第13話

文字数 1,541文字

翌朝、たかひろよりも先に目覚めた堀木は、直腸内に異物感が残っていることに恥じらいながらもささやかな幸福を感じていた。

なぜなら、それが恋人と愛を交わした証だから。



昨晩、堀木はベッドの上で尻を突き出すように四つん這いの姿勢になるよう命じられ、尻を平手で叩かれながら、直腸内を執拗に弄り回されていた。

たかひろの指がぬるりと身体の奥まで侵入し、深く突き刺さっている。

堀木はたかひろが指を動かす度に訪れる快感と、 尻を叩かれる痛みと恥辱に泣き叫びながら体をびくびくと震わせていた。

頭がどうにかなりそうだった。

ただ快楽と、恋人のペニスを求めるだけの「意識」と化していた。

たかひろの熱くなったペニスが体内にねじ込まれ、二人が一つになった瞬間、堀木の「意識」は弾け飛び、「肉体」は精液で溶かされているような錯覚に陥った。

ーいつの間にか堀木はオーガズムに達し、二人は汗だくでぐったりとしながら抱き合っていた。



そんなことを思い出しながら、堀木はたかひろの寝顔を見つめていた。

たかひろは寝息を立てながら静かに眠っている。

彼が明け方まで眠れなかったことに気づいていない堀木は、たかひろのことを、こいつは相変わらずお寝坊だなあ、と呆れながらも愛しいと思っていた。

長いまつ毛と潤んだ唇が日の光に反射して輝いている。

堀木は思わず、その潤んだ厚い唇に口づけた。

たかひろは深い寝息を立てながら、静かに眠り続けている。

ーなぁんだ、起きないんだ、つまらない。

堀木は、たかひろがあまりにもぐっすりと眠っているので、どこまですれば目が覚めるんだろう、という好奇心が湧いてきた。

布団を静かにめくると、たかひろのほっそりとした身体に、ほんのりと赤い乳首がぽつん、とついている。

堀木はたかひろの様子を伺いながら、その乳首をきゅっとつねったり、吸ったりするうちに、彼が鼻から抜けるような甘い声をかすかに漏らしていることに気がついた。

日頃のたかひろが出さないような、子猫の鳴き声のような甘えた声が愛おしく、もっとその声を聞いていたいと思うあまり、堀木の行為は徐々に激しさを増していった。

そして堀木は、彼の黒くて艶やかな、波打つような縮れ毛を撫でながら、うっとりした表情でペニスを見つめ、口に含み始めた。

「ちょっと、堀木さん!何やってんですか、朝っぱらから・・・。頼むからもう少し寝かせてくださいよ」

股間にぬるりとした生ぬるい違和感を感じ、目を覚ましたたかひろは、自分のペニスをがっちりと咥え込んでいる堀木を見て、ぎょっとしたような、呆れたような表情を浮かべた。

「朝っぱらったって、もう10時過ぎだよ。そろそろ起きてくれないと淋しいじゃん」

「10時過ぎてても、イヤなものはイヤです」

たかひろは堀木に剥かれていた布団を勢いよくかぶり直した。

「じゃあさあ、午後からなら一緒に過ごせるね?」

「午後は用事があって出かけないといけないからダメです」

たかひろはそう答えると、壁に向かって寝返りを打った。

そう、午後からはあの男に会わねばならないのだ。

たかひろは堀木がしょんぼりしたような、いじけて拗ねているような表情を浮かべ、黙って寝室を出ていくのを横目に見ながらため息をついた。

堀木さんと一緒になれたなら、家族を作れたなら、全てが丸く収まっただろうに。

たまたま同性と出会って、同性を愛してしまっただけなのに、どうしてこんなに辛い思いをしなければならないのだろう。

おいらはどっちつかずで、堀木さんも由季子さんも傷つけてばかりだ・・・。

でも、堀木さんが他の男に奪われるのだけは、絶対に嫌だ。

いつまでも、おいらだけの堀木さんでいてくれると思ってたのに・・・。

たかひろはカーテンの隙間から微かに漏れてくる日光の温もりを感じながら、再び眠りに落ちていった。
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