」
「へぇ戦場ってどんなんだったん」私は面白がって聞いた。嫌がりもせず話を続けた。
「支那軍と戦闘中に機銃掃射を浴び弾が何発も当たって倒れた。ここで死ぬんだ」と
咄嗟に『天皇陛下、万歳』を叫んでいた」
「すごい、本で読んだ通り兵隊さんは『天皇陛下、万歳』と言って死んでいったんだ。
軍国少女は体が熱くなり、父を誇らしく思えた。
「けんどなぁ、この後、担架に乗せられて壕へ避難している時再び掃射を浴びた。担架を
担いでいた蓮中は、担架を投げ捨て我れ先にと壕へ逃げ込んだ」
「そんなのひどすぎる」
「世の中そんなものだ。わしは、死にかけの朦朧とした目で戦友を見、わしも壕へ運ん
くれ『生きたい。死にたくない』と心から思うた。わしを置いて逃げた戦友も、ここで
死にたくない。助かりたい。生きたいと思ったのだ」
飄々と言う父の言葉に言い知れぬ臨場感があり私は言葉が出なかった。
「出征する時にばあちゃんが『夜戦に備えて持っとれ』と乾燥した鰹節を持してくれた。
それを左の胸のポケットに入れていたら、鰹節が弾を受けてくれて命拾いしたんだ」
「へぇ戦場ってどんなんだったん」私は面白がって聞いた。嫌がりもせず話を続けた。
「支那軍と戦闘中に機銃掃射を浴び弾が何発も当たって倒れた。ここで死ぬんだ」と
咄嗟に『天皇陛下、万歳』を叫んでいた」
「すごい、本で読んだ通り兵隊さんは『天皇陛下、万歳』と言って死んでいったんだ。
軍国少女は体が熱くなり、父を誇らしく思えた。
「けんどなぁ、この後、担架に乗せられて壕へ避難している時再び掃射を浴びた。担架を
担いでいた蓮中は、担架を投げ捨て我れ先にと壕へ逃げ込んだ」
「そんなのひどすぎる」
「世の中そんなものだ。わしは、死にかけの朦朧とした目で戦友を見、わしも壕へ運ん
くれ『生きたい。死にたくない』と心から思うた。わしを置いて逃げた戦友も、ここで
死にたくない。助かりたい。生きたいと思ったのだ」
飄々と言う父の言葉に言い知れぬ臨場感があり私は言葉が出なかった。
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