第296話 不安が作り出した暴挙

文字数 567文字

 昨日、不安と恐怖について再び書いた。対象がはっきりしているものが恐怖、漠然としているものが不安ということだ。
 それに関し、思い出したことがある。あの阪神大震災で体験したことだ。震災の瞬間は、恐怖を感じるゆとりもなかったというのが正直なところだ。その後の数日間も、一度あのすごい地震の恐怖を体験した自分にとっては、もう怖いものがないという変な自信を持ったことを覚えている。「矢でも鉄砲でも持ってこい!」の心境だったのだろう。たぶん、人間にはそのような時には、危険回避のためのアドレナリンがいっぱい放出されるのだろう。
 しかし、しばらくして冷静さを取りもどすと同時に、脳は働きだす。想像力が復活する。もっと大きな地震がやってくるかも知れない。これから先どうやって立て直したらいいのか、暗中模索の世界が始まった。そんな想像の世界がどんどん膨らんでいき、頭の中は不安でいっぱいになった。不安にはキリがないのだ。頭は勝手に不安を増殖させていく。

 今、ウクライナの人たちはそんな状況にあるのではないだろうか。
また、プーチンの頭には、予想以上の西側からの不安を感じていたからの仕業かもしれない。その膨れ上がった不安が作り出した暴挙なのだ。不安を取り除くための狂気に付き合わされたウクライナが、あまりにも可愛そうだ。人間とは恐ろしい生き物だと思う。



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