奇譚草紙
奇譚――奇妙な味の短篇、あるいは変てこな短い物語を、ほろほろと書いてみようと思います。
※不定期連載です。
ファンレター
読んでいて胸がスカッとしました。時折挟まれる異国の言葉が、ぱしっとキレのいいリズムとなって、視線をストーリーの先に誘います。義侠心に富んだまっすぐな少女ゆえ、不思議が訪れたのかも。
娘さん二人の名前がとても雅です。そして二人の関係が壮絶なまでに美しくて浪漫チック。文章から想起される光景には単なる綺麗ではなくて、熱を帯びたあやしさを感じます。問題が解けずに顔を染める姿など、ゾクゾクしました。うっとりです。
田舎の本家を頂点とする封建的ヒエラルキーの内部で、くるくる反転する支配と被支配。思わず共感してしまう『奇妙な心理の動き』。“事件”ですら耽美的。(私の勝手な妄想かもしれませんが)私は小説のそこかしこで作者の断片みたいなものを感じました。それくらい幻想的なのに肉薄するような小説でした。読み終えてまた(一)に立ち返ると、時間経過の奥行きが見事で。いつもですけど上手く言えない。とにかく通して読んでみてくださいと言うしかない。
まるで白昼に夢を見ているかのような語り口に引きずり込まれ、その柔らかな幻想を破るように生々しい現実が垣間見え……そして今の彼の童子のようなかわいさに思わず微笑み(苦笑し)ました。彼も辛かったのでしょうか、そしてすべてを知りながら抱擁するかのように会いに来てやる「私」に深い、どうしようもない母性を感じます。今の二人が一番幸せなのでしょうか。不思議な、そして胸にくさびが入るような読後感でした。
私もこの男性は死亡しているという風に読みました。とにかく「雰囲気」がビシビシと伝わってきて、すごく面白かったです! うちの息子は変わり者で、暗渠マニアでもあります。なので親子で地面の下に埋まった川の流れを探索したり、その続きで池のある公園に行ったりすることもしばしば……そんな日常を、よりリアルに感じさせてくれる文章でした。次に池の鯉を見たら、不思議な世界に迷い込んじゃいそうです(笑)。
夢のような不思議な味わいの小説なのですが、読んでいて、ああ、わかる、その感覚わかる、と(おこがましくも)何度も感嘆のため息。隠喩を謎解きしたくなりそうだけど、謎を謎のまま楽しむのも贅沢な味わいというか、私は読んでいてとても快感でした。ゾクゾクする箇所がいくつもありまして……南ノさんの引き出し、凄いです。本当に文章が美しいのです、怖いくらいに。また更新を待つ楽しみが増えました。